宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ブラックホールの近くを高速で周回する恒星を発見

2012年10月15日 | 宇宙 space
銀河系の中心にある巨大ブラックホールのすぐ近くを、高速で周回する恒星が発見されています。

今回の発見は、アインシュタインの一般相対性理論が検証できる っと期待されているんですねー






“SO-102”発見に一役買った
ハワイのケック天文台




今回見つかったのは、“SO-102”と名付けられた暗い恒星です。
ブラックホールの周りを11.5年で周回していて、その速度は最大で秒速1万600キロにもなるんですねー
これまでに発見された大型の天体の中では、銀河系の中心のブラックホールの最も近くを回っていることになります。

銀河系の中心にあるブラックホールの、ごく近くを周回する恒星が発見されたのは、実はこれで2つ目となります。
最初に見つかった恒星は“SO-2”と呼ばれていて、その軌道周期は約16年です。

超大質量ブラックホールのこれほど近くで、立て続けに恒星が発見できたのは、この分野が急成長しているからです。
“SO-102”はブラックホールの事象の地平線に対して、これまで見つかっていた天体よりも100倍も近くにあるんですねー

事象の地平線とは、ブラックホールの内側と外側を分ける境界線、
ひとたびその内側に入ってしまうと、光でさえもブラックホールから逃げることは出来ません。

このブラックホールの質量は太陽の400万倍もあるのですが、大きさはわずか10倍です。
地球からは約2万6000光年先にあり、同じ方向にある星座の名を取って“いて座Aスター”と呼ばれています。

今回の発見によって、巨大なブラックホールの近くを周回する恒星の軌道が検証できるようになったんですねー
アインシュタインの一般相対性理論では、質量が時空間を歪ませるということになっています。
もしこれが正しければ、1回の自転のたびに軌道は少しずつずれることになります。
そう、恒星が同じ地点に戻ってくることはないんですねー

ブラックホールの効果を検証する最も確実な方法は、この軌道を最初から最後まで観測することです。
特に恒星がブラックホールに、最接近した時にどうなるかは重要となります。

そこで、“SO-2”と“SO-102”の軌道周期の短さは重要な意味を持つことになります。

銀河中心のブラックホールを周回する恒星のほとんどは、60年かそれ以上をかけて軌道を1周しています。
これらの恒星では遠すぎて観察と評価が不可能なんですよねー

それに対して、ブラックホール近傍の恒星では、研究の対象となる重力場が強力な分、効果もはっきりとあらわれます。

“SO-102”の明るさは“SO-2”の16分の1しかないのですが、技術の急速な進歩で発見することができました。
ひょっとすると、“いて座Aスター”の近くを周回する恒星は、他にもたくさんあるのかも… っと想像したくなりますね。

でも、他の天体が近くに存在する可能性があると、
アインシュタインの予測した時空間の歪みの効果を、1つの恒星だけを基準に検証出来なくなります。

というのも、その恒星の軌道は“いて座Aスター”の他に、別の天体からも重力の影響をうけるからです。

“いて座Aスター”に、さらに近い恒星が今後も見つかる可能性はあるんですがねー
ブラックホールに近づくことができる距離には限界があります。

ブラックホールの重力は強烈なので、限界を超えて近づいてきた天体は飲み込まれてしまうからです。
この現象がよく知られているため、研究チームでは“いて座Aスター”の近くに恒星があるとすれば、それは古くて堅牢なものだと思い込んでいたんですねー

ところが驚くべきことに、“SO-2”は若い恒星だと分かりました。
ひょっとすると、今回見つかった“SO-102”も若い可能性があります。

ほんとブラックホール関する発見は、予想外なことが多いですねー

次の探査目標は小天体 NASAの彗星探査機“ディープインパクト”

2012年10月12日 | 宇宙 space
NASAの彗星探査機“ディープインパクト”が、10月5日に軌道を変更しました。
新たな小天体探査を行うため、飛行スピードを秒速2メートル速めたんですねー

2005年1月に打ち上げられた“ディープインパクト”は、同年の7月4日にインパクター(衝突機)をテンペル彗星(9P/Tempel)に発射しています。

その衝突によってできるクレーターや、飛び散るチリから彗星の内部構造を調査するのが目的だったんですねー
このミッションは、銃弾を銃弾で打ち落とすほどの精度が必要だったようです。

当初の目標を達成した“ディープインパクト”は、2007年より名称を“エポキシ”に変更して活動を続けています。

この計画は探査機に搭載された望遠鏡をつかって、
太陽系外惑星の観測を行うEpoch(Extrasolar Planet Observation and Characterization)と、
新しい彗星の接近観測を行うDIXI(Deep Impact eXtended Investigation)の2つのミッションから構成されています。
なんでも“ディープインパクト”を再利用したことで、計画は4000万ドルの低予算で実現されたそうです。

さらに2010年11月にはボーナスミッションとして、ハートレー彗星(103P)のフライバイ観測を行っています。
ハートレー彗星に約700キロまで接近して中心核を観測、
氷の塊が吹雪のように舞っている彗星の様子を、氷の塊1つ1つが見えるほど鮮明にとらえています。

これまでに予想以上の成果を見せてきた"ディープインパクト"は、現時点までで67億5000万キロも宇宙空間を飛行しているんですねー

まだまだ活躍が期待されていて、次の探査目標には地球近傍の小天体“2002GT”が検討されているそうです。

赤外線観測から分かった高精度の“ハッブル定数”

2012年10月11日 | 宇宙 space
NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”の観測から、宇宙の膨張率を表すハッブル定数が高精度で求められました。

この宇宙が膨張し続けているということは、1920年代に明からになっています。

そのきっかけとなったのは、“ケフェイド”と呼ばれる天体の、真の明るさと変光周期との関連性が判明したことでした。

変光周期から真の明るさが分かるようになり、それを見かけの明るさと比較すれば、“ケフェイド”までの距離が分かります。
そして、多数の“ケフェイド”の距離測定結果を手がかりにして、宇宙が膨張していることが分かりました。





真の明るさと変光周期との関連
横軸が周期の長さ、縦軸が明るさ
天の川銀河で10個、
大マゼラン銀河で80個の
“ケフェイド”を観測



カーネギー天文台の研究チームは、“スピッツァー”を用いて天の川銀河や大マゼラン銀河にある“ケフェイド”を観測しています。
赤外線観測では宇宙空間のチリを見通せるので、“ケフェイド”の真の明るさを正確に求めることに成功したんですねー

宇宙の膨張は、遠くの天体ほど速く遠ざかって見えることで示されます。
天体までの距離と、その天体の遠ざかる速度の比例定数が“ハッブル定数”と呼ばれるものです。

“スピッツァー”の観測から求められた“ハッブル定数”は、74.3±2.1キロ/秒/Mpcです。
これは、距離が1Mpc(メガパーセク:約326光年)離れるごとに膨張速度が秒速74.3キロ大きくなる っということを表すんですねー
この値はハッブル宇宙望遠鏡による、従来の可視光観測の3倍の精度で求められ、誤差も3%にま抑えられています。

たった10年前までは、宇宙論に関する数値はおおざっぱだったのに、
今では数%レベルの精度で求めることができるんですねー

球状星団の中心部にブラックホールが2つあった!

2012年10月10日 | 宇宙 space
“いて座”にある球状星団“M22”の中心部。

ミシンガ州立大などの研究チームが、ここに2つのブラックホールが共存しているのを発見しました。

これまで1つの球状星団には、2つ以上のブラックホールは存在できないと考えられていたんですねー
球状星団の中心部に2つ以上のブラックホールがあると、1つを残してはじき出される っというのが、これまでの定説でした。
なので今回の研究は、この定説を覆す発見となります。

研究チームは、ニューメキシコ州にある電波望遠鏡を使って、地球から約1万光年離れた球状星団“M22”を観測しています。

球状星団は多くの恒星が球状に密集した天体で、
この中心部に、ブラックホールから噴出するジェットに特有の強い電波源が2つあるのを確認したんですねー
2つのブラックホールは、それぞれ太陽の10~20倍の質量があるようです。








ジェットを噴出する
2つのブラックホール
(想像図)





他の球状星団より中心部が大きいことが特徴の“M22”。
研究チームでは、中心部が大きいのは複数のブラックホールを抱えているのが理由だと推定しています。

さらに“M22”には5個から100個のブラックホールが存在する可能性もあるようですよー

連星系が関わっていた? 黄色超巨星の超新星爆発

2012年10月09日 | 宇宙 space
昨年5月に超新星“2011dh”が出現しました。
でも、この超新星の元となった天体は、同タイプの超新星爆発を起こさないと考えられていた“黄色超巨星”だったことが分かったんですねー

なぜ、超新星爆発が起きたのか?
この疑問を解き明かすために、カブリ数物連携宇宙研究機構(カブリIPMU)の研究チームが、爆発までの新たなシナリオを作成しています。

“りょうけん座”のM51銀河に超新星が出現したのが2011年5月です。





M51銀河の超新星“2011dh”の
爆発前(左)と爆発後(右)の
観測写真




超新星は“SN2011dh”と符号がつけられ、光の成分を調べられました。
すると、爆発前の星が主に水素でできた外装をほとんど失っていた“IIb型超新星”と呼ばれるタイプのものだと分かったんですねー

ハッブル宇宙望遠鏡による爆発前の画像から、元の天体は“黄色超巨星”と見られています。
でも、進化の途中である“黄色超巨星”は、重力崩壊して超新星爆発を起こすにはまだ早いはずです。

研究チームはまず、爆発後の超新星の明るさの変化から、元の天体はやはり“黄色超巨星”で間違いがないということをつきとめています。

では、“黄色超巨星”はどのように水素の外層を失い、どのように爆発したのでしょうか?

水素の外層を失った過程については、超巨星と連星を成すパートナーの恒星に剥ぎ取られた。 っとすれば自然に説明がつきます。







超新星“2011dh”の
爆発前の状態(想像図)
連星系の一方の星の外層が
伴星の重力によって
剥ぎ取られている




こうした物質のやりとりをする連星が、どのような道をたどるのかをシミュレーションしています。
すると、「125日周期でお互いの周囲を公転する、それぞれ太陽の16倍と10倍の質量の連星」の場合、やがて片方が“黄色超巨星”となって爆発する結末を再現できたんですねー
星中心の質量や外層に残った、水素の量もつじつまが合うものでした。

また、このシミュレーションモデルでは、もう1つの星は大質量の高温の星になっていることが示されています。
表面温度が非常に高いので紫外線を多く放射し、目に見える光はほとんど出していなかったようです。
なので、爆発前の画像では検出されなかったと考えられています。

さらに、この伴星がやがて青色の光を放ち始めることも予測されていて、
もし今後の観測でその光が見つかれば、このシミュレーションモデルが正しいことの有力な証拠となるんですねー

超巨星は古い恒星で、核で消費する元素の種類によって、青色と赤色の間を揺れ動きます。
過渡的な黄色の段階で、生涯の多くの時間を過ごす超巨星は、ほとんど無いと考えられています。

なので、今回の“黄色超巨星”段階での超新星爆発は、連星系が関わった珍しいケースなんですねー
連星系の進化と、爆発のメカニズムの関連… 今後は、これを研究することが重要になるんですねー