電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

坂木司『和菓子のアン』を読む

2013年07月18日 06時02分08秒 | 読書
高田郁『みをつくし料理帖』シリーズをきっかけに、吉田篤弘『それからはスープのことばかり考えて暮らした』や有川浩『植物図鑑』など、料理や食べ物に関する小説を続けて読んでいますが、こんどは和菓子です。光文社文庫の坂木司著『和菓子のアン』を読みました。

主人公の梅本杏子は、身長は150cmと小柄ですが、本書中のデータを用いて計算するとBMI=25.3 と、「コロちゃん」の愛称のとおりのようです。でも、高校を卒業して働き口を探すあたりの経緯には、記憶を取り出す速さから見た頭の良さというよりも、むしろ「聡明さ」を感じます。働き始めたデパートの地下食品売り場にある「和菓子舗・みつ屋」は、切れ者の椿はるか店長に職人希望の店員・立花早太郎、アルバイト仲間の大学生・桜井さん、そして杏子の四人が働く小さなお店です。でも、飛び込んでくるお客さんの様子や注文の内容から企業の政変を予測したり(第1話:「和菓子のアン」)、七夕の日の遠距離恋愛をひそかに応援したり(第2話:「一年に一度のデート」)するなど、内容は多彩です。

せっかくの推理ものの要素を持つお話ですので、あらすじは省略いたしますが、ちょうどホテルにいろいろなお客が入れ替わり立ち替わり出入りして様々な事件が起こるグランドホテル型の小説手法と、カウチポテト・スタイルで寝そべりながら事件の謎解きをするミステリーの手法とを混ぜ合わせたようなものになっています。これが、案外おもしろい。とくに、人畜無害中高年には、殺人事件の起こらないミステリー風仕立てという点が、けっこうポイント高いです(^o^)/

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