「真夏の夜のジャズ」(Jazz On A Summer's Day)という映画があります。直訳すると、「夏の日のジャズ」、か…。なんだかパーシー・フェイスみたいですね。
この作品には、1958年7月にロードアイランド州で開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル」の様子が収められています。7月3日から6日の4日間にわたってカメラを回し続け、撮影した約24時間ぶん・のべ13万フィートにのぼるフィルムは、バート・スターンとアラム・アヴァキァンの二人の監督の手によって82分に編集されました。
完成したこの映画は、1959年のカンヌ国際映画祭で特別公開されています。
『真夏の夜のジャズ(Jazz On A Summer's Day)』
出演者がこれまた素晴らしく、サッチモことルイ・アームストロング(tp,vo)をはじめ、セロニアス・モンク(p)、ソニー・スティット(sax)、ジェリー・マリガン(sax)、チャック・ベリー(g,vo)、エリック・ドルフィー(sax)、マックス・ローチ(drs)、ジョージ・シアリング(p)などなどなど、見事に「巨星」が連なっています。もう、名前を見るだけで思わずタメ息が出てくる…
その中のひとりにアニタ・オデイ(Anita O'Day)がいます。
ぼくなど、アニタは白人女性ジャズ・シンガーとしては最高のひとりに数えられるのではないか、と思っていたりするのですが。
ぼくがアニタの歌を聴いたのはこの映画が初めてでした。 「スウィート・ジョージア・ブラウン」と「二人でお茶を」の2曲が収められていますが、もうブッ飛びましたよ。
まず「スウィート~」。アフリカン・リズムを思わせるドラムと歌とのデュオで始まります。エキゾチックな雰囲気を醸し出しておきながら、一転してミディアム・スローの粘っこいテンポに変え、実にブルージーに歌い込みます。もうこのへんで目は画面に釘付けです。
「二人で~」は高速で突っ走るのですが、アニタはもう余裕しゃくしゃく。アップテンポの中を自在に泳ぎ回り、抜群のリズム感を披露してくれています。リストの「ハンガリー狂詩曲第2番」の有名な一節を織り交ぜながら、バックのピアノ・トリオをほんろうする様子がとてもホット!
後半部分の、バックとの掛け合いがこれまた見事。まるでおてんば娘(死語に近いな…)のアニタが、ユーモラスかつスリリングにバンドを煽ること煽ること。仕草も可愛ければ、いたずらっぽい表情も魅力的。もう、おきゃんで陽気なアニタが本領を発揮しまくり、といったところです。
これ見て、アニタにホレたぼくは、すぐにアニタのCD(ディス・イズ・アニタ)を買いに行きました。
ジャズ・ヴォーカルも自己表現のひとつの手段なんだ、ということを、この映画でアニタに教わりました。
アニタ・オデイ 「Sweet Georgia Brown ~ Tea for Two」 Live ar Newport Jazz Festival (1958)