電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

東圭一『奥州狼狩奉行始末』を読む

2024年12月30日 06時00分40秒 | 読書

以前読んだ本で、宮本常一著『山と日本人』(*1)に、興味深い記述がありました。ニホンオオカミが絶滅する明治以前に、馬や牛を飼育していた村人にとって狼は最大の脅威であり、共同で狩りをしたり、陥穴を掘って狼を落としたりしたとのことです。その狼を狩る奉行の話というのですから、書店で見つけた本書はきっと面白いに違いないと感じ、読み始めました。

郡方、郷目付の岩泉源之進が、お役目の帰路に不審死との知らせがあり、岩泉家の人々は驚愕します。長男の寛一郎は病床にありましたが、嫁の幸江とその嫡男、寛一郎の弟で部屋住みの亮介の暮らしとなります。父・源之進の死は狼に襲われ崖下に転落したものとの証言があり、その線で収拾されましたが、山々に慣れている父がただ狼に驚き転落死したとは思えず、亮介は必ずしも納得していませんでした。

日常は下男と端女の夫婦が支えてくれますが、親族は寛一郎が出仕できずに俸祿だけをいただくわけにはいかないと心配します。そこへ、兄の代わりに亮介が狼狩奉行に就任せよとの藩からの下命があり、亮介は近年増加しているという狼害について調べ始めます。

火縄銃を持つ猟師の協力を得て、「黒絞り」という頭の良い大きな狼が率いる群れと対峙しますが、黒絞りは火縄銃の狙いを察知して猟師を襲います。襲われた猟師は恐怖心にかられ、役に立ちません。そんなところへ父の最期に立ち会った下役の松岡武吉が訪ねてきて、「野馬別当は不正をしておる…」という最期の言葉を伝えます。しばらくして、牧場の別当(管理者)である中里賢蔵が馬を不正に密売しているということをつかみます。

村の子供が狼の犠牲になるに及び、藩は狼害を放置できなくなります。鷹狩のお供をする者たちが大勢で巻狩を行いますが成果は上がらず、逆に手薄になった牧場を襲われ馬が被害にあってしまいます。亮介は、むしろ少人数でチームを組み、連射のきく弓で倒すことを考え、弓に秀でた番方の竜二と組むことでしだいに成果を上げていきます。一方で、野馬別当の不正を探っていた松岡武吉が殺害され緊迫感が増す中で、馬医の中川や兄・寛一郎、兄嫁の妹・美咲らの助けを得ながら次第に真相に迫っていきます。このあたりはまるで良質のミステリー小説のようです。そして、黒絞りとの対決は陥穴作戦というところが、『山と日本人』の記述を思い出させるものがあります。

以下、ネタバレを防ぐためにあらすじは割愛しますが、たいへん面白く読みました。帯にある「選考委員、満場一致!」のコピーがなるほどと思われる読後感は、なかなか良いものでした。帯に「静謐なるデビュー作」とあり、この落ち着いた文章が新人作家のものとは驚きでしたが、調べてみたら1958年生まれの66歳、還暦を過ぎての作家デビューでいくつかの賞を受賞しているようで、必ずしも本書が処女作ではないようです。ああ、やっぱり。そうだろうなあ。若い人とは思えない、余計な雑音のない文章は、古希を過ぎた読者には好ましいものでした。

(*1): 宮本常一『山と日本人』を読む〜「電網郊外散歩道」2024年2月

 

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白菜は小ぶりだがまずまずの出来だった

2024年12月29日 06時00分54秒 | 週末農業・定年農業

例年ならば8月末〜9月初旬に植え付ける白菜ですが、今年はマイコプラズマ肺炎に罹患したために20日も遅れて植え付けることとなり、うまく育つか、結球するのかと心配しましたが、なんとか結球して、まずまずのでき具合となりました。それでも例年の大きさと比較してひとまわり小さく、夏場の20日間の成長は大きいのだなとあらためて痛感した次第。来年は、川中島白桃の集荷休みの日を利用して早めにタイミングよく植え付けをしようと思います。

ネギは不揃いですがまずまずのでき具合です。だいぶ食べてしまって、この冬は足りなくなってスーパーで買って来なければいけないかもしれません。来年はもっと多く植えるようにしなければ。

おでん大根です。さっそくおでんを煮ています。それと、私の好きなふろふき大根。納豆に大根おろしもいいなあ。お正月の納豆餅にも大根おろしが不可欠です。晩秋〜初冬の収穫の写真を整理しているうちに、今年の後半の野菜関連記事がないことに気づき、記事ネタとした次第。今はジャガイモ、里芋、タマネギなどとともに作業小屋に貯蔵保管して、必要な時に取ってくる形です。今年のキャベツの価格の高さを見るとキャベツも作れば良かったなあと思いますが、いざ苦労して栽培すると価格が暴落して「買ったほうが安い!」になったりするんだよなあ(^o^)/

 

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愛用の万年筆で新旧の手帳ダイアリーを転記する

2024年12月28日 06時00分11秒 | 手帳文具書斎

うかうかしていうとあっという間に新年に突入しそうな師走です。今年の手帳の残りも少なくなってきましたので、新しい手帳に必要事項を転記する時期になりました。今年の手帳ダイアリーから新年の手帳に必要事項を転記します。特に、すでに決まっている1月〜3月までの予定が中心になります。それ以外のパーソナルデータの部分はパソコンに保存してありますので、追加訂正して印刷し折り曲げて手帳に差し込むだけです。

書き込むのはもっぱら万年筆、それもかなりの量の書き込みが必要になりますので、愛用のプラチナ#3776ブルゴーニュ(F:細字)に同社の古典ブルーブラックインクで転記します。インクが滲んだり裏抜けしたりする心配がないため、安心して記入することができるのがこのインクの長所です。また、スリップシール機構のおかげでインクが自然乾燥して書けなくなる心配がごく少なく、数ヶ月〜半年以上も他のペンに浮気してほったらかしにしてもすぐに書き出せるというのはありがたいです。

プラチナ社の#3776シリーズの万年筆の動画を見つけました。

“Fusion of Science Fountain pens” The world of fountain pens that utilize capillary action

意外なほど手作業が多いことに驚き、あらためてこれは大事に使おうと感じたことでした。

 

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注文していたパソコン切替器が届く

2024年12月27日 06時01分11秒 | コンピュータ

以前、1台のデスクトップパソコンで Windows95 と VineLinux1.1 の両方をインストールし、切り替えて使っていた時期がありました。ウィルス対策上、Linux でWEBを閲覧しメール等を受信し、Windows 上では MS-Works や Lotus SuperOffice 等で文書作成や表計算を行うなど、これはこれで便利でしたが、いちいち再起動するのが面倒になり、とうとう中古のデスクトップ機をもう一台用意しました。そうして片方は VineLinux2.1 を入れ、他方には Windows2000/Office2000Pro を入れて両方を起動し、パソコン切替器で必要な方を切り替えるという具合にして、机上には1組のディスプレイとマウスとキーボードだけがある、という使い方を始めました。これが便利で、PCを更新しても WindowsXP/7 のあたりまで、しばらくこのスタイルを通しました。

しかし、考えてみれば電気代がもったいない。リタイアして仕事を離れれば必ずしも Windows/Word/Excel/PowerPoint が必須ではなくなりましたので、今では Windows はリビングにデスクトップ機1台だけ確保し、書斎では Ubuntu Linux デスクトップ機1台でまかなっています。ところが過日、サブノート機 ThinkPad Edge E130 を Ubuntu Linux 化して運用をはじめましたので、リビングで Windows と Linux を並行して使う場面が出てきました。特に、なんだか添付ファイル付きの怪しいメールが届いた時など、いきなり Windows 環境で受信するのはどうも気が進まない。試しにほぼウィルス等の心配のない Linux で受信し開いてみるほうが安心です。

そんなわけで、昔のようにパソコン切替器があるといいなあと思い、某密林で探してデスクトップ1台とノートPC1台の計2台を1組のキーボードとマウスで共用できる製品を探し、注文しました。サンワサプライの製品です。届いたばかりで実際に試してみるのはこれからですが、2台のPCはそれぞれディスプレイを持っているという前提で、キーボードとマウスをUSBで共用するという形です。さてどんな使用感なのか、楽しみです。

 

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雪の日に通院や買い物に出かけるのは高齢者には難しい

2024年12月26日 06時00分49秒 | Weblog

雪国では、雪降りのお天気は数日間続くことが多いです。降り止んでも一時的なもので、基本的に冬は荒れたお天気になることが多いものです。しかしながら、高齢者にとっては定期的な通院や買い物は必須です。母が元気なうちはそれほどでもなかったのですが、晩年には自宅からかかりつけの医院までの通院が大変でした。結局、車イスタクシーを手配することで切り抜けましたが、もし母が一人暮らしの境遇だったならばと考えると、雪国の生活の困難さは温暖な地方でのものとは比較にならない大変さがあると感じます。月に一回の通院ですら一大事なのですから、日常的な買い物はもっと大変でしょう。地域に歩いていける範囲に商店があればいいのですが、最近は高齢化により個人商店の廃業の動きが加速していて、都市近郊でも買い物難民の発生が懸念されている時代です。要するに、車で行ける人はいいのです。車がない、あるいは免許証を返上した高齢者が、徒歩で行ける範囲に店がないというのは、田舎だけではなく都市近郊でも実はありえます。

当地でも同様の事情があり、地域の要望として根強いものがありました。車で買い物に行ける若い人たちは、そういう問題があることに気づかない。「買い物は私たちがやってあげるから」というのとはまた違って、自分で買い物をすることができる環境が「ある」ことが大切なのです。高齢者と接する年代になってみて初めてわかる「明日は我が身」です。今年の大きな課題の一つに買い物難民問題の解消を掲げ、いろいろと動いて要望してみた結果、某スーパーが移動販売を始めることになりました。

雪の日の朝、自宅の周辺や小学生が通るグリーンベルトだけでなく、移動販売車が停まる空き地も除雪をしておきます。午後、移動販売車が来る時刻には、80代の高齢者が数名、買い物袋を下げて待ち構えています。私はまだ車で買い物に行ける年代ではありますが、要望した手前、年寄りたちと一緒に買い物をします。昨日はちくわと豆腐と笹かまぼこを買いました。車と縁遠くなった高齢者は、「助かるわ〜」と喜んでくれているようです。

 

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お好み焼きでお腹いっぱいな昼食でした

2024年12月25日 06時00分28秒 | 料理住居衣服

過日、妻が「ご飯作りくたびれた〜」と嘆くので、お好み焼きに挑戦しました。キャベツが高くて残り少ないので、カブの葉を使って増量することとし、残り物のボイルイカを小さく切って使います。ついでに残り物の笹かまぼこも小さく切って使うことに。天かすの代わりにシイタケを細かくして代用、これは代用とは言わないか(^o^)/

  1. 市販のお好み焼き用の粉を大さじ3、同量の水を加えてまぜ、卵とシイタケをふんわり混ぜて具材を入れ、よく混ぜ合わせます。
  2. よく熱したフライパンに油をなじませ、濡れタオルの上でほんの少し温度を下げて生地を丸く置き、上にハーフベーコンを載せて弱火でこんがり焼きます。
  3. ひっくり返して裏面もこんがり焼きます。
  4. 妻と半分こして皿に移し、ソース、マヨネーズ、かつお節、青のりをかけていただきました。

キャベツが高いのでケチって一部をカブの葉を刻んで代用しましたが、充分に美味しかった。昨晩の残り物のシューマイも秘伝豆の天ぷらも添えて、りんごをデザートに見た目も豪華、お腹いっぱいな昼食でした。妻も満足したらしく、「一家に一人、料理好きな旦那」がいるといいそうです(^o^)/ そりゃ〜あなた、旦那が二人も三人もいたら困りますがな(^o^)/

 

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今年も無事にコーヒーと「冬至カボチャ」をいただきました

2024年12月24日 06時00分09秒 | 季節と行事

冬になると毎年恒例になっているのが「冬至カボチャ」です。要するに、小豆のアンコでカボチャを甘く煮るのですが、当地ではこれを「冬至の日」に食べると無病息災と言い習わしているのです。カボチャでビタミン補給する意味もあるのでしょうが、今のように甘いものがふんだんに食べられなかった60年以上前の子供の頃には、格別の甘味だったように記憶しています。で、今はコーヒーのおともに。毎年、「冬至カボチャ」を食べながらコーヒーを飲む時、一年の健康と無事に感謝するのです。

 

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近頃のスパムメールを単語分解し語彙分析してみると

2024年12月23日 06時00分11秒 | コンピュータ

毎度毎度、新たなスパムメールが届きます。よくもまあ、いろんな手口を考え出すものだと半ば呆れ、半ば感心する(^o^)ほどです。とりあえず、spam-samples というフォルダを作り、ここに放り込んで保存(^o^)してきましたが、ある程度たまってきたので、全く同じ文章で複数届いたものは1通だけを取り出してテキストファイル spam-samples.txt とし、これをテキストデータ処理言語 awk を用いて単語分解して、どんな単語が多く使われているのかを探ってみました。シンプルですが、一応は語彙分析という形です(^o^)/

サンプルとして使ったスパムメールは2023年4月から現在まで23件、「最後の警告」「@nifty」「auじぶん銀行」「ソニー銀行」「マイナポイント」「MasterCard」「Amazon」「三井住友カード」「三井住友銀行」「イオンクレジット」「三菱UFJ」「JAネットバンキング」「ヤマト運輸」などを詐称するものです。途中で不自然に改行されているものなどはちゃんとつながるように整形しましたが、語彙はまったくそのままです。以前は「行動を監視しているぞ、暴露されたくなければ金を払え」というタイプが多かったのですが、これは「ビットコインウォレット」を含むメールをサーバ側で拒否してからは届かなくなりました。

さて、spam-samples.txt を tango-utf.awk というスクリプトで単語に分解します。要するに、漢字、カタカナ、英数字を正規表現で表し、1文字以上連続するならそれを出力、それ以外のひらがなや記号等は出力しない、という動作です。標準出力をパイプでソートして、作業用のファイル temp1.txt に保存します。

 $ awk -f tango-utf.awk spam-samples.txt | sort > temp1.txt

temp1.txt の一部を示すと、例えばこんなふうです。


破壊
破棄
配信
配信停止
配信停止
配信停止
配信登録
配送
配送
配送情報
発行
発行
発行

これを、やはり awk スクリプトで数えさせます。

 $ awk -f count.awk temp1.txt > temp2.txt

その結果 temp2.txt は、次のようになります。


破壊                 1  回 
破棄                 1  回 
配信                 1  回 
配信停止               3  回 
配信登録               1  回 
配送                 2  回 
配送情報               1  回 
発行                 3  回

あとは、出現頻度(回数)の順にソートしてやります。

 $ sort -n +1 -2 temp2.txt > spam-samples-kekka.txt

ちなみに、-n は numeric sort つまり数値としてソートするオプション、+1 -2 はどの列でソートするかを表します。その結果、例えば15回を超える出現頻度の高い単語は次のとおりでした。


登録                16  回 
本                 16  回 
com               17  回 
1                 18  回 
2                 18  回 
9                 18  回 
Amazon            18  回 
アカウント             18  回 
合                 18  回 
問                 18  回 
確認                21  回 
願                 22  回 
客様                22  回 
000               24  回 
https             26  回 
カード               29  回 
利用                30  回 
メール               37  回 
場合                38  回 

このうち、Amazon は詐称されたものですから省略し、単なる数字や .com はあまり意味がないので無視することとします。問と合は同数ですのでおそらく「問い合わせ」という語であろうと考えると、スパムメール作成者の本音としては、

お客様のアカウントに登録されたカードの利用について、確認をお願いします。なお、この場合、本メールについての問い合わせはしないでください。https://〜

ということなのでしょう。いろいろなもっともらしい理由を付けて偽サイトにアクセスさせ、情報を入力させようとするが、本物への問い合わせはしてもらいたくない、要するにこれが最近のスパムメールの本質ということ。

このように、テキストファイルを単語分解し語彙分析することで、建前ではない無意識の本音を推測することができるというのが、自己流ながら平成初期の頃から私が使ってきた自由記述アンケートの分析手法(*1)で、かなり有効だったと感じています。

(*1): 上田太一郎『事例で学ぶテキストマイニング』を読む〜「電網郊外散歩道」2014年7月

 

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あちこちで市街地にも野生動物が出没している意味

2024年12月22日 06時00分06秒 | Weblog

最近、あちこちの市街地で野生動物が出没しているようです。ニュースでは、秋田県のスーパーにクマが居座ったり、小学校でクマがうろついていたり、「えっ、こんなところまで!」と思うような場所でも目撃されていますし、当地でも近隣の市町で野生のクマが目撃されており、少し前には早朝にイノシシの目撃情報がありました。私の若い頃、今から50年ほど前には、山間部で野生のクマが目撃されることはありましたが、これほど頻繁に市街地に姿を現し居座ることは聞いたことがありません。明らかに個体数は増えており、必ずしもこれまでの経験則があてはまらない事態が生じているようです。

これまでの経験則というのは、クマは人間を恐れるので、熊よけの鈴など音の出るものを身につけていればクマのほうが逃げてくれるというものです。山菜採りやきのこ狩りなども、そうした安心感があって楽しめるものでした。またブナの実の豊凶でクマのエサが左右され、凶作の年にはエサを求めて里に降りてくるとも説明されていました。今年はブナの実が豊作だから本来ならばクマは里に降りてこないはずだったのです。ところが現実は、どうもそういうものではなさそうです。

クマだけでなく、野生のイノシシが山麓の田畑を荒らし、サルの群れが果樹園を襲うと、農家の自衛手段ではとても対抗できません。これまで山里を守ってきた農家が高齢を理由に離農する理由の一つに、こうした野生動物に適切に対処できない現実があるのだろうと思います。

昔は、里にクマが出て作物を荒らしたとなれば、人的な被害が出る前に対処するべく、大勢の村の人たちがほら貝や鍋、釜、太鼓等を鳴らし、大騒ぎをすることで一定の方向にクマを追い込んでいき、猟銃を持つ人たちが待ち構えてクマを退治するというやり方が取られていたようです。仮にクマを逃したとしても、大勢の人間の怖さをしったクマは里を荒らしにこなくなる、という学習効果がありました。

ところが、今はこうした方法は取れません。山里には若者や壮年の人がごく少なく高齢者が中心ですし、現在の法体系や判例は野生動物の保護の面が強調されすぎて、個体数が増えすぎて被害を生じていてもお役所は適切に対応できない。被害を受けた山麓の住民が泣き寝入りするしかない、というのが現実でしょう。少しずつ、少しずつ、野生動物に対する山里のバリアが弱体化していき、ついに市街地が野生動物の活動エリアに入ってきたということだと思います。大勢の人間の怖さを知らないので、一人や二人の人間なら怖くない、むしろ弱っちい格下の生き物だ、と認識しているのかもしれません。

都市部にも河川が流れ、河川敷を通れば鉄道や道路をやり過ごして移動することができ、ちょっとした耕作放棄地や荒れたヤブがあれば身を潜めることができます。市街地のかなり奥の方、「えっ、こんなところまで」と驚くようなところに、野生動物は到達できるのです。以前の勤務地の近くに現れたツキノワグマは、飲食店の残渣をあさりにきていたと聞きました。今まではキジやタヌキや野ウサギ程度だったわが家の果樹園でも、これから、早朝・夕方など野生動物の活動時間帯には痴漢や変質者の出没を警戒するのと同様に、イノシシやクマなどと出くわすこともありうると考えておく必要が出てきたのかもしれません。

 

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香月美夜『本好きの下剋上』短編集IIIを読む

2024年12月21日 06時00分51秒 | -香月美夜

TOブックス刊の人気シリーズ、香月美夜著『本好きの下剋上』短編集IIIを読みました。実際は、書店に予約して連絡があり、入手したのが12月7日でしたので、発売予定日よりはかなり早く入手して読み終えていました。したがって、正確には再読したことになります。本編が第5部「女神の化身XII」として昨年12月に完結(*1)していますので、1年ぶりの刊行になります。これまでの短編集I、IIと同様に、主人公ローゼマイン以外の視点から見たサイドストーリー集です。したがって、本編を読んでいないと事情がわかりませんので、「はて?」と盛大に疑問符が並んでしまうことになります。逆に本編を読んだ人にとっては、物語の本筋の背後にはそんなことが起こっていたのか、周囲の人はそんなふうに受け止めていたのか、ということがわかる仕掛けになっています。

例えば王命でアーレンスバッハのディートリンデの婿に入ったフェルディナンドが供給の間で毒を受け、ローゼマインが救出に向かうまでの流れの中で、エーレンフェストの領主ジルベスター視点で見た「諦めない存在」やハイスヒッツェ視点での「ダンケルフェルがーの会議室」の2編を読むと、より多面的な緊迫感が感じられます。本編ではハンネローレが自主的に志願しハイスヒッツェが護衛役に付けられたような印象でしたが、ここではダンケルフェルガー内部の事情から指名された出陣であったことがわかる、という具合です。このあたりは、もう一度、本編に戻って読み返したくなるほどです。

長く続いたこのシリーズを、たいへん面白く読みました。現在はハンネローレを主人公とした続編が刊行されているようですが、残念ながら若者向け恋愛小説的カラーが濃厚で、古希を過ぎた爺さんにはちょいと無理っぽいみたい。とりあえずここまでといたします(^o^)/

(*1): 香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XII」を読む〜「電網郊外散歩道」2023年12月

 

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ある日のランチ〜スルメイカとシイタケとカブの葉の炒飯

2024年12月20日 06時00分19秒 | 料理住居衣服

みぞれ混じりの雨が降る寒い日、妻のリクエストでお昼にチャーハンを作りました。残念ながらネギがない。裏の畑に行けば売るほどあるのですが、寒くて取りに行くのが億劫です。仕方がないのでカブの葉で代用しましょう。どうせなら徹底してありあわせの材料で作ってみようということで、シイタケとスルメイカを使いました。

作り方は、フライパンを充分に熱してから油を垂らしてなじませ、菜箸で白身を切った卵を落として軽くかき混ぜた上にご飯を広げてお玉で押し付け、ほぐしながら焼いていきます。充分に火が通ったら塩コショウで味を付け、細かく切った椎茸、スルメイカを加えてさらに焼きます。最後に細かく切ったカブの葉を加えて焼き、出来上がりです。

うん、これは代用品とは思えない味です。ネギとベーコンあるいは豚肉の組み合わせは定番の味ですが、シイタケとスルメイカとカブの葉というのもありでしょう。妻からは「今度、もう一度作って!」というリクエストもありましたので、「料理メモ」にレシピを書き留めておきましょう。

 

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「電網郊外散歩道」20周年、今日から21年目に突入

2024年12月19日 06時00分46秒 | ブログ運営

当ブログ「電網郊外散歩道」は、2004年の12月19日に最初の記事を投稿していますので、本日で20周年となり、21年目に突入しました。20年前と言えばふた昔、まだ私は50代の初めでした。思えば長く続いたものです。12月19日現在の投稿記事数は次のようになっています。

1年間で記事数が7,033件→7,400件に増加し、増加率は105%でした。このカテゴリー別の内訳を見ると、クラシック音楽関係はほぼまんべんなく増加していますが、読書関係は特定のジャンルに偏る傾向がありました。平均105%以上のものとしては、増加率の高い順に

  • 料理住居衣服 113%
  • 週末農業定年農業、健康 ともに 112%
  • 季節と行事 109%
  • コンピュータ 108%
  • 宮城谷昌光、アホ猫やんちゃ猫、ブログ運営 ともに 106%
  • 手帳文具書斎 105%

となりました。完全リタイアにより通勤がなくなりましたので、「通勤の音楽」と称して購入したCD等を繰り返して聴いていた時間がなくなりましたが、その反面、山形交響楽団や山形弦楽四重奏団等の定期演奏会などを通じて接した音楽を YouTube で聴いたりしていますので、音楽記事は着実に増えています。これに対して、読書はどちらかと言えばノンフィクションの本に関心が移ってきており、小説に手を出すことが減ってきていると感じます。

アレルギーによる鼻詰まりや化膿した「親知らず」の抜歯手術、マイコプラズマ肺炎の罹患など、健康面でも様々な出来事があり、関連した基礎知識などの記事も増えました。また、迷惑メール対策や新たなテキストエディタ、ブラウザの使用や OS の入れ替えなどコンピュータ関連の記事が多くなり、これは今年の特徴の一つかもしれません。

もう一つ、アクセス解析で最近よく読まれている過去記事がわかります。記事タイトルと投稿年/月を示すと、次のようになります。昔の古い記事が、かなり長く読まれているということがわかり、筆者としては喜ばしくありがたい限りです。あらためまして、読者の皆様に御礼を申し上げます。

 

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最近のヘンな社会現象の背後にあるもの

2024年12月18日 06時00分44秒 | Weblog

最近、世界各地でヘンな社会現象が発生しているようです。コロナ禍の際には米国等の反ワクチンの動きが無視できないほど高まりましたし、トランプ現象も似たような背景を持っているようです。某国の大統領は何をトチ狂ったのか唐突に戒厳令を出してしまいましたし、日本でもパワハラ等の告発者が亡くなったと報道されていた某県の出直し知事選挙では大方の予想を覆す結果となりました。

こうした社会現象に、どこかへんだなと違和感を感じる人も少なくないものと思います。その背景に、おそらくは YouTube 等が採用しているアルゴリズムが影響しているのではと感じます。例えば Google の場合、検索したキーワードに関連した広告が表示される仕組みが同社の最も重要な収益源となっているのは有名です。Amazon の場合、検索表示された商品に関連性の高いアイテムが優先的に表示され、過去に検索し購入した商品も含まれてきます。YouTube の場合も、ユーザーがある動画を最後まで視聴するとその動画と関連性の高い動画が優先的に表示されるようになります。また、逆に途中でスキップした場合はその動画や関連する動画の優先順位は低くなってしまいます。さらに検索履歴に関連する動画が優先的に表示されますので、ある動画を視聴すると「どんどん深みにハマる」仕組みになっているわけです。

たぶん、最初は漠然とした不安感からワクチンの安全性について調べた人が今まで見聞きしたことのない反ワクチンの動画にじっと見入ってしまい、提示される関連動画を見続けていくうちに反ワクチンの考えに変わってしまうということなのでしょう。ワクチンをトランプ、◯◯知事、北朝鮮あるいは◯夫人などという語と取り替えてみると、なんとなく腑に落ちる感じがあります。

これは、勉強熱心な人ほどハマるアルゴリズムです。言葉は悪いですが、強く思い込む確信犯製造プロセスと言っても良いかもしれません。ケネディ家の御曹司でも反ワクチン論者になり得るというのは理解できます。こういう仕組みを利用して YouTube 等で注目されて知名度を上げ、がっぽり稼いでいる人もいることでしょうから、ある日、YouTube で動画をよく見ていた家族の誰かが何かヘンなことを主張し始める、そういった現実がもうあるのかもしれない。一方的で強固な確信的思い込みに、なんだかカルト集団に近い怖さを感じます。

画像は記事内容とは全く関係がありません。コーヒーで一休み、ほっとするひとときです。

 

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グラズノフ「ヴァイオリン協奏曲」を聴く

2024年12月17日 06時00分27秒 | -協奏曲

クラシック音楽の定番というと、ある程度は決まっているものでした。LPレコードやCDで言えば、要するに「名盤100選」みたいなくくりに入る曲目です。若い頃は、懐具合の関係でそうした有名演奏家によるスタンダードな名盤を主体にコレクションするみたいなことはできず、コロムビアやエラート、デンオンなどの廉価盤中心に集める習慣になっていました。そのため、有名曲なのに聴いたことがないものがあったり、逆に知名度は高くないけれどステキな演奏録音に接することとなったりしたものです。

にもかかわらず、そうしたマニアックな曲リストからももれていた演奏、録音というのはあるものです。パブリックドメインの恩恵で、かつてのLPレコードやCDで私の視界に入らなかった演奏・録音があったりすると、驚き嬉しくなります。例えば「クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜」で紹介されていた(*1)グラズノフのヴァイオリン協奏曲、ナタン・ミルシテインのヴァイオリン、ウィリアム・スタインバーグ指揮ピッツバーグ交響楽団による1957年の録音(*2)です。同サイトからダウンロードさせてもらい、自室の簡易な PC-audio で繰り返し聴いておりました。

全体は切れ目なく続けて演奏され、古典的なかっちりした楽章構成というよりは、このあたりは緩徐楽章ですごいカデンツァがあるなあ、フィナーレは軽快なロンドといったところか、というふうな漠然とした理解になってしまいます。でもミルシテインの演奏はきらきらと輝くようで、スタインバーグ指揮ピッツバーグ響の演奏も見事で、私にとっては初めて聴くこの曲の魅力をどーんと示してくれます。

同じ演奏・録音がYouTube にもありました。

Glazunov: Violin Concerto, Milstein & Steinberg (1957) グラズノフ ヴァイオリン協奏曲 ミルシテイン&スタインバーグ

せっかくですので、現代の若い人の演奏もピックアップしておきましょう。ヒラリー・ハーンのヴァイオリン、セミョーン・ビシュコフ指揮ケルンWDR交響楽団による、2013年の演奏です。つい、昔の習慣で「ケルン放送交響楽団」と書きそうになります(^o^;)>

Hilary Hahn - Glazunov - Violin Concerto in A minor, Op 82

これもいい演奏だなあ。まだまだ私の知らない音楽はたくさんある。こういう出会いがあるから、素人音楽愛好家のクラシック音楽趣味はやめられません。キミもそう思うだろ?李白クン(^o^)/

(*1): グラズノフ:ヴァイオリン協奏曲イ短調、作品82〜クラシック音楽へのおさそい」より
(*2): 実際は、東芝のセラフィム1000シリーズでドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲とのカプリングで発売されていた。

 

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このごろ、ボクの出番が少ないんだけど

2024年12月16日 06時01分44秒 | アホ猫やんちゃ猫

冬場はお天気の関係でどうしても室内に閉じこもりがちになります。健康のためには散歩や運動をするのが良いとわかってはいるものの、雪混じりの雨降りの日にわざわざ濡れに出かけるのも億劫です。では、どうすればよいのか。そこで考えました。無駄に広い田舎家だもの、屋内でウォーキングをすれば、野外で散歩をするのと変わりないんじゃなかろうか。

例えばこの廊下。ちょうどよい具合に三段ほどの段差もあり、奥のリビングまで使えば往復で50歩以上になりそうです。2往復でおよそ100歩、方向転換時にその分だけ時間がかかりますが、ここを10分も歩けば1,000歩ほどにはなりそう。というわけで、せっせと歩いてみました。20分も歩くと2,000歩を越え、体はあたたまるやら歩数計のカウンターは数値が増えるやらで、けっこう良い運動になります。どうせなら3,000歩といきたいところですが、景色に変化のない30分は飽きます(^o^)/

飼い主(私)がウォーキングを始めるのを見ていたわが家のやんちゃ猫・李白クン、競争するかのようにドドドドドッと走り始めました。すごいスピードで私を追い抜いていくのに、リビングの引き戸の狭い隙間をすり抜けていく芸当は曲芸のようです。それだけでなく、隠れていて階段のところからひょこっと出てきたりすることもあり、歩行の邪魔をしているというよりは飼い主とじゃれて遊んでいるつもりのようです。

ご主人だけ面白そうな遊びを始めたんだもの、ボクも一緒に走らなきゃ!それーっ!

なんだか、1日に2回、朝食後の運動と夕方のハンティング本能に基づく「はっちゃけタイム」が習慣となって固定しそうな勢いです(^o^)/

 

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