こだわり方が、波風氏の好みに重なる中川政治七商店。商品一つ一つに物語り持たせるのが売り、カタログだけでも楽しい。古くからある試され済みの素材を、流行に流されないデザインで勝負している。だから年齢に関係無いモノだらけ。試しに、というわけでもないが肘当てのついたTシャツをプレゼント用に買う。いつものTシャツより高価だが、手にして「これならこれぐらいだろうなあ」と、背伸びした買い物を自分で納得。
一緒に送られてきた22頁の宣伝誌が気持ち良かった。「100年後に残したい、つながる風景」として『お茶の時間』と『土鍋を囲んでつながる時間』の特集。今は跡形も無いが、無印の人と人との温もりを刺激したデザインセンス思い出す。日常の見慣れたモノをデザイン化して新しさを想像させるのでなく、古いモノをデザイン化して新しい懐かしさを創造する安心感。この表紙、作為の無さを色と形と線で実にあざとく打ち出している。ありそうで無かった商品構成の幅広さと売り方、時には贅沢してみるかと思えるのならこの国は未だもつかもしれない。カタログにある雛人形が欲しい・・・・買えなくても見てみたい、と古稀を過ぎた老人に思わせるのはなかなか。シャツと茶碗と新茶と雛人形が並んで売られている商店紹介。
タイトルは市川雷蔵主演『忍びの者』にかけている。身の丈考えない言動を『背伸びの者』と名付けよう(笑)肉欲から解放してくれた老齢に感謝すると言う人がいるが私は違う、から始まるモンテーニュ著『老齢は強力な病気』。性欲への挑戦的な言葉をインフルワクチン接種待つ間に読み「この人、何歳?」と思ったら享年59歳。500年前の老人は若いわ。