(テレビ画像をデジカメで撮ってみた。)
先日「用心棒」を見た。黒澤監督の作品は以下の通りである。1961年の作品で、その模倣のリメイクが『荒野の用心棒』だったのだ。クリント・イーストウッド主演のその映画を見たような見なかったようなー、で映画の物語(筋書き)が西洋風だと思ったのだが、逆だった。互いに対立する集団があり、どちらも壊滅させる筋書きである。集団の抗争、そのエネルギーの流れと止揚があり、弁証法的な力学に見える。
++++++++++++++++++(備忘録)
「ある町にふらりと現れた主人公が、そこで対立する2つの組織に近づいて双方を欺き、最後には全滅させて去っていく」という、本作のようなアウトラインは、多少の違いはあるものの他の東宝映画にも見受けられる。例としては本作の前年に公開されたギャング・アクション映画「暗黒街の対決」(1960年 岡本喜八監督)や、本作の9年後に公開された任侠パロディ映画「日本一のヤクザ男」(1970年 古澤憲吾監督)などが挙げられる[6]。
今ではよく見られる演出だが、侍同士の対決シーンで、すれ違いざま刀を振り下ろし、いったん静止して片方が倒れて死ぬという描写や、効果音として刀の斬殺音を使用したのは、本作が最初である[7]。ただ、本作では最初の試みということもあって、音量は「椿三十郎」よりは控えめである。
劇中の斬り落とされた手首は、俳優としても出演している大橋史典が造形した。あまりのリアルさに、黒澤はそばに寄ろうともしなかったという。うしおそうじによれば、大橋は本作の撮影風景を8mmフィルムに収めており、見せてもらったことがあるという[8] 。
劇中のつむじ風は、電動の風洞で起こす大がかりなものだった。宿場町の野外セットは、撮影所そばの広大な畑をつぶして建てたもの。ちょうど農閑期だったので、春の種付けまで借りられたのである。続編『椿三十郎』でも、再びこの畑を借りて野外セットを組んでいる
その他の監督による「用心棒」
勝新太郎主演の大映映画に『座頭市と用心棒』(1970年 岡本喜八監督)があり、三船敏郎が同じような衣装で用心棒として登場する。これは当時の人気キャラクター座頭市と用心棒を対決させる企画であるが、三船敏郎の役名は本作と違う佐々大作になっており[10]、役作りもかなり違う。なお『椿三十郎』では撮影が小泉福造、斉藤孝雄に変わったのに対し、『座頭市と用心棒』の撮影は、本作と同じ宮川一夫である。さらに同年、今度は三船プロ製作・東宝配給による、三船敏郎、勝新太郎、石原裕次郎、中村錦之助、浅丘ルリ子の5大スター共演映画『待ち伏せ』(1970年 稲垣浩監督)において、三船は本名不明の用心棒(劇中では「名前は諸国を放浪している間に忘れた」と語っている)を演じている。その他に久世竜、佐藤勝、『椿三十郎』で脚本を担当した小国英雄が参加しており、佐藤はこの作品のテーマ音楽として用心棒の劇伴を彷彿とさせる音楽を作曲している。
1971年にはテレンス・ヤング監督によるフランス映画『レッド・サン』に、日本使節団の一員として三船が出演している。大統領に贈る宝刀を列車強盗に盗まれ後を追うという設定だが、随所に黒澤作品の用心棒を彷彿とさせるカットが盛り込まれている。
リメイク
- 後に、イタリアで『荒野の用心棒』(1964年/セルジオ・レオーネ監督)としてリメイクされた。許諾の無い翻案であり、東宝がレオーネらを告訴、勝訴している。しかし、クリント・イーストウッドの知名度を大きく引き上げた。
- また、アメリカで『ラストマン・スタンディング』(1996年/ウォルター・ヒル監督)に翻案リメイクされた。ハメットの『血の収穫』同様、主人公の独白が全編にある。ブルース・ウィリス演じる主人公の名前は、三十郎同様偽名なのかジョン・スミス。卯之助に相当する敵役は、クリストファー・ウォーケンが演じた。黒澤が亡くなった2ヶ月後、1998年11月15日テレビ朝日『日曜洋画劇場』で地上波初放送された回は、黒澤と親交の深かった淀川長治最後の解説となった。
- リメイクではないが、アメリカ映画『ボディガード』で、主人公達が映画館で見るのが『用心棒』であり、1シーンがそのまま使われている。また、『ボディガード』の題名自体がアメリカ公開時の『用心棒』の英語タイトルであり、他にもこの作品内で『用心棒』を含む黒澤映画へのオマージュが多々見られる。