電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第190回定期演奏会を聴く

2008年07月14日 21時18分17秒 | -オーケストラ
昨日は、早朝から庄内へ。午前中は庄内で役割を果たし、昼食も抜きで、すぐに高速を飛ばして山形へ向かいます。会場の山形テルサへすべり込んだのは、開演時刻を過ぎた14時05分頃でした。飯森範親さんのプレトークも、最初の曲目、レズニチェクの歌劇「ドンナディアナ」序曲も聴くことができず、わずかに最後の部分を会場内のモニターで眺めました。ようやく入場した座席は、後列左端と条件は良くありませんが、独奏者の表情などはよく見えます。

さて、ソリストの川久保賜紀さん、少しくすんだ黄緑色というのか、若竹色のロングドレス。パンフレットに曲目変更のお知らせと、ご本人のお詫びの文章が掲載されておりました。先日の飯森さんのブログでも触れておられましたが、川久保さんは、体調不良のため、来日直前の8日までドイツで入院静養されておられたとのこと、ヨーロッパから日本へは、飛行機でもかなりこたえる旅のはずです。山形入りしたのが一昨日とのことですので、本当にオーケストラと練習できたのは昨日だけ、という状況だったようです。であれば、難曲のバルトークというのはいささか無理というものでしょう。得意の演目であるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が選ばれたのは、結果的にたいへん良かったのかも。

さて、チャイコフスキー。始まりの音が、なんとも緊張感があり、かつ美しい。伸びやかな高音、力のある低音です。第1楽章、ソリストが休んでいる場面では、ちらちらとコンサート・ミストレスの犬伏亜里さんのボウイングに目をやりながら、全身でリズムを取り、音楽を感じている様子です。カデンツァは、思わず息をのむ気迫で、第1楽章の終わりに思わず会場から拍手が出てしまっていたのは、理解できる状況でした。第2楽章、かなりゆったりとしたテンポで。フルートのソロもぴたりと決り、かっこいいです。第3楽章、クラリネットとオーボエのかけあいが、とても素敵な音色で、いい感じです。動きの速い弦のピツィカートのあと、オーケストラのトゥッティに対抗するようにヴァイオリン・ソロが速く技巧的なパッセージを披露し、フィナーレへ。いやぁ、ソリストの気迫、気力というのは、たいへんなものですね。
まずはほっと一安心して大満足。

さて、オーケストラの楽器配置は、ステージに向かって、指揮者の左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後方にコントラバス、という配置です。中央後方にフルート、オーボエ、そしてクラリネット、ファゴットの木管群、さらにその後方に、ホルンとトランペット、さらにその後方にはトロンボーン、テューバが並び、管楽器の左にパーカッション、その後方にティンパニ、という具合です。

休憩の後は、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」です。冒頭の低弦に乗って、あの有名なファゴットのソロ。高橋あけみさんのファゴットが、ひそやかに響きます。いいですね~。もうほれぼれと聴き入りました。その後、弦の優美な旋律とともに、フルートとオーボエ、クラリネットとファゴットが素晴らしい音色を聴かせると、金管群も加わり、オーケストラが懐かしむような旋律を奏でます。そして一転して激しくめまぐるしい迫力の音楽へ。ここは、金管群の出番です。
ところで、3本のトロンボーンのうち、テューバの隣の1本はやけにでかいし、音も別のように思いましたが、違ったかな?奏者の方も、すごい気迫で睨んでいましたし(^_^)/
第2楽章、とても優美な舞曲風の音楽が、ティンパニのきざむリズムにのって、次第に不安な雰囲気が高まって来ます。第3楽章、軽やかな行進曲風のスケルツォ。もしこの楽章がフィナーレだったら、同じくらい人気を博したのでしょうか。シンバル奏者が立ち、バスドラムの連打のあとに、ジャーン!これ、やっぱりかっこいいですよ。思わず客席で拍手したくなる気持ちがよくわかります。これは、聴衆よりも、そういうふうに作った作曲家のほうが悪いです(^o^)/
第4楽章、ああ、この旋律。最後の別れを告げるような、映画の一場面のような。またしてもファゴットのお二人に陶然となりました。最後、低弦が静かに奏される中、コントラバスのピツィカートが消え入るように終わり、静寂が……聴衆も、飯森さんの棒が下りるのをじっと待ちます。その緊張感、静寂感、そして拍手!

理系の観察眼というのは困ったもので(?!)、ファゴットの高橋さんとオーボエの斎藤さんが、思わず顔をおおって涙を拭いたのを、しっかり見てしまいました。演奏する側も感動したのでしょう。ほんとに素晴らしい「悲愴」交響曲でした。



写真は、秋に放送予定の、山響と飯森さんの番組のために、交流会を取材するカメラマンと外部マイクさんです。どんな番組になるのか、今から放送が楽しみです。しかし、昔のベータカムを知る者にとっては、たぶん業務用のハイビジョン・カメラであろう、この放送用機器の小型化が進んでいることに驚きです。
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