スッキリ晴れた日曜日、午前中に桃の収穫と選果、出荷を済ませ、昼食後ひと休みして出かけました。山響こと山形交響楽団の第279回定期演奏会です。午後3時開演なのですが、新県民会館の新築工事で山形駅西口周辺の駐車場事情は厳しいことになっていますので、早めに出かけて正解でした。
なんとかロビー・コンサートにも間に合い、P.M.デュボワの「オーボエ、クラリネット、ファゴットのための三重奏曲」より、I:ユーモレスク、III:オーバードの二曲を、Ob:柴田祐太、Cl:本田有里恵、Fg:上野健の演奏で聴きました。最近、こういう、なかなか耳にする機会の少ない珍しい曲目を紹介する傾向があるみたい。素人音楽愛好家といたしましては、山響団員の皆様のとっておきを聴く機会でもあり、耳馴染みのある曲目と珍しい曲とを交互に聴けるのはありがたいところです。
さて、今回の定期の曲目は:
というものです。ホールに入ると恒例のプレ・コンサート・トークがありました。ゲストの須川展也さんと西濱事務局長とのトークで、今回の曲目、長生淳(ながお・あつし)さんの曲について、西濱事務局長が関西フィルで働いていた頃に、二人で大阪の居酒屋でサクソフォン四重奏団とオーケストラの協奏曲みたいなのをやりたいんだと話をしていて、ではやってみましょうということで長生さんに委嘱してできた曲なのだそうです。どんな音楽か、楽しみです。もう一つは、今回の指揮者ヌーノ・コエーリョさんの招聘の経緯です。実は、山響が「カダケス国際指揮コンクール」に協賛していて、優勝者は山響を指揮する機会を提供する(*1)ことになっているのだそうです。ヌーノ・コレーリョさんは2017年12月のコンクールで優勝したポルトガルの新進気鋭の指揮者で、もちろん山形は初めて。どんな演奏会になるか、こちらも期待が持てます。
第1曲、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲の楽器編成は、弦楽が左から第1ヴァイオリン(8)、ヴィオラ(5)、チェロ(3)、第2ヴァイオリン(6)、その右にコントラバス(2)という対向配置になります。正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にホルン(2)、トランペット(2)、その右にバロック・ティンパニという配置です。例によってホルン、トランペットがナチュラルタイプでの演奏。座席の位置も関係したのでしょうか、中低音よりも高音域がやや勝ったようなバランスですが、オープニングに相応しい、モーツァルトらしい軽やかな音楽でした。
二曲目は、長生淳「サクソフォン・クヮルテットとオーケストラのための協奏曲《Prime-Climb-Drive》」です。楽器編成と配置は、指揮者を中央にして左から須川展也(Sp.Sax)、神保佳祐(Ten.Sax)、田中靖人(Bar.Sax)、彦坂眞一郎(Alt.Sax)のトルヴェール・クヮルテットが並び、その周りにオーケストラが、弦楽セクションは 10-8-6-6-4 と編成を強化しての対向配置、正面奥にFl(2)-Ob(2)、その奥にHrn(4)-Cl(2)-Fg(2)、最奥部にTp(2)-Tb(3)、その左にTimp.、今回の席からは見えませんでしたが、弦楽の左に各種パーカッションが並ぶというものです。第1楽章:Prime、第2楽章:Climb、第3楽章:Driveと題された三楽章形式の協奏曲となっていますが、要するにサクソフォン四重奏とオーケストラの競演・協演です。弦楽四重奏をモデルに成立したというサクソフォン四重奏は、非常に等質なまろやかさを持つ響きが特徴で、ダイナミックな表現もできればしみじみとした叙情的な表現もできるというもの。音量的にも、オーケストラに埋没するどころか管弦楽に負けないパワフルさです。とりわけ第2楽章、VlaとVcとCbの低弦が静かに奏でられる中、Alto Saxのソロがしみじみといい音で響く中でBar.Saxに代わり、続いてTen.Saxへ、Vn等も加わって弦楽合奏の中にSop.Saxが柔らかく響くあたりが、実に良かった〜! 今回の定期演奏会が東北初演だというこの曲、たいへん気に入りました。
トルヴェール・クヮルテットのアンコールは「バークレー・スクエアのナイチンゲール」で、ここでもサクソフォン四重奏の魅力を堪能しました。
15分の休憩時にロビーでコーヒーを飲んでいるとき、久々に某ドクターにお会いしました。お医者さんの知識と技術と経験が地域医療の要ですが、それもご自身の健康あってのものでしょう。ますますお元気で活躍中の様子、何よりのことです。
さて、最後の曲目はチャイコフスキーの「悲愴」。10-8-6-6-4 と強化された弦楽部に加えて、Picc.-Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(4)-Tp(2)-Tb(3)-Tubaの管楽器とTimp.、パーカッション群は見えませんでしたがバスドラム、シンバル、タムタムという編成らしい。第1楽章冒頭の序奏、あのファゴットの背景に響くのはヴィオラとコントラバスだったのですね! 何度も聴いている曲ではありますが、とくに楽譜を見るわけでもありませんので、妙なところで感心しながら夢中で聴きました。クラリネットの川上さんの、弱く小さな音でもしっかりホールに届く緊張感が素晴らしかったし、直後の爆発はいつ聴いても興奮します。次の第2楽章、弦のpizz.の中に奏でられるチェロの優しい旋律がいいですね〜。第3楽章のイケイケドンドンふうな終わり方でも拍手は誘発されず、ホール全体の緊張感が保たれたままに終楽章。弦の流れるような音の中にFgの崩れ落ちるように降下する音が印象的です。うめき声のような、うなり声のようなperc効果。音楽が最弱音で終わっても、最後の響きが消えるまでヌーノ・コエーリョさんの指揮棒は下りず、聴衆もじっと静寂を味わいます。そしてその後にどっと拍手。良かった〜!
終演後の交流会では、トルヴェール・クヮルテットの名前の由来を知りました。結成直後は街頭で演奏することもあったそうで、吟遊詩人のことだそうです。街から街へ、吟遊詩人のようにサクソフォン四重奏を広げていく詩人たちの活躍と、当地山形での再演を希望しましょう。指揮者のヌーノ・コレーリョさん、ヴァイオリンでオーケストラや室内楽をやっていたそうですが、ヴァイオリンを始めたのが7歳位と意外に遅いスタートで、指揮を始めたのも7年前? まだ若い方ですが、これからどんどん活躍の場が広がるのではないでしょうか。楽しみに期待したいと思います。今回も、良い演奏会でした。
(*1):カダケス国際指揮コンクール公式ページ、及び協賛オーケストラ一覧
なんとかロビー・コンサートにも間に合い、P.M.デュボワの「オーボエ、クラリネット、ファゴットのための三重奏曲」より、I:ユーモレスク、III:オーバードの二曲を、Ob:柴田祐太、Cl:本田有里恵、Fg:上野健の演奏で聴きました。最近、こういう、なかなか耳にする機会の少ない珍しい曲目を紹介する傾向があるみたい。素人音楽愛好家といたしましては、山響団員の皆様のとっておきを聴く機会でもあり、耳馴染みのある曲目と珍しい曲とを交互に聴けるのはありがたいところです。
さて、今回の定期の曲目は:
- モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」K.492 序曲
- 長生 淳/サクソフォン・クヮルテットとオーケストラのための協奏曲 《Prime-Climb-Drive(プライム・クライム・ドライブ)》
- チャイコフスキー/交響曲 第6番 ロ短調「悲愴」作品74
指揮:ヌーノ・コエーリョ、演奏:山形交響楽団、サクソフォン四重奏:トルヴェール・クヮルテット
というものです。ホールに入ると恒例のプレ・コンサート・トークがありました。ゲストの須川展也さんと西濱事務局長とのトークで、今回の曲目、長生淳(ながお・あつし)さんの曲について、西濱事務局長が関西フィルで働いていた頃に、二人で大阪の居酒屋でサクソフォン四重奏団とオーケストラの協奏曲みたいなのをやりたいんだと話をしていて、ではやってみましょうということで長生さんに委嘱してできた曲なのだそうです。どんな音楽か、楽しみです。もう一つは、今回の指揮者ヌーノ・コエーリョさんの招聘の経緯です。実は、山響が「カダケス国際指揮コンクール」に協賛していて、優勝者は山響を指揮する機会を提供する(*1)ことになっているのだそうです。ヌーノ・コレーリョさんは2017年12月のコンクールで優勝したポルトガルの新進気鋭の指揮者で、もちろん山形は初めて。どんな演奏会になるか、こちらも期待が持てます。
第1曲、モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」序曲の楽器編成は、弦楽が左から第1ヴァイオリン(8)、ヴィオラ(5)、チェロ(3)、第2ヴァイオリン(6)、その右にコントラバス(2)という対向配置になります。正面奥にフルート(2)、オーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)、ファゴット(2)、最奥部にホルン(2)、トランペット(2)、その右にバロック・ティンパニという配置です。例によってホルン、トランペットがナチュラルタイプでの演奏。座席の位置も関係したのでしょうか、中低音よりも高音域がやや勝ったようなバランスですが、オープニングに相応しい、モーツァルトらしい軽やかな音楽でした。
二曲目は、長生淳「サクソフォン・クヮルテットとオーケストラのための協奏曲《Prime-Climb-Drive》」です。楽器編成と配置は、指揮者を中央にして左から須川展也(Sp.Sax)、神保佳祐(Ten.Sax)、田中靖人(Bar.Sax)、彦坂眞一郎(Alt.Sax)のトルヴェール・クヮルテットが並び、その周りにオーケストラが、弦楽セクションは 10-8-6-6-4 と編成を強化しての対向配置、正面奥にFl(2)-Ob(2)、その奥にHrn(4)-Cl(2)-Fg(2)、最奥部にTp(2)-Tb(3)、その左にTimp.、今回の席からは見えませんでしたが、弦楽の左に各種パーカッションが並ぶというものです。第1楽章:Prime、第2楽章:Climb、第3楽章:Driveと題された三楽章形式の協奏曲となっていますが、要するにサクソフォン四重奏とオーケストラの競演・協演です。弦楽四重奏をモデルに成立したというサクソフォン四重奏は、非常に等質なまろやかさを持つ響きが特徴で、ダイナミックな表現もできればしみじみとした叙情的な表現もできるというもの。音量的にも、オーケストラに埋没するどころか管弦楽に負けないパワフルさです。とりわけ第2楽章、VlaとVcとCbの低弦が静かに奏でられる中、Alto Saxのソロがしみじみといい音で響く中でBar.Saxに代わり、続いてTen.Saxへ、Vn等も加わって弦楽合奏の中にSop.Saxが柔らかく響くあたりが、実に良かった〜! 今回の定期演奏会が東北初演だというこの曲、たいへん気に入りました。
トルヴェール・クヮルテットのアンコールは「バークレー・スクエアのナイチンゲール」で、ここでもサクソフォン四重奏の魅力を堪能しました。
15分の休憩時にロビーでコーヒーを飲んでいるとき、久々に某ドクターにお会いしました。お医者さんの知識と技術と経験が地域医療の要ですが、それもご自身の健康あってのものでしょう。ますますお元気で活躍中の様子、何よりのことです。
さて、最後の曲目はチャイコフスキーの「悲愴」。10-8-6-6-4 と強化された弦楽部に加えて、Picc.-Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(4)-Tp(2)-Tb(3)-Tubaの管楽器とTimp.、パーカッション群は見えませんでしたがバスドラム、シンバル、タムタムという編成らしい。第1楽章冒頭の序奏、あのファゴットの背景に響くのはヴィオラとコントラバスだったのですね! 何度も聴いている曲ではありますが、とくに楽譜を見るわけでもありませんので、妙なところで感心しながら夢中で聴きました。クラリネットの川上さんの、弱く小さな音でもしっかりホールに届く緊張感が素晴らしかったし、直後の爆発はいつ聴いても興奮します。次の第2楽章、弦のpizz.の中に奏でられるチェロの優しい旋律がいいですね〜。第3楽章のイケイケドンドンふうな終わり方でも拍手は誘発されず、ホール全体の緊張感が保たれたままに終楽章。弦の流れるような音の中にFgの崩れ落ちるように降下する音が印象的です。うめき声のような、うなり声のようなperc効果。音楽が最弱音で終わっても、最後の響きが消えるまでヌーノ・コエーリョさんの指揮棒は下りず、聴衆もじっと静寂を味わいます。そしてその後にどっと拍手。良かった〜!
終演後の交流会では、トルヴェール・クヮルテットの名前の由来を知りました。結成直後は街頭で演奏することもあったそうで、吟遊詩人のことだそうです。街から街へ、吟遊詩人のようにサクソフォン四重奏を広げていく詩人たちの活躍と、当地山形での再演を希望しましょう。指揮者のヌーノ・コレーリョさん、ヴァイオリンでオーケストラや室内楽をやっていたそうですが、ヴァイオリンを始めたのが7歳位と意外に遅いスタートで、指揮を始めたのも7年前? まだ若い方ですが、これからどんどん活躍の場が広がるのではないでしょうか。楽しみに期待したいと思います。今回も、良い演奏会でした。
(*1):カダケス国際指揮コンクール公式ページ、及び協賛オーケストラ一覧