工房の近くに巨大ショッピングモールができてから、もう10年近くになるだろうか。初めて物見うさんで買い物に行った時には、その大きさに度胆を抜かれた。まるで、どこかの大国の原子力空母のような違和感のある巨大さは、千葉県北東部の原野風景にまったく調和を欠いていた。買い物をしながらセンターを端から端まで歩き回ると慣れていないということもあったが、かなり疲れたのを憶えている。
あれから何回通ったのだろう。今ではその品揃えの充実と広大な駐車場という便利さもあり、なくてはならない生活の場所となってしまった。食料品はもちろんのこと、生活雑貨、家具、照明機器、資材売り場、デザイン・画材、カルチャー教室、文具、園芸用品、ペットショップ、飲食店、etc…なにからなにまで一度の買い物で済んでしまう。このモール、オープン当初の宣伝文句は『関東一大きなショッピング・モール』を掲げていた。中でも画材店はすごい! 洋画、日本画、版画、デザイン用品、工芸用品、書道用品、額縁カウンター等、県内一の品揃えを誇っている。東京で一番大きな画材のデパートであるS社を凌いでしまうほどの規模である。これは絵画や版画を生業としている僕にとっては助かるのだが、あまりの多さに毎回迷ってしまうのが本音である。
さらに近隣には映画館、大型書店、ユニクロ、アウトドア専門店、スポーツセンターなどが林立していて、一つの大きな街を構成している。15年~20年前ならば東京までわざわざ出かけていた内容である。日常の中であたり前になりつつあるのだが、思い返すと信じられない変わりようである。ネット通販と共に『革命』といっても過言ではないことである。時代の流れとはいえ、商店街や個人商店などは大打撃だろう。
いつの時代も世の中、便利になると「負」の現象が起こってくる。高齢化社会、こうした目まぐるしい消費生活についていけない『買い物難民』、『ネット難民』と呼ばれる人たちが急増しているという…。確かに自分たち世代でもようやくついて行っているような状態なのだから、他人ごとではないが「推して知るべし」というところか。この7-8年の間に似たようなモール街が近隣の市でもでき始めた。最近オープンしたのは衣類を中心とした巨大アウトレット・モールで、ここは成田空港ともバスでアクセスしているため海外からのツーリストが多く訪れている。
ジワジワと『革命」が進行しつつある。うかうかしていると、ぼくらの世代だって『○○難民』なんて言われかねない。工房に籠って版画なんて前々時代的なものをシコシコ制作していると、時代の大きな流れに取り残されてしまいそうな危機感を覚える。画像はトップが施設内部から見た巨大ショッピング・モールの姿。下は二階中央から望んだセンターの一部、デザイン・画材売り場、ペットショップであまりのかわいさに撮らせてもらったクロシバ♂の子犬。