僕の会社は河岸段丘の途中にある。
そこに移って数年経つ。
河岸段丘を一段登りきったところに娘の通う高校がある。助手席に娘を乗せてその坂を車で上っていると自転車に乗った高校生たちを抜いていくことになる。
長い長い坂道をまるで機関車みたいな真っ白な息を吐きながら、高校生は自転車で上っていく。
息子たちもこの坂を自転車で通った。
30数年前、ぼくもこの坂を自転車で上ってた。
神社の300段ほどの石段が左に見えた辺りから、徐々に坂は急になり、長い坂道が続く。景色がとてもいいのが救いだ。
健脚でないと、足をつかずにこの坂を上りきるのは難しい。
父が生きていた頃、今のぼくより年が上の、父の会社の従業員さんが自転車で通ってきていた。
夕方この坂を車で通ると、段丘の上に住むその従業員さんが帰路の途中にこの上り坂を自転車を押しながら歩いていたり、坂の途中で休んでいる姿をよく見かけた。
この坂の途中の同じ場所でいつも2回休んで、段丘の下の天竜川や川の向こうの南アルプスを見ながら煙草をくゆらせていた。
坂の上の高校に今通っている娘は、ぼくの会社がそこにあることをいいことに、毎日ぼくの車の助手席に乗ってる。
うちの娘にはぼくの父の記憶はない。ぼくの父の会社の記憶もない。
二人とも娘が生まれた頃いなくなった。父の会社も父といっしょに無くなった。
白い煙草の煙をだしてた従業員さんの記憶は、ほんのちょっと前のような気がしてるけど、僕だけが記憶しているもうずっとずっと古い話になってしまった。
S5Pro+DX17-55mm
そこに移って数年経つ。
河岸段丘を一段登りきったところに娘の通う高校がある。助手席に娘を乗せてその坂を車で上っていると自転車に乗った高校生たちを抜いていくことになる。
長い長い坂道をまるで機関車みたいな真っ白な息を吐きながら、高校生は自転車で上っていく。
息子たちもこの坂を自転車で通った。
30数年前、ぼくもこの坂を自転車で上ってた。
神社の300段ほどの石段が左に見えた辺りから、徐々に坂は急になり、長い坂道が続く。景色がとてもいいのが救いだ。
健脚でないと、足をつかずにこの坂を上りきるのは難しい。
父が生きていた頃、今のぼくより年が上の、父の会社の従業員さんが自転車で通ってきていた。
夕方この坂を車で通ると、段丘の上に住むその従業員さんが帰路の途中にこの上り坂を自転車を押しながら歩いていたり、坂の途中で休んでいる姿をよく見かけた。
この坂の途中の同じ場所でいつも2回休んで、段丘の下の天竜川や川の向こうの南アルプスを見ながら煙草をくゆらせていた。
坂の上の高校に今通っている娘は、ぼくの会社がそこにあることをいいことに、毎日ぼくの車の助手席に乗ってる。
うちの娘にはぼくの父の記憶はない。ぼくの父の会社の記憶もない。
二人とも娘が生まれた頃いなくなった。父の会社も父といっしょに無くなった。
白い煙草の煙をだしてた従業員さんの記憶は、ほんのちょっと前のような気がしてるけど、僕だけが記憶しているもうずっとずっと古い話になってしまった。
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