電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第88回定期演奏会でモーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」等を聴く(1)

2023年07月09日 18時10分02秒 | -室内楽
あいにくの雨降りとなった土曜の夕方、山形市の県民ホール第一スタジオで、山形弦楽四重奏団第88回定期演奏会を聴きました。プログラムは、

  1. ボッケリーニ 6つの小弦楽三重奏曲より ニ長調 Op.47-5、G.111
  2. モーツァルト 歌劇「後宮からの誘拐」(J.ヴェント編曲によるフルート四重奏曲版)第1幕
    〜休憩〜
  3. モーツァルト 同 第2幕
  4. モーツァルト 同 第3幕
     小松崎恭子(Fl)、山形弦楽四重奏団:中島光之(Vn)、倉田譲(Vla)、茂木明人(Vc)

というものです。モーツァルトの歌劇をフルート四重奏で演奏するという、珍しくも貴重な体験。このような編曲が存在するというのは、どうやら録音というものが存在しなかったモーツァルトの時代が背景にあるようで、「後宮からの誘拐、良かったね〜! もう一度聴きたいんだけれどなあ」「あっ、フルート四重奏で演奏できるみたい」「おっ、それじゃあ家でやってみようか!」というような層がたしかにいたということでしょう。




会場となった県民ホール第1スタジオというのは、入り口を入って階段またはエスカレータで2階に上がり、大ホールの反対側に進むと、左側にありました。いわゆるホールの入り口というようなものはありませんので、ちょっと入り方にまごつきましたので、文翔館のときのようにチラシを案内板に掲示しておくと、私のように「日時を間違えたんじゃなかろうか」とか「本当にここで良かったんだろうか」などと不安になることもないのかなあと思います。

でも、会場に入ると、天井が高くよく響くモダンなスタジオで、大正ロマンの風情あふれる文翔館議場ホールとはまた違った雰囲気です。椅子もメッシュのパイプ椅子で、会場準備する人には優しいかもしれません(^o^)/ 開演前の中島さんのトークは相変わらず爽やかでよく聞こえます。また、さすがは元国語講師のキャリアも持つヴァイオリニストだけあって、歌劇「後宮からの誘拐」のストーリー解説もたいへんわかりやすいものでした。

第1曲め、ボッケリーニの弦楽三重奏曲です。中央ステージ左から、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの配置。第1楽章:アンダンティーノ・モデラート・アッサイ、第2楽章:テンポ・ディ・メヌエット〜トリオ。ヴァイオリンが歌いヴィオラが合いの手を入れながらハモり、チェロが低音で締める、というような形のチャーミングな音楽。昔の貴族たちは、食前の、あるいは食後のひとときをこういう音楽で楽しんでいたのかもしれません。ちょうど私たちが食後のひとときをCDやDVDで楽しむようなものでしょうか。

続いてモーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」第1幕、ステージ左から、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという配置です。快速テンポで序曲から始まりましたが、おお、「後宮」序曲だ! フルート四重奏でちゃんと序曲になっており、思わず感激です。チェロが通奏低音にとどまらない活躍をするのが印象的ですが、全体的にはフルートと弦楽三重奏とでオーケストラの主要な声部だけを演奏するわけですので、迫力や響きの多彩さという点では負けます。でも、曲の持つ軽やかさみたいなものが感じられて、「音符が多すぎる」と評した皇帝の感想もあながち大ハズレではなかったのかも(^o^)/ もちろん、モーツァルト自身は同意しないでしょうけれど(^o^)/
続いて「やっとここで会えるのか、コンスタンツェ!」という主人公ベルモンテのアリア。恋人コンスタンツェと従者とその恋人の三人が海賊に捕らえられ、トルコの太守セリムに売られたという情報を入手したベルモンテが、三人を救おうとセリムの屋敷に到着した場面です。そこで敵役が登場、オスミンというバスの大男という役柄ですが、「こんなどうしようもない奴らには」と歌います。低音域ですが意外に軽快なところがコミカルさを表します。愛する恋人に会える期待を歌う「何と不安に何と激しく脈打つんだ僕の心は」、そして映画「アマデウス」でも使われていた太守が船で登場する場面の合唱「偉大な太守を讃えて歌おう!」と続きます。最後は、太守セリムがコンスタンツェに愛を迫るが彼女は「私は(ベルモンテに)恋をして幸せでした、でもその喜びは儚く消えたのです」と拒絶します。うーむ、場面の選定もちゃんといいところを選んでいるし、CDで言えば立派なハイライト盤ではないですか。

ここで15分の休憩です。トイレも第1スタジオのすぐ近くに2箇所ありますし、なかなか便利です。
(続く)

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