シネマヴェ-ラ渋谷の内田吐夢生誕110年祭に、二作品の活弁上映をさせていただきました。
大正14年の短編喜劇『虚栄は地獄』と、昭和11年の『生命の冠』。
『生命の冠』は本来トーキー映画で作られたものですが、サイレント版も作成され、残存する後者のフィルムでの活弁上映です。
『生命の冠』は、現在の北方領土で蟹缶詰製造所を経営する兄弟の葛藤を描いた良心的作品。流氷のオホーツク海、蟹漁の様子など、現地ロケーションによる貴重な映像が随所に見られます。
帝国主義や貧富の格差、非人道的労使問題等を痛烈に描いた「蟹工船」に比べれば内容はかなり甘いし、山本有三の原作よりも利潤追求型人間や社会への批判性は弱いですが、現代の食品偽装事件に見られるのと同じ職業倫理の問題が提示されていて、テーマの時代性と普遍性を感じる作品でした。
内田吐夢監督がもしこの頃にもっと過激な作品を作っていたら、小林多喜二のように検挙され非業の死を遂げていた可能性もあるわけで…、その恐ろしい時代を見つめながら生き延びた監督だからこそ、戦後『飢餓海峡』等の名作を世に送り出し得たのだなあ、と改めて感じました。
オリンピック開会式の放映時間だったにも関わらず(私もリアルタイムで見たかった)、いらして下さった多くのお客様、シネマヴェーラ渋谷の皆様、ありがとうございました。
大正14年の短編喜劇『虚栄は地獄』と、昭和11年の『生命の冠』。
『生命の冠』は本来トーキー映画で作られたものですが、サイレント版も作成され、残存する後者のフィルムでの活弁上映です。
『生命の冠』は、現在の北方領土で蟹缶詰製造所を経営する兄弟の葛藤を描いた良心的作品。流氷のオホーツク海、蟹漁の様子など、現地ロケーションによる貴重な映像が随所に見られます。
帝国主義や貧富の格差、非人道的労使問題等を痛烈に描いた「蟹工船」に比べれば内容はかなり甘いし、山本有三の原作よりも利潤追求型人間や社会への批判性は弱いですが、現代の食品偽装事件に見られるのと同じ職業倫理の問題が提示されていて、テーマの時代性と普遍性を感じる作品でした。
内田吐夢監督がもしこの頃にもっと過激な作品を作っていたら、小林多喜二のように検挙され非業の死を遂げていた可能性もあるわけで…、その恐ろしい時代を見つめながら生き延びた監督だからこそ、戦後『飢餓海峡』等の名作を世に送り出し得たのだなあ、と改めて感じました。
オリンピック開会式の放映時間だったにも関わらず(私もリアルタイムで見たかった)、いらして下さった多くのお客様、シネマヴェーラ渋谷の皆様、ありがとうございました。