*BORN TO RUN-明日なき暴走-
会社帰りにシモキタへ。
久々の花組芝居@
ザ・スズナリであります。
今あえて、こんな小さい劇場でうつ芝居となれば、当然「本公演」ではありません。
座長の加納幸和氏が実験的試み(本公演では不可能な)を楽しむ?ためのヲタ企画「花組ヌーベル」第3弾は、昨年6月の
『盟三五大切』 とはガラリと趣の異なる現代劇。
カナダの劇作家、リー・マクドゥーガルの問題作『ハイ・ライフ』の再演です。
2005年に「ハナオフ」として上演された本作を、若手と古参役者をバランスよく配したWキャストでふたたび!
キーワードは、「麻薬」「刑務所」「銀行強盗」。
たしかに歌舞伎を下敷きに耽美な世界を展開している花組芝居にはありえないシチュエーションです。
というわけで、ザ・スズナリにやってきました。
思えば2005年の前回公演を観ていないので、私にとってはこの再演が初見となります。
ただ、内容については、
流山児★事務所が同じ演目を上演した際観に行っているため、すでに知っていました。
もう公演は終了していることだし、ネタバレありでストーリーを紹介すると、、、
登場人物は中年のチンピラジャンキー4人。
口八丁手八丁、策士のディック。
刑務所から出てきたばかりのバグ。
クスリ漬けで内臓がボロボロのコソ泥ドニー。
そして、唯一逮捕暦をもたない、したたかな二枚目ビリー。
男たちが銀行強盗を企むところから物語は始まります。
目指すは街角のATM現金自動受払機。
社会の底辺であえぎながらも、一世一代の大仕事を成功させ、田舎に引っ込んで「豊かな老後」を実現しようと画策する4人の男たち。行く手に待つのは“ハイライフ”か、いつもと変らぬ“ハイ”な“ライフ”か。。。
初期のタランティーノ映画を彷彿とさせるような、とぼけたテイストの暴力劇という印象です。
ズバッと言っちゃいますが(ネタバレゴメン)、知的な完全犯罪を計画したダメ男たちが仲間割れによって強盗に失敗するという「お約束」通りのストーリーを、脚本の面白さと4名の登場人物の個性で、2時間の傑作ドラマに仕立てる―という趣向。
何故前回パスしてしまったかというと、上演期間が盆休み前の月初(定時で上がれない)、土・日に新宿まで出かけたくない、花組芝居から4人しか役者が出演しない、ハナオフ(本公演ではない)だったから、、、などなど様々な事情が重なったためですが、この芝居、まさに流山児★さんとこで演るために書かれたようなものなんですわ。
つまり花組芝居の役者が加納さんの演出で演じても面白くなるとは思えなかった(わ~ゴメンナサイ
!)わけですね。
でも、今回再演が決まった時、メチャクチャ流山児★版と比べてみたくなったんです。
流山児★(本領発揮)vs花組(本来ならありえない)のハイライフ対決ってか。
それにしてもスズナリなつかしす。。。再演はWキャストなので、8人の役者が出演。竜組、虎組に分かれていて、それぞれの初日(5/25と26)に座長の加納さんによる前説があったりしたのだけれど、今回も色々とワケアリで何とか観に行ける日は5/28(金)のみ。私的には演出家の前説、すっごく聞きたかったので残念無念!当日はもう、挨拶するのがやっと。。。
小さな劇場に満員御礼、開演前と終演後は役者がサイン会なんぞをやっていたから、狭いロビーは人、人、人!!
加納さんが私に気づいてくれたのが奇跡のようだったわ
で、私が観たのは虎組バージョンでした。
キャスティングは、原川弘明(バグ)、小林大介(ディック)、谷山知宏(ドニー)、大井靖彦(ビリー)。
そのつもりで観に行ったので、以降は流山児★バージョンとの比較を中心に書かせていただきますが、何卒ご了承下さいませ。ちなみに、あちらもWキャストだったのですが、私は塩野谷正幸氏のバグ(だけ?)が目当てだったので、オリジナルキャスト版しか観ていません。バグは塩野谷さん以外には思いつかないほどの
ハマリ役だったため、花組バージョンの原川さんに馴染むのにどうしても時間がかかってしまいました。
てか、狂犬みたいに粗暴な荒くれ男役は、愛嬌あるキャラクターを飄々と演じるのが似合う原川さんにとってのニューステージと言うべきなのかな。
花組バージョンは全編を通じて小ぎれいな印象で、オンナノコが安心して観ていられる舞台だったと思います。
役者の線が細いせいもあるのか、ダメダメ中年ジャンキーたちというより、チョイ悪イケメン集団という雰囲気で、4人のジャンキーたちの姿は滑稽ではあるものの、やりきれなくなるような悲壮感は皆無でした。
ヤクでハイになっていても、卑猥な与太話に興じていても、人を殺しても、どこか憎めない可愛さが漂っているというのか。。。
流山児★バージョンはもう男臭さ全開で、ゴミのような人生を生きるならず者たちの物語以外の何ものでもありませんでした。
しかも4人のおじさんたちの間にはなにやらホモホモしい雰囲気も漂っていて、眉をひそめたくなるようないかがわしさも。。。
全く同じ脚本(ほん)でこれほど印象が変わるとは、やはり芝居は生モノなのですね。
料理の仕方で全くの別モノになってしまうのだから、ホントに面白い。
比較する舞台があったせいで、今回の演目は演出を通して加納さんの品の良さを垣間見たような気がしました。
どちらがいい(=優れている)かという話になれば、好みもあるので決めるのは難しいところだけど、個人的には花組バージョンの『ハイ・ライフ』はこれでいいのだ!と思います。
あ、でも。
1つすごく気になったことがある。
ハイ・ライフ@花組バージョンの「白眉」というか、最も印象がキョーレツだった場面。
私は、バグがビリーを殺すシーンだと思いました。
相手が息絶えた後も何度も何度もナイフを降り下ろし、ビリー役の大井くんに血糊まで噴かせるシーンを、ねっとりとしつこくスローモーションで演出した場面は、ほとんどスプラッタ。
流山児★バージョンはほんの一瞬で終わりだったのに(爆)。
おおお~、歌舞伎だあぁぁ!!とプチ感動してしまった私。
やっぱり加納さんは加納さんなんだな、と。
ちなみに流山児★バージョンの圧巻シーンは、イロオトコのビリーがホモホモしくドニーに迫るシーンと、銀行のおねいさん相手に(モノローグで)展開する1人芝居。
あ、どっちも小川輝晃氏だわ。でも一番カコイイのは塩野谷さんなのだw
凝りない男たちのトホホなハードボイルド喜劇は、とんでもない世界を描いているようで、不思議な日常感もあり、がんじがらめの生活に閉塞感を覚えている人にとっては痛快な一編かも。
個人的ツボは策士ディックが垣間見せた映画好きの性格の描写(カッコーの巣の上で、荒馬と女)と、Born To Run!
これはきっと作者の趣味でしょうね。
リー・マクドゥーガルは役者でもあり、この『ハイ・ライフ』は、1996年に巡業先の安宿で生まれた彼の処女作なのだそうです。
同年にトロント地区最優秀新作戯曲賞を受賞しています。
作:リー・マクドゥーガル
訳:吉原豊司
構成・演出:加納幸和
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■BORN TO RUN (Live)/Bruce Springsteen
ワン、ツ――! Live Version でどぞ!!
あああ、シビレるぜぃ