箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

損得よりも善悪

2019年08月10日 08時24分00秒 | 教育・子育てあれこれ
 
 
 
 
 
 
 
いじめは、どの学校でも、どの子どもにも起こりうるというのが、文部科学省、教育行政、学校現場の共通見解です。 
 
一般的に、いじめについては4層構造が言われています。 
加害生徒、被害生徒、いじめをはやしたてる「観衆」生徒、無関心または見て見ぬふりをする「傍観」生徒の4層からいじめは構成されるという考え方です。
 
 学校関係者は、いじめの防止に力を入れたり、いじめがあったときの対応に取り組みますが、メディアが報道するように、いまも全国で起こっています。
 
 いじめをした生徒、関係した生徒の中には、「自分もやらなければ、つぎは自分がいじめられる」という不安を抱くことは、私が聞き取りをした生徒からも、じっさいに聞いたことがあります。 
 
いったん起きたいじめは、解消させるには多くの場合、労力と時間がかかります。
 
 いじめを減らすために、大人側から生徒に強く伝えるべきことは、「損得よりも善悪で判断すること」ではないでしょうか。
 
 いじめで苦痛を受けている生徒に思いを届かせ、自分にとって損になるか得になるかではなく、いじめという行為が人として善い行いなのか、まちがった行いなのかを判断して、いじめに反対する生徒を増やすような、生徒の自主的な活動を起こしていくことが大切です。 
 
また、未然防止として、学校の教育活動や学校生活に満足できる生徒を増やすことも大切です。
 
 なぜなら、ふつう考えてみても、学校生活を楽しんでいたり、友だち関係に満足している、学校での学習にも前向きに意欲的に取り組んでいる子は、いじめをしたり、いじめに加担することが少ないだろうとは、教育関係者でなくても、誰もがご理解してもらえると思います。 
 
その意味で、いじめを起こす側の生徒は、学校生活、友だち関係、学習などで、なんらかの不安やストレス、困難を感じ取り、その「はけ口」としていじめに至っていると考えることもできます。 
 
したがって、いじめの問題を離れたとして、平素の教育活動や学校生活が多くの生徒に満足感いくようなものになることが、遠いようだけれども、いじめを生まないための未然防止につながることも多いと考えられます。
 
 そして、そのような満足感の高い教育活動や学校生活の実現には、前向きで、意欲的な生徒の自主活動(生徒会活動やいじめをゼロにしようとする、生徒発の能動的・積極的・意欲的な取り組み)が効果的です。 
 
 
生徒会が「いじめZERO」活動を進めたり、自分の行動宣言を書き記して表明する、いじめ反対の劇を創り、全校生徒で鑑賞する。またはいじめ反対キャンペーンソング「あの空」をクラスで合唱したり、全校生徒で合唱することで、生徒はいじめに反対する心と態度を身につけていきます。 
 
 
箕面市では、各中学校の生徒会代表の生徒が集まり、生徒会交流会が開かれ、各校の生徒会の取り組みを交流しています。
 
このような活動に取り組んでも、いじめはゼロにはならないかもしれません。取り組んでも起こるのがいじめだからです。
 
しかし、取り組めば減らすことはできます。深刻な状況のいじめになりにくいとは言えます。 
 
また、生徒の自主活動は、損得よりも善悪で判断できる生徒を一人でも多く育てる活動であると、私自身は考えています。 
 
いまの生徒たちは、グループの中で同調圧力が強くはたらきやすい人間関係の中で、日々暮らしています。

「自分だけが、友だちとちがったことができない」というプレッシャーを感じ、「次のターゲットは自分になるかもしれない」という不安を抱きやすい人間関係の中で、揺れています。 
 
それでも、勇気を振りしぼり、人としての善悪で判断することを可能にするのが、生徒の自主活動であるのです。