電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第1部「兵士の娘III」を読む

2017年12月06日 06時04分36秒 | -香月美夜
植物紙の製法を確立し、髪をツルツルにする「リンシャン」を発明し、まだ貴重な砂糖を使ったお菓子「カトルカール」の作り方を知っている幼女マインは、とうとう「身食い」という病気の宿命で、突然に体内の熱が暴れだし、意識を失って倒れます。後援者のベンノは、商業ギルドのギルド長の屋敷へマインを運びますが、ギルド長が同じ病気を持つ孫娘フリーダのために集めた魔術具でマインの命を助けたのは、マインの持つ知識を自分たちのために利用するべく取り込もうという下心があってのことでした。意識が戻ったマインは、魔術具のお金をなんとか支払うことができましたが、大事な知識をポロポロとこぼしてしまう状態です。ギルド長の家の女料理人イルゼは、カトルカールの改良法を知って喜ぶとともに、マインの知識を欲しがります。

「身食い」という病気は、体内にある魔力が原因で、成長とともに魔力があふれ、やがて死に至るのだそうです。それを回避するには、魔力を吸収する魔術具を持っている貴族に一生飼い殺しにされるしかないとのことで、家族は悲しみますが、マインは最後まで家族とともに暮らすことを選択します。
で、途中には進路選択とかいろいろありますが、晴れ着を着たマインとルッツは洗礼式のために神殿に向かいます。その神殿での祈りのスタイルというのが、両手をバンザイして片足を上げるという某グ○コのあれでした。式の最中に思わず笑いだしそうになるのをこらえていると、具合が悪くて倒れたと思われて神殿内の休憩室で休むことになります。そこでみかけたのが神殿の図書室! もうマインは暴走が止まりません。神殿長に直談判して巫女見習いになりたいと申し出ます。

でも、家族は猛反対。平民は灰色巫女にしかなれないし、神殿は孤児が入るもので、家族がいるマインが目指すものではないからです。巫女志願を取り消すためにもう一度神殿に行ったら、マインが「身食い」であることを知った神殿長はマインの家族を召喚し、マインを神殿に入れようと図ります。ところが、神殿長の優しげな顔は表向きで、平民の姿の両親を見たとたんに傲岸不遜な態度に豹変。娘を神殿に入れよという命令を断った両親を極刑に処すとの対応に、ついにマインがキレます。

事態の決着に貢献した神官長は生粋の貴族ですが、いかにもワケアリ風。マインが勝ち取った自宅通勤の青色巫女見習いという立場は、平民でありながら貴族に準じるというものです。ベンノの助言は実に Good Job ! でした。

これで、下町の家族との生活から神殿での生活の比重が大きくなっていきます。契約魔術という形でちらりとしか登場しなかった魔術が、こんどは次第に大きな意味を持ってきます。

コメント