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助けられて生きる

2021-01-30 07:07:36 | 編集手帳

2021年1月8日 読売新聞「編集手帳」


 季節外れの記憶で恐縮だが、
昨夏の酷暑の日、
をついて太陽の照りつける道を歩く高齢の男性を見かけたことがある。
マスクが酸素と体力を奪うのか、
苦しそうに肩で息をしていた。

マスクを外してもらってもかまわないのにと思いつつ、
ふと感謝の念を覚えた。
このお年寄りのように真面目な人が多くいるおかげで、
自分は無事でいられるのではないかと。

社会生活を送りながら感染しないことは一人ではできない。
見ず知らずの人の助けが大きい。
政府の緊急事態宣言を聞きながら、
助けてもらう飲食業の方々を思った。

苦しみのうえの苦しみだろう。
折からの時短要請でぎりぎりの経営を迫られながら、
宣言のもとでさらに「午後8時まで」に営業が短縮される。
「きちんと要請に従います」と生真面目に話す男性の店主さんをテレビで見て胸が痛くなった。

コロナ禍の中で見方を変えた永六輔さんの歌の詞がある。
<生きているということは
 誰かに借りをつくること>
(『生きているということは』作曲・中村八大)。
家族や友人ばかりではない。
知らない人にも助けられて生がある。
借りの返せる日を。

 

 

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