宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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土壌のサンプルを採取 “キュリオシティ”

2012年10月24日 | 火星の探査
NASAの火星探査車“キュリオシティ”が9月22日に火星の岩石を調査しました。
この岩石が、地球の火成岩と類似する成分を持っていることが分かったんですねー

“キュリオシティ”が接触調査をしたのは、“ジェイク・マティアビッチ”と名付けられた岩石。
調査の結果、この岩石の化学組成は、地球の火山地帯でよく見られる火成岩の組成と似ていたんですねー







火星の岩石
“ジェイク・マティアビッチ”
赤い点は化学カメラ装置が、
紫色の丸はアルファ粒子X線分光器が
調査したところ




火成岩といえば、主に地殻下のマントル内で、比較的水が豊富なマグマが圧力上昇で結晶化して形成されます。
ここでも火星には豊富な水があった可能性が出てくるんですねー

まだ1個の岩石を調査しただけなので、その形成過程が地球と同じとは言い切れません…
でも、火星での岩石形成を研究する良いスタートラインにはなるようです。

今回は、化学カメラ装置とアルファ粒子X線分光器を、
同時に運用することで“ジェイク・マティアビッチ”の詳細な情報が得られました。

でも“キュリオシティ”には、まだ多くの分析装置が搭載されています。
なので、今後の岩石や土壌調査を考えると、今回の調査結果はほんの一歩にすぎないんですねー

さらに“キュリオシティ”は、“ロックネスト”と名付けられた場所で、スコップを使った初めての土壌サンプルの採取を行っています。






“キュリオシティ”が
サンプル採取した跡




10月9日と12日の2回行われたのですが、今回の採取サンプルは成分分析には使われず、装置のクリーニングに使われんですねー
採取した砂を使って、分析装置内についているかもしれない地球の物質をこすり落とすのが目的です。

装置のクリーニングは2回目までで、3回目の採取サンプルから成分分析に使われる予定です。

“キュリオシティ”は2年間のミッションで、“ゲール・クレーター”中央にある丘“マウント・シャープ”を目指します。
移動しながら、微生物に適した環境がかつてクレーター内にあったのかを探っていくことになるんですねー

いくつかある分析装置のどれかが、生命の痕跡を見つけてくれるかもしれませんね。

ダイヤモンドでできた惑星を発見

2012年10月23日 | 宇宙 space
3分の1以上がダイヤモンドでできている系外惑星が見つかりました。
実はこの発見、系外惑星の研究において画期的な発見なんですねー

この系外惑星は、40光年先にある“かに座55番星”の周囲に見つかっている5つの惑星の1つ“かに座55e”です。





“かに座55e”の想像図
主にグラファイトからなる
表面の下に
厚いダイヤモンドの層がある



地球の表面は水と花崗岩で覆われているのですが、この星はダイヤモンドと黒鉛で覆われているようです。
地球とは根本から違う化学組成の岩石惑星の存在が示されたのは、これが初めてなんですねー

この惑星は直径が地球の2倍で、質量は8倍あるスーパーアース(巨大地球型惑星)です。
研究チームでは、昨年始めて行われたトランジット観測から分かった惑星の直径と、
最新の質量の見積り値とを総合して、惑星の化学組成を推測しています。

今回研究チームは、惑星の材料として炭素と炭化ケイ素がかなりの量存在していること、逆に水の氷はほとんど無かったことを確認しています。

また過去には、化学組成が地球に似ているという前提から大量の過熱水の存在も考えられていました。

でも、今回の研究から、水は全く存在せず、主な組成成分として炭素(黒鉛とダイヤモンド)、鉄、炭化ケイ素、そして若干のケイ酸塩を含むことを分かっています。

ダイヤモンドは惑星の質量の3分の1以上を占めると考えられています。
これは地球3個分になるんですねー

地球の内部は酸素を多く含み、炭素は質量比で1000分の1もありません。
今回の炭素豊富なスーパーアースの発見により、遠方の岩石惑星が「地球と似たようなもの」という仮定はできなくなったんですねー

これにより、地球と変わらない大きさの系外惑星の、地下学・物理学的プロセスの研究に新たな道が開かれたことになります。
もちろん炭素が多いということは、その天体の熱環境や地殻活動の歴史にも関わってくることになります。

質量や年齢が分かれば、大体の構造や歴史が分かる恒星とは違い、惑星はもっと複雑なんですねー

今回見つかったダイヤモンド豊富なスーパーアースの他にも、もっと多様な化学組成の岩石惑星が見つかるかもしれません。
そこに生命が誕生していたとしたら… 想像するだけでわくわくしますね。

赤色巨星を包む不思議な渦巻き “アルマ望遠鏡”が発見

2012年10月22日 | 宇宙 space
“アルマ望遠鏡”を使ったミリ波・サブミリ波観測で、
年老いた星の周りに不思議なガスの渦巻きと、それを囲む球状の殻構造が発見されました。

赤色巨星の周囲に、こうした構造が一緒に見つかったのは初めてなんですねー

発見したのは欧州南天天文台の国際研究チームです。
研究チームは、南米チリにある世界で最も強力なミリ波・サブミリ波望遠鏡“アルマ”を用て、“ちょうこくしつ座R星”の周囲に、ガスの渦巻き構造を見つけています。




“ちょうこくしつ座R星”を
取り囲む球殻状のガスと、
渦巻状のガス



赤色巨星の周りを取り囲むガスは、これまでもたくさん見つかっているんですよねー
でも、球状の殻構造のほかに、こんな渦巻きが見つかったのは今回が初めてです。

もちろん“ちょうこくしつ座R星”の球状の殻構造も発見されていました。
今回の渦巻きは、“アルマ望遠鏡”の抜きん出た性能により発見できたということです。

質量が太陽の8倍より小さい星は、その一生の最後に赤く膨らんだ“赤色巨星”になりガスを放出します。

この段階になると、星の中心の周りにあるヘリウム原子核の層が周期的に激しい核融合反応を起こし、大量の物質が放出されます。

星を包むガスとチリの殻のような構造はこの時に作られるんですねー

こうした爆発的な核融合反応は、1万~5万年に1回起こると考えられています。
そして1回の爆発的な反応は、せいぜい数百年しか続きません。

“ちょうこくしつ座R星”では、1800年前に爆発的な核融合反応が発生し、200年間続いたということが今回の観測で分かりました。
そして、この星を回る見えない星が、放出されたガスを渦巻きの形にした。 っと考えられているんですねー

高い解像度を持つ“アルマ望遠鏡”を使うことで、星を取り囲むガスと渦巻き構造が、どのようにしてできたのかが分かるかもしれません。
そうすれば、“ちょうこくしつ座R星”での爆発的核融合反応の前と最中、その後に何が起こったのかが分かるかもしれません。

連星の周りでどのようにガスが動くのか? っというシミュレーションの結果は、“アルマ望遠鏡”の観測とよく一致しています。

なので、今回のような研究や観測の積み重ねは、シミュレーションに役立つんですねー
近い将来、数十億年後の太陽に何が起こるのか分かるかもしれませんね。

宇宙を30億キロ旅した光からわかること

2012年10月21日 | 宇宙 space
土星とその環は、小型の望遠鏡で気軽に見ることができる天体です。

でも土星からくる光を詳しく分析すると、
光を発した太陽と反射した土星、さらに地球についての様々な情報を読み取ることができるんですねー

光を分光器によって波長ごとに分解したものがスペクトルです。
これにより、どの波長の光が強いのか、また弱いのかを見ることができます。

土星とその環の光に、“すばる望遠鏡”の分光器スリットを当てて取得したスペクトルが上図です。
(左側が短い波長、右側が長い波長になります。)

土星の光は基本的に太陽光が反射したもので、スペクトルの縦方向に見える暗い線(暗線)は、光が太陽に含まれる物質を通過したときの痕跡なんですねー
中央の太い暗線は、水素原子による吸収を示しています。

土星本体のスペクトルの暗線が傾いているのは、土星の自転によるもので、
自転により、地球から見て遠ざかっている側からの光は波長が長くなります。
そして、近づいている側からの光は波長が短くなることで、暗線が現れる箇所もずれてくるんですねー

このずれから、土星の赤道付近の自転速度が毎秒10キロだと計算できます。
この値は、すでに知られている赤道半径と自転周期から計算したものと一致しています。

上下にあるのは、土星の環のスペクトルで、環の運動の様子を知ることができるんですねー

土星本体の傾きと呼応した上下のずれからは、環が本体と同じ向きに回転していることがわかります。
また、細かいところでは、本体と反対方向に暗線が傾いて見えます。
これは、環の外側は内側よりもややゆっくりと回転しているからなんですねー

上の画像は、土星本体のスペクトルをさらに詳しく見たものです。
太陽のスペクトルよりも傾きが少ない土星表面のガスによる吸収線や、地球大気によるまっすぐな吸収線が見られます。

光が太陽から出発して土星に届き、土星で反射されて地球に到着するまで…
約30億キロの道のりの痕跡が、スペクトルに全て刻まれているんですねー

天体からくる光を分析することで、天体の運動や大気での光の反射・吸収など様々なことがわかるんですね。

定期的にアウトバーストを起こすブラックホールを発見

2012年10月19日 | 宇宙 space
X線で急激な増光を見せる天体が、天の川銀河内に見つかりました。

NASAの天文衛星“スウィフト”が見つけたこの天体、
どうやら今まで知られていなかった、
新たな恒星質量ブラックホールのようです。
“スウィフト”が観測したX線バースト

このX線新星は突然現れて、数日でX線の強さがピークに到達。
そして数か月かけて弱まっていきました。

このようなX線のアウトバースト(突発的な爆発)は、
ガスの塊が中性子星やブラックホールといった、
高密度天体に急速に吸い込まれるときに発生します。

今回“スウィフト”のバースト警報望遠鏡がとらえた、
X線源の急激な増光は、9月16日に2回、翌日の17日に1回。

この新星は“スウィフトJ1745-26”と名付けられ、
“いて座”の方向にある天の川銀河の中心から、わずか数度離れたところに出現し、
距離はおそらく2~3万光年先と考えられています。

この新星が、1万電子ボルト以上の硬X線でピークに達したのが9月18日。
硬X線の高エネルギー天体としては、観測史上もっとも明るい部類でした。

硬X線は徐々に弱まっているのですが、
比較的低エネルギーの軟X線では発見当時より30倍も明るく、
今も明るさが増してきています。

このような変化はX線新星の典型的な現象のようで、
こうしたパターンは、中心にブラックホールを持つX線新星のもの。

X線が完全に消えた後に、
質量を測定すればブラックホールの現状を調べることができます。

このブラックホールは太陽のような恒星と共に、
低質量X線連星系(LMXB System)を成していると考えられています。

ほとんどのLMXBでは恒星から流れてくるガスが、
ブラックホール周囲の降着円盤に降り注いでいるんですねー

円盤の中ではブラックホールに近づくほど熱くなり、
持続的にX線が放射されるということです。
特定の条件を満たし円盤外縁にガスが溜まっていく様子(想像図)

でも、ある条件を満たすと、円盤の中の持続的な流れが崩れるんですねー

このとき、高温で高電離状態のガスは、円盤中心付近に押し寄せられます。

反対に低温で低電離状態のガスは、
ダムに溜まった水のように円盤の外縁に蓄積されていくことになります。

数十年が経ち、ガスが円盤外縁に蓄積されると、ダムが崩れることに…

溜まっていた大量のガスが一気にブラックホールに吸い込まれ、
強力なX線バーストを引き起こすことになります。
これがX線新星なんですねー
十分な量のガスが溜まると大量のガスが一気にブラックホールに落ちていき、
強力なX線バーストが発生する(想像図)

このようなX線アウトバーストでは、
円盤内の物質を吹き飛ばした後、LMXBはX線新星から元の状態に戻ります。

そして数十年後に、
また同じような現象が繰り返され、X線新星が再び現れることになるんですねー

この現象は“熱粘性リミットサイクル”と呼ばれ、
原始惑星系円盤や矮新星、遠方銀河の超大質量ブラックホールなど、
様々な場所で発生する瞬間的アウトバーストを理解するのに役立つようです。


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