学校でものごとを進めようとするとき、過去の経験をひきあいに出す教職員は少なくありません。
こんな学校行事をしようと若い教員が提案すると、「過去の前例がない」と言うのはたいていベテランの教員です。
わたしが校長のとき、職場づくりの方法として教職員を3つのグループに分け、グループ内でテーマを決めて話し合う「ハートミーティング」を提案しました。
これは、教職員同士が知り合うために行なった人間関係を深める職場づくりのためのミーティングでした。
ふだん他人に話したことのないことを話し、聞いた人が言葉を返すのです。
ある養護教諭は語りました。
自分がなぜ保健の先生になったのか。
大阪府の堺市の学校給食では、1996年にO157の集団食中毒が起こりました。
そのとき、小学生だった自分のクラスで大切な友だちを亡くした経験が、保健の先生になろうと思ったきっかけだったことを語りました。
そうやったんや。知らなかったけど、そういう経験があって養護教諭になっているんやね。
大事なことを話してくれて、ありがとう。
同僚同士で、あ互いのことをよく知らないままで、いい仕事ができるはずはない。
職場では、構成員同士がよく知り合うことが必須である。
その信念で、わたしは「ハートミーティング」を始めました。
始めるときには、教職員の反対もありました。
前例がない。ただでさえ忙しいのに・・・。
でも、始めると結構有意義だと感じた教職員が多かったようです。
それは、話してよかった。聞かせてもらってよかった。
そう思ったからだと思います。
前例がないと批判する人は、どこの世界にもいます。
でも、考えてみると、すべてのものに最初は前例がなかったのです。
前例がないから違うもの、新しいものが生まれるのです。