(前回『浮世の画家』から続く)
桃子さんの方は、「自分とは何か」を徹底的に追求する。老後はそのための時間と言う感じ。図書館でノートに書き写した人類誕生史だって自分史にしっかり引き込む。亡き夫とのなれそめや暮らし、子どもたちとの関係、人生指針のばっちゃん、いちいち自問自答で解説し自分を納得させる。この理屈っぽさ、素直さ、率直さ、行動力が『おらおらでひどり いぐも』を導く。『浮世の画家』の方は終始一貫理屈っぽさ漂う。読みやすいがその分、作者の巧妙な企て感じる。間接話法で、「私は私自身の責任で人生を全うする。色々あったが」なんだなあと最後の最後に思う。そこは桃子さんと一脈通じる人生の肯定。だから最後まで読み通せる。


