TOブックス刊の人気シリーズ、香月美夜著『本好きの下剋上』短編集IIIを読みました。実際は、書店に予約して連絡があり、入手したのが12月7日でしたので、発売予定日よりはかなり早く入手して読み終えていました。したがって、正確には再読したことになります。本編が第5部「女神の化身XII」として昨年12月に完結(*1)していますので、1年ぶりの刊行になります。これまでの短編集I、IIと同様に、主人公ローゼマイン以外の視点から見たサイドストーリー集です。したがって、本編を読んでいないと事情がわかりませんので、「はて?」と盛大に疑問符が並んでしまうことになります。逆に本編を読んだ人にとっては、物語の本筋の背後にはそんなことが起こっていたのか、周囲の人はそんなふうに受け止めていたのか、ということがわかる仕掛けになっています。
例えば王命でアーレンスバッハのディートリンデの婿に入ったフェルディナンドが供給の間で毒を受け、ローゼマインが救出に向かうまでの流れの中で、エーレンフェストの領主ジルベスター視点で見た「諦めない存在」やハイスヒッツェ視点での「ダンケルフェルがーの会議室」の2編を読むと、より多面的な緊迫感が感じられます。本編ではハンネローレが自主的に志願しハイスヒッツェが護衛役に付けられたような印象でしたが、ここではダンケルフェルガー内部の事情から指名された出陣であったことがわかる、という具合です。このあたりは、もう一度、本編に戻って読み返したくなるほどです。
長く続いたこのシリーズを、たいへん面白く読みました。現在はハンネローレを主人公とした続編が刊行されているようですが、残念ながら若者向け恋愛小説的カラーが濃厚で、古希を過ぎた爺さんにはちょいと無理っぽいみたい。とりあえずここまでといたします(^o^)/
(*1): 香月美夜『本好きの下剋上』第5部「女神の化身XII」を読む〜「電網郊外散歩道」2023年12月
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