最近、秋田県だけでなく県内でも市街地にも野生動物が出没しているようです。ニュースでは、スーパーにクマが居座ったり、小学校でクマがうろついていたり、「えっ、こんなところまで!」と思うような場所でも目撃されていますし、当地でも近隣の市町で野生のクマが目撃されており、少し前にはイノシシの目撃情報がありました。私の若い頃、今から50年ほど前には、山間部で野生のクマが目撃されることはありましたが、これほど頻繁に市街地に姿を現し居座ることは聞いたことがありません。明らかに個体数は増えており、必ずしもこれまでの経験則があてはまらない事態が生じているようです。
これまでの経験則というのは、クマは人間を恐れるので、熊よけの鈴など音の出るものを身につけていればクマのほうが逃げてくれるというものです。山菜採りやきのこ狩りなども、そうした安心感があって楽しめるものでした。またブナの実の豊凶でクマのエサが左右され、凶作の年にはエサを求めて里に降りてくるとも説明されていました。今年はブナの実が豊作だから本来ならばクマは里に降りてこないはずだったのです。ところが現実は、どうもそういうものではなさそうです。
クマだけでなく、野生のイノシシが山麓の田畑を荒らし、サルの群れが果樹園を襲うと、農家の自衛手段ではとても対抗できません。これまで山里を守ってきた農家が高齢を理由に離農する理由の一つに、こうした野生動物に適切に対処できない現実があるのだろうと思います。
昔は、里にクマが出て作物を荒らしたとなれば、人的な被害が出る前に対処するべく、大勢の村の人たちがほら貝や鍋、釜、太鼓等を鳴らし、大騒ぎをすることで一定の方向にクマを追い込んでいき、猟銃を持つ人たちが待ち構えてクマを退治するというやり方が取られていたようです。仮にクマを逃したとしても、大勢の人間の怖さをしったクマは里を荒らしにこなくなる、という学習効果がありました。
ところが、今はこうした方法は取れません。山里には若者や壮年の人がごく少なく高齢者が中心ですし、現在の法体系や判例は野生動物の保護の面が強調されすぎて、個体数が増えすぎて被害を生じていてもお役所は適切に対応できない。被害を受けた山麓の住民が泣き寝入りするしかない、というのが現実でしょう。少しずつ、少しずつ、野生動物に対する山里のバリアが弱体化していき、ついに市街地が野生動物の活動エリアに入ってきたということだと思います。大勢の人間の怖さを知らないので、一人や二人の人間なら怖くない、むしろ弱っちい格下の生き物だ、と認識しているのかもしれません。
都市部にも河川が流れ、河川敷の下を通れば鉄道や道路をやり過ごすことができ、ちょっとした耕作放棄地や荒れたヤブがあれば身を潜めることができます。市街地のかなり奥の方まで、野生動物は移動することができるのです。以前の勤務地の近くに現れたツキノワグマは、飲食店の残渣をあさりにきていたと聞きました。これからは、早朝、夕方など野生動物の活動時間帯には、痴漢や変質者の出没を警戒するのと同様にイノシシやクマなどと出くわすことを考えておく必要が出てきたのかもしれません。
秋田は一面の銀世界になりましたが、いまだにクマが出没しています。
クマは餌が有れば冬眠しなくなったようです。
今年二月、うちの近所の卸団地にクマが籠城した後は
同じく近所のイオン(かつて東北最大、現在秋田最大規模)の店内をクマ鈴を鳴らして歩く老人が居ましたが、
今時のクマには鈴は無効、逆に呼び寄せる可能性もあります。
私の場合は大音量のクマ笛、そして車の中に唐辛子スプレーを入れたポーチを置き、山を歩く時は常に身に着けております。
お気をつけて冬をお過ごしください。
>narkejp さんへ... への返信
コメントありがとうございます。山歩きを楽しんでいる最中に、イノシシやクマと出くわすのは御免こうむりたいですね。冬眠しなくなったクマが市街地に現れるのも、勘弁してほしい事態です。明治期に銃猟や罠猟が盛んに行われ、野生動物が激減したそうですが、それを防止する法体系と判例、及び施策が中心となっていて、個体数が増加し里山のバリアが弱体化した場合にどうするかという対応が乏しかったのが原因、背景にあるのでしょうか。今後、改善されていけばいのですが。