電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響×仙台フィル合同演奏会でワーグナー、マーラーを聴く

2022年03月14日 06時01分18秒 | -オーケストラ
雨降りの日曜午後、サクランボ果樹園の剪定はお休みで、山響こと山形交響楽団と仙台フィルの合同演奏会のために山形市のやまぎん県民ホールに行ってきました。3.11 の後、「東北は音楽でつながっている」のキャッチフレーズのもと、山形交響楽団と仙台フィルが合同演奏会を開くこととなり、2012年のマーラー:交響曲第2番「復活」(*1)やレスピーギの「ローマ三部作」(*2)などを聴いていますが、今回のお目当ては何と言ってもマーラーの交響曲第5番です。



開演前のプレトークは、西濱秀樹事務局長とこの4月から桂冠指揮者となる飯森範親さんのお二人で、2004年に常任指揮者に就任して以来、これまで山響のレベルアップと活動の発展に取り組んできた飯森さんには一つの区切りとなるもの、とのこと。本日のプログラム、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」より、「前奏曲と愛の死」およびマーラーの交響曲第5番についての解説、それにこの3月で 2nd-Vn の菖蒲三恵子さんと大和ゆり子さんのお二人が定年退職となることなどを紹介しました。

ステージ上に両方のオーケストラの楽団員が登場しますが、いつもの様子とはまるで違い、文字通り「ぎっしり」感があります。ワーグナーの「前奏曲と愛の死」の方は、フルート(3 ピッコロ持ち替え)、オーボエ(3 イングリッシュホルン持ち替え)、クラリネット(3 バスクラリネット含む)、ファゴット(3)、ホルン(4)、トランペット(3)、トロンボーン(3)、テューバ、ティンパニ、ハープ、弦5部となっていますが、その弦がすごい。ステージ左から第1ヴァイオリン(14)、第2ヴァイオリン(12)、ヴィオラ(10)、チェロ(8)、コントラバス(6) という楽器編成です。
政治犯として逃亡中にかくまってくれた恩人の妻と不倫をはたらくワーグナーの悪漢ぶりは「愛の耽溺」を描くこの音楽でも明らかですが、その背景を離れて音楽を聴けば、きわめて集中力に富んだ感情表現に思わず引き込まれます。音楽を専門とする方々には、調性の崩壊まであと少しのところまで行った驚くべき曲とみなされるのかもしれませんが、ワタクシのような素人音楽愛好家には、音楽史上もっとも名高い悪漢ワーグナーの本領を発揮した耽溺の音楽、でも不思議な魅力を持った音楽と言えるのかもしれません(^o^)/

15分の休憩の後、マーラーの交響曲第5番です。楽器編成はさらに拡大され、フルート(4 ピッコロ持ち替え)、オーボエ(3 イングリッシュホルン持ち替え)、クラリネット(3 バスクラリネット持ち替え)、ファゴット(3 コントラファゴット持ち替え)、ホルン(7)、トランペット(4)、トロンボーン(3)、テューバ、ティンパニ、パーカッション(4 シンバル、バスドラム、スネアドラム、トライアングル、グロッケンシュピール、タムタム、むち)、ハープ、それに 14-12-10-8-6 の弦5部です。ふだんからLPやCD等でこの曲を聴いていますが、こんなに鳴り物が多いことにはじめて気づきました。
第1楽章:葬送行進曲。冒頭のトランペットが見事に決まり、オーケストラが動き出します。テンポはややゆっくりめで、威厳ある葬列の歩みのようです。ホール中に響く音楽は、全体として暗めの色調の中に明るい光が差し込むところもあり、単純ではありません。第2楽章:嵐のように激しく、猛烈に。落ち着きのない不安定な激しさがありますが、低音楽器が歌うように奏でられるところなど、実に魅力的です。第3楽章:スケルツォ。ホルン席から1人が立ち、ソロを受け持ちます。田舎風の楽しく美しい音楽ですが、一方でオーケストラが鳴り響くところでは、大編成のパワフルさを爽快に実感するところでもあります。第4楽章:あの有名なアダージェット。ハープと弦楽合奏による、これも一種の耽溺の音楽なのかも。第5楽章:フィナーレ、ロンド。こういう音楽は、やっぱりある程度大きな編成でないと難しいのかもしれません。前に進もうとする力が迫力をもって迫ります。いや〜、良かった〜!



仙台フィルとの合同演奏会なのに、山響の桂冠指揮者への就任や定年退職者の紹介、花束贈呈があったりしたのは、2月の山響第299回定期演奏会が新型コロナウィルス禍のために中止となってしまったためでしょう。菖蒲さんは39年、大和さんは43年の長きにわたり、山響をささえていただいたとのこと。この年月の重みは、しばらく前に定年退職を経験した立場からも痛切に感じられます。宮城県など遠方から来県された皆様には、事情ご賢察のほど、よろしくお願いしたいところです。

ところで、今回のプログラム中には、「山響×仙台フィル合同演奏会2022」として、7月23日(土)15時から、やまぎん県民ホールにて、同じく飯森範親さんの指揮でブルックナーの「交響曲第8番」が予定されているとありました。あの大きな伽藍を見上げるような音楽。これも楽しみ〜! 

(*1): 山響・仙台フィル合同による第222回定期演奏会でマーラーの交響曲第2番「復活」を聴く〜「電網郊外散歩道」2012年7月
(*2): 山響・仙台フィル合同演奏会2014でレスピーギの「ローマ三部作」を聴く〜「電網郊外散歩道」2014年7月


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8 コメント

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安倍禮爾 さん、 (narkejp)
2022-04-06 19:12:12
コメントありがとうございます。ずいぶんしばらくぶりの山形、市内の姿はずいぶん変わったところもあるかもしれませんが、あまり変わらないところもありますので、演奏会とともに市内散策を楽しまれてはいかがでしょうか。
合同演奏会でのブルックナー8番、ホールも良い響きですので、期待できると思います。楽しみですね(^o^)/
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ブルックナー第8ハース版 (安倍禮爾)
2022-04-06 12:25:07
narkejpさん
 おかげさまで無事に7月23日のチケットをとりました。昭和36年2月まで住んでいた山形に行きます。まあ大学時代に旅行で一度山形には行っているので、60年ぶりというわけではありませんが、思いはありますね。
 この曲は難曲で、演奏は難しいですから、昔ドイツで聴いた時のようにはいかないかもしれませんが、群饗に続いて日本のオーケストラがやる演奏に期待しています。
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安倍禮爾 さん、 (narkejp)
2022-03-14 18:11:30
コメントありがとうございます。マーラーの5番、良かったです。新しいホールの響きもよく、合同演奏会を堪能しました。7月のブルックナーの8番に来県されるとのこと、チケットは3月23日から一般発売となるそうです。詳細は山形交響楽団のサイトをご覧ください。
https://www.yamakyo.or.jp/concert/special/20220723.html
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マーラー❢ (安倍禮爾)
2022-03-14 16:56:56
narkejpさん
 マーラーの第5をまともに実演で聴けるのは大変な経験でしたね。私はDVDでバーンスタインの演奏を聴いたことがありますが、まず、長いので覚悟がいりますしね。
 7月にブルックナーの第8をハース版でやる、ということで、私も関東から聴きに行くことにしました。この曲は私にとって大変思い入れのある曲で、群馬交響楽団がやはりハース版でやった時も高崎まで聴きに行きました。ノヴァーク版でやる指揮者が多い今、群饗もハース版でした。ドイツでも聴いた曲で、今度も期待しているところです。
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sankichi1689 さん、 (narkejp)
2022-03-14 12:58:49
コメントありがとうございます。通常の二管編成では演奏できない、三管、あるいは四管編成を要求される曲目を演奏するには、こうした合同演奏会というのも一つの方法でしょう。お互いに刺激にもなりますし、隣県ですので音楽ファンにはありがたい取り組みだと思います。なんとなく、「特別感」もありますしね!
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Unknown (sankichi1689)
2022-03-14 12:38:03
narkejpさん、こんにちは。
大曲を聴くワクワク感、喜びが伝わる記事ですねー。演奏会がご盛会で何よりです\(^o^)/
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呑む気オヤジ さん、 (narkejp)
2022-03-14 11:30:24
コメントありがとうございます。合同演奏会、ほんとに良かったですね。マーラーの5番は、LPやCDで何度も聴いているはずなのに、実演でたくさん発見がありました。たわいないことでも、嬉しいことです。
待望のやまぎん県民ホールは、いいホールになりましたね。仙台市内のホールというと県民会館や旧電力ホール、川内記念講堂などで聴いたことがありますが、いずれも半世紀前のことになりました。改築等のプランもあるのでしょうが、震災復興が先との思いもあります。時がくれば、立派なホールが誕生すると思いますので、楽しみに待ちましょう(^o^)/
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Unknown (呑む気オヤジ)
2022-03-14 09:01:01
合同演奏会、マーラー。良かったですね。
マーラーはあのぐらい大規模のオケで聴くと迫力あって良いです。
歯科医、何dも書いていますが、やまぎん県民ホールは本当に良いホールですね。羨ましいです。ここで仙台フィル単独の演奏を聴いてみたいなぁ。
ウチから近いこともありますが、仙台市内のホールよりこっちに聴きに来ることが多くなりました笑。
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