「イン・ア・センチメンタル・ムード」・・・、ジャズにおける名曲中の名曲ですね。
御大デューク・エリントンが、母の死の哀しみの中で書いたという、文字通り感傷的なバラードです。もともとメロディが非常に美しいうえ、ミュージシャンの創造意欲をかき立てるような構成を持っているので、多くのミュージシャンが多様なアレンジを施して演奏しています。
それだけに、偉大なジャズ・ミュージシャンによる名演が数多く残されているのですが、ぼくが最も好きなのは、「フリーダム・ジャズ・スピリッツ(Freedom Jazz Spirits)」の演奏によるものです。
「フリーダム・ジャズ・スピリッツ」は、関西を基盤に活動を続ける、1992年に結成されたワン・ホーン・カルテットです。
メンバーは荒崎英一郎(sax)、佐藤由行(piano)、中嶋明彦(bass)、岡野正典(drums)の4人。
佐藤由行(上段左)、荒崎英一郎(上段右)、中嶋明彦(下段左)、岡野正典(下段右)
このグループのファースト・アルバム「スケッチ・オブ・ブルー(Sketch Of Blue)」は、1995年10月に兵庫県加西市のライヴ・ハウス「The Cotton Club」で行われた彼らのライヴの模様を収たものですが、その中で聴かれる「イン・ア・センチメンタル ムード」は感動的でさえあります。
ベースの中嶋明彦による、アルコ(弓)を使っての、ルバートでのベース・ソロから始まるのですが、これには、ただただ泣ける。
そして、テーマは、荒崎英一郎の実にファンタスティックなテナーに引き継がれます。
後半部はピアノの佐藤由行のソロになりますが、これがまた文字通りセンチメンタルでメロディアス。そしてテンポが倍になると荒々しさを加え、ドラマティックに展開してゆきます。
ドラムスの岡野正典は、的確かつハードなドラミングで曲想をより刺激しています。
そして、再び中嶋のアルコ・ソロでエンディングを迎えるのです。
個人的な好みであることを前提に断言させて頂きますと、この演奏は世界中で残されている数多い「センチメンタル・ムード」の演奏の中でも、(ぼくが聴いた範囲では)間違いなくベスト3に入ります。
こういう素晴らしいグループはもっともっとたくさんの人に聴かれて欲しいですね。
「関西の誇り」と言ってもいいんじゃないかなあ。少なくとも、関西のジャズ界を牽引する存在のひとつだと思っています。
◆イン・ア・センチメンタル・ムード/In a Sentimental Mood
■作曲
デューク・エリントン/Duke Ellington (1935年)
■演奏(録音メンバー)
フリーダム・ジャズ・スピリッツ/Freedom Jazz Sprits
荒崎英一郎(sax)
佐藤由行(piano)
中嶋明彦(bass)
岡野正典(drums)
■録音日時
1995年10月8日~9日(加西コットン・クラブ)
■収録アルバム
スケッチ・オブ・ブルー/Sketch Of Blue ~ Live at The Cotton Club