最近、ほんとにバロック音楽びたりです。NHKブックスの中の1冊、『バロック音楽~豊かなる生のドラマ』(磯山雅著)を読みました。モンテヴェルディあたりからバッハに至る流れを通観し、あわせて現代におけるバロック音楽の演奏と受容史を平明に記述した本書は、あまりに専門的すぎない、一般向けの音楽史書としてふさわしい内容と感じます。
特に新鮮に感じたのは、
(1) ドイツ三十年戦争の悲惨さを描く第IV章「廃墟に流れる歌」における、ハインリッヒ・シュッツの評価です。服部幸三・皆川達夫両氏も力説していたシュッツの偉大さは承知しながら、これまであまり聴いておりませんでした。あらためて再確認。
(2) イタリアにおける器楽の発展を描く第V章「歌うヴァイオリン」。ガブリエーリ、フレスコヴァルディ、コレルリ、ヴィヴァルディという流れがたいへん興味深いです。
(3) 太陽王ルイ14世が統治した時代のフランス音楽を描く第VI章「大御代を輝かす楽の音」。王の一挙手一投足に音楽を付けるなんて、王を演じることに夢中だったのですね、この王様は。で、王が認める美しさしか認められない、一元的な世界。フランス音楽の独自性は育ったがイタリア音楽の価値を評価する作曲家は不遇な時代です。リュリ、シャルパンティエ、クープランなどのフランス・バロックの世界。
(4) 第VII章「趣味さまざま」では、イタリア音楽とフランス音楽の対立とラモー、ドイツにおけるバッハの登場。著明な対立が辺境で統合解決されるという例は、ドルトンの原子説とゲイ=リュサックの気体反応の法則との矛盾がアボガドロの分子説によって解決されるように、科学史上にもよくある話です。
(5) 第VIII章「音楽を消費する先進国」では、市民革命を早く成し遂げたイギリスで、その経済力を背景に市民階級が台頭してきます。ヘンデルが、王様をたたえるオペラから市民の感情に即したオラトリオに転進したことを、この文脈に位置づけられると、「なるほど~」と目から鱗です。
(6) 第IX章「神と人間に注ぐ愛」では、バッハに見るバロック音楽の深まりが描かれ、第X章は「数を数える魂」として音楽を数学と結びつけた合理主義が語られ、ちょっと脇道の散歩の風情。そして第XI章では「コーヒーを飲みながら音楽を」で、テレマンやオペラ・ブッファの台頭、そして大バッハの人間くさい「コーヒー・カンタータ」と大バッハの息子達の時代が描かれます。
(7)最後の第XII章は「現代に息づくバロック」で、いわばバロック音楽の受容小史。このへんは、NHK-FM「バロック音楽の楽しみ」の記憶が強い中年世代にはなつかしい記述が多いところです。
とにかく、面白かった。講談社現代新書の『バロック音楽』も読みましたが、あちらは著者の好き嫌いがはっきり出ていて、その点では面白かったけれど、普遍性の点では?でした。こちらの本は、より普遍性があるように感じました。
特に新鮮に感じたのは、
(1) ドイツ三十年戦争の悲惨さを描く第IV章「廃墟に流れる歌」における、ハインリッヒ・シュッツの評価です。服部幸三・皆川達夫両氏も力説していたシュッツの偉大さは承知しながら、これまであまり聴いておりませんでした。あらためて再確認。
(2) イタリアにおける器楽の発展を描く第V章「歌うヴァイオリン」。ガブリエーリ、フレスコヴァルディ、コレルリ、ヴィヴァルディという流れがたいへん興味深いです。
(3) 太陽王ルイ14世が統治した時代のフランス音楽を描く第VI章「大御代を輝かす楽の音」。王の一挙手一投足に音楽を付けるなんて、王を演じることに夢中だったのですね、この王様は。で、王が認める美しさしか認められない、一元的な世界。フランス音楽の独自性は育ったがイタリア音楽の価値を評価する作曲家は不遇な時代です。リュリ、シャルパンティエ、クープランなどのフランス・バロックの世界。
(4) 第VII章「趣味さまざま」では、イタリア音楽とフランス音楽の対立とラモー、ドイツにおけるバッハの登場。著明な対立が辺境で統合解決されるという例は、ドルトンの原子説とゲイ=リュサックの気体反応の法則との矛盾がアボガドロの分子説によって解決されるように、科学史上にもよくある話です。
(5) 第VIII章「音楽を消費する先進国」では、市民革命を早く成し遂げたイギリスで、その経済力を背景に市民階級が台頭してきます。ヘンデルが、王様をたたえるオペラから市民の感情に即したオラトリオに転進したことを、この文脈に位置づけられると、「なるほど~」と目から鱗です。
(6) 第IX章「神と人間に注ぐ愛」では、バッハに見るバロック音楽の深まりが描かれ、第X章は「数を数える魂」として音楽を数学と結びつけた合理主義が語られ、ちょっと脇道の散歩の風情。そして第XI章では「コーヒーを飲みながら音楽を」で、テレマンやオペラ・ブッファの台頭、そして大バッハの人間くさい「コーヒー・カンタータ」と大バッハの息子達の時代が描かれます。
(7)最後の第XII章は「現代に息づくバロック」で、いわばバロック音楽の受容小史。このへんは、NHK-FM「バロック音楽の楽しみ」の記憶が強い中年世代にはなつかしい記述が多いところです。
とにかく、面白かった。講談社現代新書の『バロック音楽』も読みましたが、あちらは著者の好き嫌いがはっきり出ていて、その点では面白かったけれど、普遍性の点では?でした。こちらの本は、より普遍性があるように感じました。