電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読む

2013年07月03日 06時03分16秒 | 読書
中公文庫で、吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』を読みました。巻末のあとがきによれば、もともとは『暮しの手帖』に連載されていた小説とのことで、独特の浮遊感のある雰囲気も、そういう背景かと納得しました。

主人公のオーリィ君は、お気に入りのサンドイッチを見つけ、売っているパン屋さんと親しくなります。働いていないことは好ましくないといわれ、勤め始めます。映画館でよく会う老婦人は、かつて映画に脇役で出ていた女性ですし、スープの味はしだいに洗練されたものになっていきます。

ほんとに不思議なフワフワした浮遊感のある物語です。雰囲気で繋いでいるストーリーという感じ。ふだん読んでいる藤沢周平や吉村昭などの時代小説と比べれば、新感覚派とでも言いましょうか。音楽で言えば、J.S.バッハやベートーヴェン、ブラームスの系統ではなくて、フォーレやドビュッシーなどの系統でしょう。好きな人は好きそうですが、落ち着かないと感じる人もいそうです。

で、私は?
たぶん、ずっと若い頃ならば、好んで読んだでしょうが、今ならば、たまに一味違ったタイプの本を読んでみたい、という時に手にする本、という位置づけでしょうか。

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