評価:→(85点)
HAEVNENとは、復讐という意味。今回の邦題は何か希望がありそうで、こちらのほうが良いね。
京都シネマにて鑑賞。 本当に、憎しみの先には、何があるんだろうか?ふと頭の中をよぎった。
憎しみという感情って一番多いんじゃないかな。
でもその反対に赦しって感情を持つのは難しいような気がする。解き放たれたその時に、芽生える感情がまさに赦しという寛容な心になる。理屈では理解出来るけど、なかなか神さまのようなわけにはいかないように思う。
クリスチャンは憎しみのままその場所で留まっている。母を失った原因は父にあると決めつけている。その感情は母の死におさまらず、他人へも波及する。暴力への憤りは憎しみへと高まり、暴力は暴力で止めないと手段はないと決める。
目には目を、、、、。
それが一番の方法だと思ったのだろう。しかしその感情は知らぬ間にエスカレートしていく。母が好きだった頃の優しい気持ちは何処に行ってしまったの?
転校先で執拗にいじめられていたエリアスをクリスチャンは助ける。エリアスをいじめる奴らに憎しみを感じる。いじめはやり返さないと繰り返される。そう判断したクリスチャンは不良グループのリーダーを力でねじ伏せることに成功する。
確かにそれ以降いじめはなくなった。だからその方法はクリスチャンにとって正しいやり方だと諭すことになる。これが怖い認識となる。
まさに暴力がベストだという勘違いが生まれる。これって大変な錯覚ですね。
これ以降、クリスチャンの暴走は止まらなくなることに・・・・。
クリスチャン役、ウィリアム・ヨンク・ユエルス・ニルセン。オーディションで選ばれた新人さん
まさにこれは小さな戦争だ。憎しみは憎しみを生む。そうなるとその状況は益々悪化状態を辿る。憎しみの連鎖は限りなく永遠に続く。
歯止めがかかる頃には、大きな代償が残る。
クリスチャンの父が説得する 「殴られてやりかえしたらきりがない。戦争はそうやって始まる」大人ならこの説明で納得出来るかもしれないが、クリスチャンにはどうなんだろう?理屈はそうだけど、あくまでも理想論ぽいような。現実はそんなことで解決できないんじゃないの?というのがクリスチャンの心中かも。
でも確かに戦争ってほんの些細なことから始まるんだよね。クリスチャンを見ていて、何か空恐ろしいものを感じた。表情も子どもらしくないし、底知れないような闇の内にいる感じもした。ここまで彼を追い込んだものは何だろう?
さてエリアスの父アントンだが、医師として遠いアフリカの地で医療活動していた。この地では、妊婦の腹を切り裂く“ビッグマン” という残虐な行為を日々目の当たりにする状況だった。
そんな最中、このキャンプに“ビッグマン”のリーダーが重傷で助けを求めたという現実である。周囲の人間は加害者であり、敵であるビッグマンを助ける事に反対する。しかしアントンは反対を押し切って治療することに。
これは深刻な決断だった。あえて憎きビッグマンを助けるという姿勢に、自身も悩むことになる。そして出した考えは医師として最善を尽くすというものだった。仕事をするものとして、負傷している人がどんな人であれということなんでしょうね。
場面変わって、、、。クリスチャンの暴走は、とどまることなく。今度はエリアスパパ アントンの絡みでも始まります。まったく自身とは関係ないのにです。
ある日、アントンの下の息子がよその子とブランコの取り合いとなり、相手の父親から理由も聞かず殴られる。アントンはやり返すことなく子どもたちとその場を離れる。そんな事態に遭遇したクリスチャンは自分とは関係ないのに、憤りを感じる。
何故報復しないのか?! 暴力を受けておいて、泣き寝入りなんて。やり返さないアントンに苛立つ。それならば、代わって僕が。
まあクリスチャンの行動を行き過ぎている風に捉えてしまうが、実際はどうなんでしょう。
アントンにしても、結局はビッグマンを周囲の人々に引き渡してしまいます。はいそれまでよという感じです。後は好きにして、自分は知らないよ。煮るのも焼くのご自由に、、、、。正当化しているのかも。どんな人間だろうとも助けるべき。医者として、一人の人間として。
かたちとしては大きくならないけど、クリスチャン同様なのかもしれません。
あらすじ(goo映画より)
エリアス役 マルクス・リーゴ―ド ウィリアム君同様、オーディションで選ばれた新人さん。
デンマークに家を持つ医師のアントン(ミカエル・パーシュブラント)は、アフリカの地に赴任し、キャンプに避難している人々の治療を行っている。様々な患者の中には妊婦の腹を切り裂く悪党“ビッグマン”の犠牲者もいた。母マリアン(トリーネ・ディアホルム)と幼い弟のモーテンと暮らしているエリアス(マークス・リーゴード)は、毎日学校で執拗なイジメにあっていた。父親のアントンが大好きなエリアスはその帰国を喜ぶが、両親は別居中である。
ある日、母親の葬式を終えたクリスチャン(ヴィリアム・ユンク・ニールセン)が、エリアスのクラスに転校してくる。その放課後、イジメっ子のソフスにエリアスは絡まれ、クリスチャンも巻き添えを食らう。翌日、クリスチャンはソフスを殴り倒し仕返しをする。ソフスの怪我が表沙汰になり、呼び出された父親クラウス(ウルリッヒ・トムセン)は、報復にはきりがないと諭すがクリスチャンはやり返さなきゃだめだと口応えする。帰国したアントンが、子供たちとクリスチャンを連れて出掛けた帰り、モーテンがよその子と公園でケンカになった。割って入ったアントンだが、駆け寄って来た相手の子の父親に、理由も訊かれずに殴られてしまう。翌日、クリスチャンとエリアスが自分を殴った男ラース(キム・ボドニア)の職場を割り出したことを聞いたアントンは、子供たちとラースの職場を訪れる。殴った理由を問いただすアントンを、ラースは再び殴るが、アントンは決して手を出すことなく、屈しない姿を子供たちに見せた。帰り道、殴るしか能のない愚か者だとラースを評するアントンに、エリアスとモーテンは同調するが、クリスチャンは報復しなかったアントンに納得がいかない。アントンがアフリカへと戻った後、祖父の作業場で大量の火薬を発見したクリスチャンは、爆弾を作ってラースに復讐しようとエリアスに持ち掛ける。一方、アフリカのキャンプでは脚に怪我を負ったビッグマンがやって来る。アントンは周囲に反対されながらもビッグマンの治療を行うのだが……。
子役の2人、新人とは思えないくらい上手い演技でしたね。
色々考えさせられた。クリスチャンの行動は行き過ぎのようにも思うけど、、、、。大人のようにカモフラージュせず、素直に憎いからやり返すというストレートさがあって、良いんじゃないの?でもやってはいけない事ですけどね。
クリスチャンとエリアスの関係は爆弾事件で、思わぬ方向へ、、、、。
最後はどうなっちゃうのか?バッドエンドなのかななんて、気になりましたが、少し希望の持てる展開だったのでホッとしました。
解説(allcinemaより)
「ある愛の風景」「アフター・ウェディング」のスサンネ・ビア監督が、暴力と愛を巡る簡単には答えの出ないテーマに真摯に向き合い、みごと2011年のアカデミー賞外国語映画賞に輝いた感動のヒューマン・ドラマ。デンマークの郊外とアフリカの難民キャンプを舞台に、問題を抱えた2組の父子が、日々直面する理不尽な暴力を前に、復讐と赦しの狭間でぎりぎりの選択を迫られ葛藤するさまを、緊張感あふれる力強い筆致で描き出す。
メディア | 映画 |
上映時間 | 118分 |
製作国 | デンマーク/スウェーデン |
公開情報 | 劇場公開(ロングライド) |
初公開年月 | 2011/08/13 |
ジャンル | ドラマ |
映倫 | PG12 |
※まとまりのない記事になりましたが、個人的は好きな作品でした。