2020年12月19日 NHK「おはよう日本」
新型コロナウィルスの影響で外食業界の低迷が続くなか
シカなど野生動物の肉を使ったジビエ料理の需要も落ち込んでいる。
長野県ではジビエの消費拡大にと新たな販路を開拓する動きが出ている。
サックサクのメンチカツ。
使われているのはシカの肉である。
陸上自衛隊松本駐屯地の給食として提供された。
日々厳しい訓練を行なう自衛隊。
激しく体を動かす隊員にとって
食事は重要な要素である。
タンパク質や鉄分が豊富なシカ肉は疲労回復や筋力アップにもってこいだという。
(松本駐屯地の隊員)
「激しい訓練をするわれわれにとって
たんぱく質など含まれているのは非常にありがたい。」
「生臭いとか独特なにおいがある印象だったが
食べてみてそんな印象もなかった。
午後の活力になった。」
シカ肉のメンチカツを自衛隊に提案した日本ジビエ振興協会代表理事の藤木さん(59)。
フランス料理店を営む藤木さんはシカ肉などジビエの普及に努めている。
(藤木さん)
「シカ肉の背ロースと言われる一番柔らかくておいしいところ。
赤みが多いということは鉄分が多いので
持久力
疲れづらいとか疲労回復
そういったところに優れているのでは。」
自衛隊にシカ肉を提案したきっかけは新型コロナウィルスだった。
外食の自粛が広がるなか
一般になじみの薄いジビエ料理の需要は落ち込み売り上げは大きく減少。
企業相手に㏚したが大量の消費にはなかなかつながらない。
そこで目にとまったのが自衛隊だった。
全国の自衛官の定員は約25万人。
1食当り80gとすると
約20tの消費につながる巨大マーケットである。
(藤木さん)
「ものすごい数の消費が生まれる。
どうやったら採用いただけるか。」
全国で増え続けるシカなどによる農作物の被害。
農林水産省によると平成30年度には約158億円にのぼる。
消費が落ち込んでも捕獲の手をゆるめることはできない。
その結果
行き場をなくしたジビエが大量に余る状況が生まれている。
(信州富士見高原ファーム)
「せっかくいただいた命が消費されず残っているのは苦しい。」
長年ジビエの普及に取り組んできた藤木さん。
消費拡大に向けて起ち上がった。
自衛隊が地産地消の食事に力を入れていることを知り
それならばと防衛相に提案した。
するとさっそく試食会が開かれることになったのである。
コストを抑えつつ
ジビエの魅力が伝わる新たなメニューの開発に試行錯誤した。
「肉肉しいというのがシカ肉の特徴。
その肉感をいかに出すか。
1食にかけられる給食の費用があるので
費用に収まるよう肉感・味を工夫するのが大変。」
用意したメニューはシカ肉を使ったメンチカツやマーボー豆腐など12種類。
料理の特徴を分かりやすく示したランチョンマットも用意。
全国の駐屯地で採用してもらえるよう
調理方法や栄養価などもあわせて紹介した。
「和洋中・ハム・ソーセージ
いろいろな食べ方があるんだねということを見てもらいたかった。」
試食会には当時の河野防衛大臣も出席。
好評だったという。
手ごたえを感じた藤木さん。
いまも防衛相に通い
全国の駐屯地での提供を目指して交渉を続けている。
(藤木さん)
「いまは防衛相・自衛隊で使ってもらえることを目標にやっていくが
家庭の食の中にジビエが根付いていくことが最終的な目標。
そこまでは道遠いですがやっていく必要があると思う。」