そよ風つうしん

小さな自然の発見をご紹介してきましたが、転居で環境が激変。内容を一部変更し日々の雑感を綴ったりもしています

大夕やけ

2010年07月02日 | 夕やけと薄暮
先月の夏至が過ぎたばかりの頃、もう7時半ごろでしたが、北向きの奥の部屋の窓があまりにも紅く染まっているので、思わず箸を置いて見に行きました。

太陽は沈んでしまっても、強い光が雲を染めていたのでしょう。
それは見事な夕焼けでした。


こんなふうに、広い範囲の空が見事な色になるのを「大夕やけ」と呼ぶらしいことを知ったのは、40年ほども前のことでした。


< 君逝きて 大夕焼けの ただ虚し > 十一

大学の頃からの一番の親友を失った父が、お葬式の帰り道に詠んだらしい一句が句帳に残っていました。

大動脈瘤破裂・・・今なら前もって手術なども可能なのに、そんなものを体の奥に抱えていることもご存じなく、銀行の頭取としての激務をこなされていたある日、突然に倒れたまま帰らぬ人となりました。

逝った人も見送った父も、まだまだ「死」なんて思っても見ない年齢だったので、驚きはひとしおだったことでしょう。


それからの数年、父はたて続けに同じグループの友人を見送ることになり、つらさを口にすることはありませんでしたが、どんなにか深い悲しみと寂しさに向かい合っていたことかと思います。


父が写経を始めたのは、それから数ヶ月の後からでした。

手がかじかむような冬の夜も、暑さにあえぐ真夏の夜も、一般家庭には冷暖房の設備などまだなかった頃のことです。
どんな日にも、静かに墨を磨っていた父の後ろ姿を忘れることが出来ません。


私は父の生前は不肖の娘でしたが、せめて今、寒さにも、暑さにも、決して愚痴は言うまいと思って暮らしています。
コメント (15)
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