相良三十三観音霊場(さがらさんじゅうさんかんのんれいじょう)は春と秋のお彼岸に合わせ一斉開帳される。
相良三十三観音は熊本県人吉市及び球磨郡内にある33ヶ所の観音霊場である。18世紀の終わり頃、観音菩薩の三十三の悲願にちなんで選定され、巡礼の地とされるようになった。二十年も前のことだが人吉には3年ほど住んでいた。だが、仕事に追われ「三十三観音めぐり」についての知識は全くなかった。
一昨年のこと、秋のお彼岸中日に、妹夫婦が「三十三観音めぐり」をぜひ一緒にと誘ってくれた。車ではあるが三十三か所を一日で回るという。体力に自信はなかったが、せっかくのお誘いよろしくとお願いした。
朝四時に起きて高速道を通り人吉へ。最初に訪れたのは市内中心部にある旧相良家の菩提寺「願成寺」境内南にある一番札所。朝がはやいためかまだなんの準備も出来ていない。静かにお参りした。
観音堂は、観音さまが鎮座される聖域。お堂にお手水(頂水)がある場合は、手を洗い、口をすすぎ、身を清め静かにお参りする。さい銭箱のある場合はお賽銭を入れ、鰐口がある場合はこれを軽くならし、合唱してお参りする。きっとご利益をいただけることでしょうとある。
それぞれの観音堂のお世話は地区の方々が総出で行うとある。開帳期間中はお茶、お煮しめ、お結び等のお接待がある。お世話いただく地元の方々とのゆっくりとした会話がとてもさわやか。簡単な地図を頼りに次の二番札所に向かったがどうにも場所がわからない。場所を訪ねようと思っても朝が早いためか誰とも出会わない。札所らしきところを何度も回ってやっと見つけた。孟宗林の奥の高い階段を上ったところが札所だった。朝の空気が気持ち良い。まだ2番目の札所だが、お参りしてよかったとつくづく思う。
八番札所「湯の元聖観音」でお接待を受けた。暖かいおこわのお結びに味噌汁。おいしかった。この味は今も忘れられない。十一番札所「永田(芦原)聖観音」でのお接待は朱色に染まったみょうがの酢漬け。お接待の方々と会話がはずみ〝うちの奥さま”その作り方を早速教わった。
時間に追われながらの観音めぐり、終わりに近い三十二番の札所は「新宮寺六観音」は錦町指定の重要文化財。竜宮のような門をくぐり32段の石段を登れば53年間もかかって作られた6体の観音様が待っていた。静寂な黄檗宗新宮寺の境内は見事なかえでの林につつまれている。紅葉の時期にもう一度尋ねることが出来ればと欲が出てきた。
思いがけない「相良三十三観音堂めぐり」。さわやかな彼岸を迎え、昨日のことのように思い出される。一日で回りきるのは大変だったが、忘れられない素晴らしい一日を妹夫婦にいただいた。感謝、感謝。