公式裏ブログ「波風食堂、準備中」を久しぶりに更新。お題は「生き続けること」『日の名残り』(カズオ・イシグロ著)買う。早川文庫は、中学の時の『山椒魚戦争』以来。最近の文庫本は活字大きく素敵 「自宅の庭にSL 誰か引き取って」(11/6朝日)の記事。SLファンの亡き義父が41年前に移動設置費込み2500万円(うち車両700万円)で購入したのを「維持費かかり大変、運び出して庭を更地にする費用出してくれたら無料で」と所持者(64歳)。持ち物と自分の後始末を考え始める中級老人の杞憂、わかるなあ。
捨てたのは第5版の「広辞苑」(1998年)。解説文の送り仮名に違和感あったが我慢し、第6版(2008年)は買わずCD版でお茶を濁す。これ、モニター上の言葉の意味を知るに特化し辞書とは言いがたい。本屋で第7版のカタログもらいじっくり読む。お姫様抱っこ、加齢臭、直箸、ちゃらい、無茶振り、スマホ、沖縄返還密約、民間軍事会社、熊本地震、赤塚不二夫、加藤周一、鶴見和子、美瑛等の新項目に見入る。送り仮名の許容と本則の扱い方の変化を知る。
もっとも興味深かったのは活字の大きさ。普通版と机上版(B5サイズ)の違いだ。後者なら目の衰えがあってもあと10年は何とかなる気がする。全3216頁を単純計算で1日1頁読み続けると10年以内に読み終わる(笑)。別冊付録424頁分(漢字小辞典、アルファベット略語一覧、国語関係の公的基準、手紙の書き方)は当然除く。思いつきだが、「1日1枚 広辞苑」、悪くないね。
漫画版「君たちは、どう生きるか」(マガジンハウス:原作 吉野源三郎、漫画 羽賀翔一)読む。漫画と活字がそれなりに共存している。絵が達者ではないので、突然活字に変わっても不満が残らない(笑)。活字版より、コペル君と叔父さんの関係が強く伝わってくる。それにしても、軍国主義の時代に生まれ今も読み継がれている奇跡。
標題「ことばは、自由だ。」は新聞全面広告から。『広辞苑 第7版』の宣伝コピーだ。先週、長く愛用した広辞苑を字が小さくて読めなくなり捨てた。大学で出会い、絶対的な真理の羅針盤と信じてきた約半世紀。やっぱり、机上版を予約しようかな。10月末で地方紙1紙購読中止し全国紙2紙、日曜版1紙、地元紙1紙の生活に。9月には夕刊も辞めていた。全く経済的な理由だが、言葉から少しづつ距離を置き始めたような感じがあった。
その宣伝紙面の後に上記社説。吉野源三郎著「君たちはどう生きるか」を例に『名著ふたたび 混迷の時代だからこそ』の呼びかけ。30年以上前、荒れた学校でこの本を強く生徒にすすめた。「君たちは-」は大学の道徳教育論でも参考図書に。家に、新旧の文庫版、生徒用ハードカバーの3冊。捨てられない蔵書本。漫画版も読みたいが…大丈夫かな。活字版「君たちは-」に使われているイラストも大変に印象深いのだ。
朝日社説は、名著の漫画化を一つも疑うことなく評価する。未だ漫画を読んでいないが活字と漫画の相互の共生を期待したい。広辞苑の宣伝コピーに「さあ、もっとしなやかにことばと向きあい、もっと自分らしい表現を生み出そう。言葉は自由なのだから。」とある。『言葉』を『表現』に変えても通じる。絵、書も、音楽も、木工細工だってその源は言葉。「文化とは文(言葉)が化けたもの」と画家の高橋英生さんが言っていたのを思い出す、そんな文化の日の朝。