各学校は、それを受け教育計画(教育課程)をつくり、授業等を行います。
ただし、通常は文部科学省がいきなり学習指導要領を公表するのではなく、中央教育審議会(中教審)に改訂を諮問し、中教審が検討を重ね答申を示します。
今回の改訂については、2026年度中の中教審答申を受け、文科省が改訂学習指導要領を出します。
それを踏まえて、文科省は学習指導要領を告示するのです。
その改訂学習指導要領に基づいた教育課程は、2030年度に小学校から順次実施される予定です。
今回文科省が中教審に諮問した内容が、先般明らかになりました。
その中でも特筆すべきなの、学校や教育委員会の裁量で、小学校の1コマを現状の45分から40分に、中学校では50分から45分に短縮することができる。
かつ、生まれた余剰時間は学校で柔軟に活用できるというものです。
5分ずつの短縮で、5分×6時間=30分の余剰時間が生まれます。
多様な個性や背景をもつ児童生徒を包摂する必要性を強調。学校や教育委員会の創意工夫を引き出すのがねらいだそうです。
その授業時間の短縮に、わたしは3点の懸念をもちます。
① 指導内容を減らさずに、授業時間だけを削るとそのしわ寄せは、教員の負担増につながます。
② 時間をかけてゆっくりと授業内容を理解していく児童生徒への影響への配慮が必要です。
③ 現行の学習指導要領が推奨する「主体的で、対話的な深い学び」の学習(現行)の実現には、5分短縮では小中ともそれぞれ授業時間がたりなくなります。
「めあて→発問→一人で思考→友だちと交流→自分の思考を深める→ふりかえり・まとめ」の活動を最後まで行うには、現行の授業時間でもギリギリか足りないくらいです。
それは私が何度も教員の指導をするため、授業参観をした経験から思うことです。
ふりかえり・まとめまで終えてこそ、子どもに確かな学力がつくのですが、5分短くなると授業の終末までたどりつくのは無理になります。
このことは、授業をしないとわからないことなのです。
それが現場の実状です。問題は、審議会の会議室で見えてくるのではなく、現場で起こっているのです。
中教審の委員はぜひ現場に足を運んで、授業を見て、ベストな答申を出してほしいと願います。