国内唯一の版画専門誌『版画芸術 No.162冬号』の特集記事「日本の現代版画 1990-2013」に文章と作品画像が掲載された。前号No.161 秋号に引き続き掲載ということで、とてもありがたい。
編集部から依頼された内容は「1990年代から2013年までの版画家と版画作品の特集ということで、長島さんには90年代の作家自身が代表作と思う作品画像と文章(その当時考えていたこと他)をお願いします」ということだった。今までも版画芸術誌では「現代版画 1968-1992」、「現代版画の先駆者たち」という巻頭特集を組んできたようだが、その第三弾となるとのこと。1970年代に「現代版画ブーム」というものがあって、多くの版画家、版画技法が世に登場した。僕らの世代は70年代末から80年代にかけて美術学校などで版画を学んだので、このブームの世代に影響を強く受け、後を追った形となった。まぁ、今日の美術界で『現代版画』という言葉自体が死語になりつつあるのだが…。
僕が大きな銅版画を発表し始めた90年代初頭と言えば、ちょうどバブル経済の終盤の頃にあたる。世の中は好景気に湧き上がり賑やかだった。そしてしばらくしてバブルの崩壊、経済が不安になるにつれ社会の方向性や価値観が大きく変わっていく時代でもあった。その世の中の状況と自分の内面との落差のようなことを文章に書いた。創作とか表現というものは結局、世の中の動きを無視できないと常日頃考えているからだ。作品画像もその時期とリンクする『新博物誌シリーズ』の中の1点を選んだ。「早いものであれから約20年、経ったんだねぇ」掲載された作家、作品の中、90年代のものは記憶に残っていて当時を思い起こすものが多い。作家にしてもグループ展などで親交のあった人が多くいて、誌面をめくりながら感慨にふけってしまった。今後、版画表現というものが存続されていったとして2020年代、2030年代にはどんな状況になっているんだろう。誰にも想像はつかない。興味のある方は阿部出版ホームページか、大手書店にてご覧になってください。画像はトップが『版画芸術No.162冬号』の表紙、下が掲載されたページ。