波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

第45回『ほんのおつきあい』記録

2025年01月30日 | 読書

コロナで休んだ時期をはさみ、読書交流会『ほんのおつきあい』も45回目。素直に嬉しい。この種のコトは続くのが難しいのだが、「波風氏とママヨさんの読書感想茶飲み話」が基本のお気楽イベントだからだろう。2人が健康で、ケンカなく、難事無かったら「月末日曜日の午後2時開催」が続けられる。

MS 小説『博士の愛した数式』(小川洋子著:新潮文庫)、読書交流に参加していると職場の人に話したら勧められた本。家政婦親子と博士と博士の姉の相互の人間関係が相手を深く思いやる心に満ちていて感動★5
マンガ『疲れた夜に夜食を届ける出前店』(中山有香里作:KADOKAWA)、今の職場は身体は疲れるが心が疲れないので毎日が楽しい。このマンガは辛かった前の職場を辞めた時に読み慰められた。
【交流から】自分に馴染みのない数学と小説の関係を描いていて驚いた。数学が苦手だったが中学生に教える機会があって面白くなり数研3級合格した(HF)この本もそうだが、韓国映画『不思議の国の数学者』や米映画『グット・ウイル・ハンティング/旅立ち』は面白く印象に残っている。数学は不思議な魅力で人を惹きつける(波風)他の参加者全員が読んでいて映画も見ていた。

 

ママヨ 小説『あきない世傳 金と銀』全14巻(高田郁著:ハルキ文庫)、江戸時代の女性の9~60歳の人生、貸してくれた方の「ハンカチいっぱい用意して読んでね」が全くその通りだった(涙)、江戸と違い商家の主人になれず財産も持てない大阪で、困った時に知恵を発揮して生き抜く物語。商売は「買って嬉しい、売って嬉しい」を伝えてくれる。3ヶ月かかって読了★5
小説『沙林 偽りの王国』(帚木蓬生著:新潮社)、前からこの著者の本を読み医師だから書けた小説だと思った。薬の先生以外は実名で麻原の金の亡者ぶり描かれているところまで読書途中。オウムがなぜ大量殺人を犯したのかが明らかにされないのが(死刑)非常に疑問、サリン事件30年目の今年だが同じ時期の阪神神戸大地震は繰り返しマスコミが扱うがオウムは全く表に出ない。★未定
交流から】確かにサリン事件やオウム真理教の犯罪は隠されている感じ。権力や巨大宗教団体に都合の悪いことが相当あるのだろう(波風)、上九一色村や麻原の情けない姿が今でも浮かび悪いと分かっていても宗教にのめり込む不思議がある(MS)、オウムに入信した医師が自責の念で自死したのが心に残っている(HF)

 

HF マンガ『娘がいじめをしていました』(しろやぎ秋吾作:KADOKAWA)、SNSにより思いもよらない事態になる家族。いじめの当事者(加害者と被害者)になった時の選択肢を考えさせられる。中学校で働いていて、校外のスマホによるトラブルを先生たちが扱うのは大変だと思いつつ、それ以外の解決方法は何かも考えさせられる★不明
コミックエセイ『人見知りの自分を許せたら生きるのが楽になりました』(わたなべぽん:KADOKAWA)、ドライアイのため好きな本が長時間読めず今まで手にしなかったコミックを読みました★不明

 

波風 小説『すべての、白いものたちの』(ハン・ガン著:河出文庫)、アジアの女性作家が初めてノーベル文学賞受賞した作家、散文詩みたいだと思いながら繊細な言葉と巧みな訳で最後まで読めた、3章の構成が独特で解説を読んで「そういう小説なのか」と驚く、今までに無い読後感★5。歌文集『豆腐屋の四季 ある青春の記録』(松下竜一著:リプリオ出版)、著者の豆腐屋以後の文学者になってからの仕事に様々な意見があるようだが、60年代末の空気を思い出しながら本作を感動的に読んだ★5


こんな割合に丁寧な記録掲載も久しぶり。【交流から】は沢山あるが話に夢中で記録できなかった。波風氏から質問の「いき」と「センスいい」と「カッコいい」のうち言われて一番嬉しい言葉は?の回答は面白かった。それぞれの人の語意が微妙に違う 読書がとても贅沢な時間の使い方かもしれない。薄っぺらさが露呈しまくってる新聞や映像世界に身を置かざるを得ない中で前回の続きを書こうと思ったが、読書交流の熱が未だ残っているうちに掲載しとくか、の気分。

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いき≦センス 

2025年01月28日 | 日記・エッセイ・コラム

定義できない「いき」と「センス」と「カッコいい」。それで困ることはないが、いったん「?」点灯すると決着つけずには落ち着かない(笑)。本を読んでも「?」消灯できず、いつものように直感的に決着つけるしかない。まあ、一番の問題は、なぜ波風氏はこの問題にこだわるのかということなんだけど。

本の知識だが、『いき』とは廓に見られる異性への「媚態」を柱に、武士道から繋がる町人の自由な「意気地」と、仏教の運命的な静観の「諦め」とで支えられた美意識の構造、で最初の?決着。江戸時代からの感覚表現だが今も使われているのはアップデートのゆえだろう。縞柄が粋で縦縞が横縞より粋という説明に波風氏が大いに感心している場合でなく、世界観や宗教観をまとって長い時代を生き抜いている審美眼と押さえておこう。自分を殺してでも信ずるものを生かすといった美しさを根底に持つ凄みある感覚。

それに比べて、『センス』は軽い感じだ。本では「センスとはリズム」などとあり、時間と人間の関係、偶然性、意味のリズムなどこれでもかこれでもかと理解不能な哲学的な重量ある説明。ほーっ、やすやすと定義できないんだ(笑)。「最初の定義:センスとは「直観的にわかることである」が一番わかり、結局何もわからない。この本を分かる奴は、言葉の意味は通じても感覚は怪しい奴と思うことにする。『センス』に加重なニュアンスを与えるのは疑問。ヒト・コト・モノに対する「センス」とは、どこかに「面白さを感じる余裕」で良いのじゃないかなあ。もう一つ、センスは才能でなく後天的に身に着く感覚もおさえておこう。
『いき』よりも気軽に使える「面白さ」のカジュアルな評価が『センス』でだめかな。(『カッコいい』との関係は、長くなったので次回に。ところで「面白さ」とは何かなあ?)


画像は、1/8ブログ『ゆるやかな線』掲載の松田正平の、いきで、センスがあって、かっこいい油絵 寝ていて便意ありトイレに入ると嘔吐。定期通院の予定日だったので医師に診てもらった。胃に炎症があるようで、ママヨさんとの結論は前日の「食い過ぎ」(涙)、13時間床に就いて反省に服す貧乏でも楽しく暮らすためには、健康と人間関係と自由が大事らしい。そんなことを思いながら寝て、「お粥できましたよ」で起きた。 

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いき、カッコいい、センス

2025年01月26日 | 日記・エッセイ・コラム

何となくわかっているようで、言葉では説明困難な感じ方がある。映画『PERFECT  DAYS』で感じた気持ちよさを説明しようとすると、段々としみじみした「気持ちよさ」から外れていく。
人間が発明した言葉は疑いようなく便利なもの(?)で、さて何をどう書こうかなと考えるのも、キーボードでモニターに表すのも言葉。だが、誰かに伝えたい事柄を正確な言葉、分かりやすい言葉でしているかどうかはいつも不安。意味が通じる文章が良い文章と信じている波風氏は。

 

言葉の意味を知る辞書の語数、家にある新明解国語辞典が7.9万字、広辞苑が23万字。これまでどれだけ辞書検索したかわからないがン%で(笑)大部分が真新しき。適当に開いた頁でも「こんな意味の言葉なのか」と驚くが、辞書は言葉のだいたいの意味と使い方を集めたものだから、自分が普段使いの言葉の意味を調べようとすると「だいたいこんなことですよ」の安心感は少し得られても、前より曖昧さが増すことも多い。

 

タイトルの3語は、どれも説明困難な言葉だが、ずうっと気になっている定義が確立していない感覚表現の言葉。前に読んだ『「いき」の構造』(九鬼周造著:岩波書店)、『「カッコいい」とは何か』(平野啓一郎著:講談社)、今読んでいる『センスの哲学』(千葉雅也著:文藝春秋)。どれも、言葉では説明できないことを説明しようとする努力に感嘆すると同時に、やはり無理があるなあと思うし、自分の語彙力では理解困難を知る。(ここまで、3語に感じたことを記事化する導入部。たぶん次回で本論に続くと思う)


画像は、坪内和夫さんの作品。カッコいい、センスあるより、いき(粋)な感じに映る。表現に対する肯定的な評価も、微妙に使い方が違う気がする。このイラストが何を表しているかでなく、感じる何かを表すのに  最新の高校生希望職種(AI調べ)で、男子2位女子3位に 「教師・教員・大学教授」、女子2位看護師。これ本当なのかな、本当なら嬉しいが。やりがい破壊の現状を思う。

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脳と筋肉の話

2025年01月22日 | 日記・エッセイ・コラム

先週末実施の大学共通テスト(国語)やってみる。3年続けて挑戦し昨年休んだ。これまでは平均点やっと越えたぐらいだが今年は無理かな。毎回だが、新聞活字が小さ過ぎて裸眼で舐めるように読み異常に疲れる。「始めたからには最後までやり切る」のが目標だから、見直しなんかせずとにかく終わらせる。本読んだり、スクワットしたり、ご飯食べたりの合間に「そろそろ再開するか」となり2日かかった。前より集中力と思考力が落ち、直感力に頼らざるを得ない今回。全5問で、問1説明文、問2小説、問3情報使う新しいやつ、問4古文、問5漢文で合計200点。回答に照らすと134点だった。※参考:『今年の大学共通テスト』(23.1.16ブログ記事)

昨年秋から始めたスクワット、3ヶ月経ったら効能が。その一番は、ヨロヨロせずに片足で靴下穿けるようになったこと(笑)。合間にジャンプしていたらずうっと続いていた足裏と床・地面の間の違和感が無くなってきた。握力増強も少し加えたら蓋開けや雑巾絞りが苦にならなくなった。筋力は正直だ。脳も同じかなあ。 
大学共通テストは「脳のスクワット」みたく、面倒だけれどやり終わると満足感が。観光地と観光客の関係を問う説明文、新鮮な息づかい感じる小説(蜂飼耳著『繭の遊戯』)、NHK大河ドラマ『光る君へ』を思いだす古文・・・・1年に1度だが日本の若者はこういう頭の体操に挑戦しているのか、では俺も・・・・とやってみる波風氏を「面白い奴だなあ」と彼自身思うのであった。


画像は、坪内和夫さんのイラスト。好きなクレーを感じてそのことをコメントしたが返信はまだ無い 屋根の雪が落ち隣家に迷惑かける。やはり塀を立てる以外に無いかなあ。あちこちでこういう事態が起きているらしい公式裏ブログを『(波風食堂)はこだて製造所の工作』で更新。兄妹には似た血が流れているんだなあ。

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『豆腐屋の四季』を読む

2025年01月20日 | 読書

いつか読みたいと思っていた『豆腐屋の四季』(松下竜一著:講談社)読み終わる。家業豆腐屋の後継者として厳しい労働に従事しながら、新聞投稿の短歌を軸に1968年自費出版(1969年に講談社刊)した日々の暮らしと思いを綴った歌文集。1969~1970年にTVドラマになり、波風氏の母親が何度も涙したと言っていたが見ていない。加藤健一が主役だとずうっと思っていたが今回緒形拳だと知った。
少し前に本好きの知人が「青春の神話」みたいにこの本のことを話していた。1937年生まれ(享年67歳)の松下氏と彼が同級生ぐらいなんだと思った。

 

生きるために働くのは何と過酷なんだろう、その中で短歌を作り、家族の面倒を見て、恋愛を成就させる感性と努力と運を掴む強さに驚く。この本の書かれた時代が、波風氏の中学から高校時代と重なり、自分の学生時代がそれなりに色々あっても気楽だったと思った。松下氏が「自分が断念せざるを得なかった大学生などに負けてなるものか」という気持ちを痛いほど思った。
心惹かれたのは、高校卒業を待って結婚した若妻のこと。よくまあ嫁ぐことになったものだ。それなのに、時代の制約だろうが家父長的な束縛が気になった。今なら間違いなく出ていかれるね。それと自分を妙に卑下したり自信一杯になるのは若さかな。読んでいて面倒だったのは和歌。画文集は気にならないが歌文集は読書リズムを乱す。

読んでよかったと、なぜ思うのか。ずうっと後になっても共感と反発が残るのが未熟でまっすぐな『青春』だと思うが、久しぶりに荒削りの青春文学に出あった感じ。映画『PERFECT  DAYS』がほぼ共感(笑)の世界なのは主人公が自ら選んだ暮らし方で、豆腐屋家業はそれと真逆。外から見ている者の心の置きどころというか安心感が違う。だが、両者とも人生とは何かを落ち着いて考えさせるなあ。清潔感が共通しているからかなあ。


この本は絶版で古本は高価。試しに図書館で聞いたら「大きな活字で読みやすい本」の書棚に。嬉しかった 今年初の読書交流会『ほんのおつきあい』を1月26日(日)14:00~波風宅で。参加費200円、参加希望はメールでお知らせください➜namikaztateo@gmail.com

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