ボッティチェリ展見学会を開催しました(2015.4.19)@渋谷Bunkamuraミュージアム
2015年4月19日(日) 当サークルでボッティチェリ展見学会を開催しました (参加者5名):
いつものように早めに美術館に向かって歩いていると 渋谷109のステージで仮面ライダーの藤岡弘がアイスクリームの宣伝の撮影をしているのに出くわし 頭の中からイタリア美術の単語が一気に蒸発(笑)
日曜11時に渋谷東急Bunkamuraミュージアムに入りました 最初はあまり混雑していなかったけど 次第にやはり混んできました
まずは全員にレクチャーをして あとは個々の作品の前で説明&鑑賞 事前の準備をしてきたのでどうにかうまくゆきました
その後 この日が最終日の1階フロアで開催中の「古河原 泉展」「ミューズたちの光と影 VersionⅡ」展を見てから イタリアンランチ「Beehouse」へと直行
もう渋谷109には藤岡弘はいなかったけど(笑) 3月に終了した渋谷駅前の東急プラザすぐそばの「Beehouse」は はちみつの他 ランチセットのサラダバーとドリンクバーが充実してました
またいつものように皆でいろいろお喋りして解散となりました いつもは10名近くではぐれたりして大変ですが 今回は人数もお手頃で 私も一気に荷物が軽くなり 無事にイベントが終わりほっとしました
* * *
序章: 富の源泉 フィオリーノ金貨
表にはフィレンツェの紋章 裏には聖ヨハネを刻印したフィオリーノ金貨は 今の時代までまったく色あせずに当時をしのばせてくれます これは中世から初期ルネサンス時代まで国際通貨となったものだそうです フィレンツェの町の名にちなんでつけられた名前です
第1章 ボッティチェリの時代のフィレンツェ - 繁栄する金融業と商業
チラシで見ていた『ケルビムを伴う聖母子』の額縁に描かれたいくつもの金貨の模様 これは当時の両替商組合の象徴です 高利貸しは禁じられていたけれど両替商は富の流通のため認められていたそうです
トスカーナの工房で作られた「フィレンツェの公益質屋の金庫」という木と鉄で作られた金庫は大きくて フィレンツェ貯蓄金庫財団のコレクションとのこと (高利貸しはダメでしたが公益質屋はよかった)
鍵も南京錠は食糧に それよりも頑丈な鍵はお金に使われ 他にもメディチ銀行の発行した為替手形(これにより現金を運ばなくともよくなった) そしてまたチラシにもある「高利貸し」(マリヌス・ファン・レイメルスヴァ―レに基づく模写)の あくどい高利貸しのゆがんだ笑みを浮かべた顔を見ながらしばし考えにふけりました 同じく「両替商と妻」も 先日の講演会で聞いたように高利貸し業を迫害していた時代の描き方を見ました
第2章 旅と交易 拡大する世界
ヨーロッパ各地にフィレンツェの銀行の支店が開かれ 信用状を携えて長旅に出るようになり 中東からも商品が行き交いました 航海図や旅の道具 船旅の様子を描いた絵画が紹介されています
平面球形図法による航海図(1457年/フィレンツェ国立中央図書館)には 日本は2つの島として描かれているのですが大分形が違いますね
また チラシにもある「大天使ラファエルとトビアス」は 父親のかわりに貸したお金を取り返しに行くことになったトビアス少年(旅のお守りである魚を手に持っています この魚は敬虔なユダヤ人・トビトの息子トビアスのアトリビュート)に 大天使ラファエルが付き添っています
この左に描かれた男の子は注文主の子供(10才で亡くなった)とのこと
その隣にはボッティチェリの「受胎告知」がありますが これは55才の晩年に書かれた絵で個人像ですが だいぶ今回来た5メートルのあの絵とは趣が違いますね
第3章 富めるフィレンツェ
「奢侈(しゃし)禁止令」という贅沢を戒める法令が発せられ 衣類や装飾品 婚礼や葬儀まで節制が求められました それでも罰金を払えば持っていてよいとし かえって市の財政も潤ったそうです (罰金で財政を潤わせるというのはよくありますね) 先日の講演会で聞いた「ボタン穴のないボタンはつけるな」というアレですね~
第4章 フィレンツェにおける愛と結婚
カッソーネ(婚礼用長持ち)や出産盆(出産祝いを乗せる盆)が展示されています
フィレンツェの銀行家や商人の寝室は 結婚・出産・死が展開されるプライベートな空間でした
「スザンナの物語」が彫られた櫛は 象牙の贈り物で未使用のままとのこと 当時の結婚や出産がいかに一大事業だったか その危険も含めて今とは比べ物にならない程だったかがうかがわれます
第5章 銀行家と芸術家
さていよいよメディチ家から絶大な信頼を得ていたボッティチェリの作品が目白押しのコーナーでドキドキ... 14~15世紀前半は贅沢に対する道徳的抑制が緩んだ時代とのこと
個人用に描かれたストロッツィ作「受胎告知」(テンペラ画) などもありますが ボッティチェリの「回廊の聖母」は個人礼拝用に描かれた寝室の調度品とのこと
「聖母子と二人の天使、洗礼者聖ヨハネ」はベロッキオの影響を受けたとのこと (ボッティチェリ自身はフィリッポ・リッピの弟子です)
また「キリストの降誕」は 今回限定来日の「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」とテーマが似ており 違う点はバックが厩(うまや)とバラ園であること バラは美しい聖母マリアの象徴ですね
「聖母子と二人の天使」は20代の時の作品で 聖母マリアはまだ10代半ばで赤いドレスに青いマント そして純潔の象徴である白百合(マドンナリリー)を持つ天使につきそわれます
そしていよいよ5メートルもある「受胎告知」(ボッティチェリ36才の最盛期の作品)が目の前に!! どうやって日本に持ってきたんだろうね~と皆で話しました
これはシエナの修道院に描かれた壁画(フレスコ画)で ペスト流行の終焉を神に感謝して描かれた絵で圧巻です チラシではよく見えない 大天使ガブリエルから光の束が放射状に放たれている様子がはっきりとわかります
イケメンの大天使ガブリエルが処女マリアに受胎を告げ 純潔を表す白百合を持ち降り立つ躍動感と天使の表情が素晴らしいですね
聖アンドレアの聖遺物容器もありました しかしかのサヴォナローラの影響を受けた画家の作品「ジャスミンの貴婦人」(ジャスミンは純潔を表す) もこのあたりから出てきました
このコーナーの最後には バックが黒の「ヴィーナス」(「ヴィーナスの誕生」からヴィーナスのみを描いたもの) もありました
第6章 メディチ家の凋落とボッティチェリの変容
メディチ銀行が倒産し パトロンであるロレンツォ・イル・マニフィコが43才で亡くなり そしてジローラモ・サヴォナローラ(サンマルコ修道院長)の台頭による「虚飾の焼却」
このラストのコーナーでは 晩年(65才で死去)のボッティチェリの絵があり サヴォナローラの要請により様式を転換した「聖母子」は確かに聖母マリアはいつもの顔ですが 幼子イエスの描き方はかなり違っています
受難の象徴である物を手にした6人の天使 テラコッタの家紋はサヴォナローラが虚飾ではないと認めたものとのこと 彼はそして多くの絵を燃やしたその1年後 同じシニョ―リア広場で 火刑に処されます...
ボッティチェリの絵の変容が悲しかった(ここには展示されていないけど 画集にあった「アペレスの標榜」50才の時の作品)
最後の映像コーナーでフィレンツェの街並みを堪能しました
売店コーナーには フィレンツェのマーブル紙もありました 素晴らしいですね!!
* * *
見どころは こちら
学芸員による作品紹介コラムは こちら
作品リストは こちら
講演会「フィレンツェ・ルネサンス美術と近代的経済システムの誕生」リポートは こちら
4/26(日)のNHK Eテレ「日曜美術館」でもボッティチェリの特集をやります
渋谷・東急本店でチケット半券サービス(2915.6.28まで)や 1階のメインロビーフロアでは Bunkamuraイタリアウィークを開催とのこと(4.29~5.6)
日伊学院文化講座「ボッティチェリ、フィレンツェの富と美、銀行家そして虚栄の排除」が開催されます(2015.5.10) イタリア語で絵の説明をしてくださいます
詳しくは こちら
ボッティチェリの作品がこれだけ(工房作も含めて17点)日本に集まることは将来的にも難しいはずとのことで 皆さんもぜひ見にいらして下さいね(^^)/
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2015年4月19日(日) 当サークルでボッティチェリ展見学会を開催しました (参加者5名):
いつものように早めに美術館に向かって歩いていると 渋谷109のステージで仮面ライダーの藤岡弘がアイスクリームの宣伝の撮影をしているのに出くわし 頭の中からイタリア美術の単語が一気に蒸発(笑)
日曜11時に渋谷東急Bunkamuraミュージアムに入りました 最初はあまり混雑していなかったけど 次第にやはり混んできました
まずは全員にレクチャーをして あとは個々の作品の前で説明&鑑賞 事前の準備をしてきたのでどうにかうまくゆきました
その後 この日が最終日の1階フロアで開催中の「古河原 泉展」「ミューズたちの光と影 VersionⅡ」展を見てから イタリアンランチ「Beehouse」へと直行
もう渋谷109には藤岡弘はいなかったけど(笑) 3月に終了した渋谷駅前の東急プラザすぐそばの「Beehouse」は はちみつの他 ランチセットのサラダバーとドリンクバーが充実してました
またいつものように皆でいろいろお喋りして解散となりました いつもは10名近くではぐれたりして大変ですが 今回は人数もお手頃で 私も一気に荷物が軽くなり 無事にイベントが終わりほっとしました
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序章: 富の源泉 フィオリーノ金貨
表にはフィレンツェの紋章 裏には聖ヨハネを刻印したフィオリーノ金貨は 今の時代までまったく色あせずに当時をしのばせてくれます これは中世から初期ルネサンス時代まで国際通貨となったものだそうです フィレンツェの町の名にちなんでつけられた名前です
第1章 ボッティチェリの時代のフィレンツェ - 繁栄する金融業と商業
チラシで見ていた『ケルビムを伴う聖母子』の額縁に描かれたいくつもの金貨の模様 これは当時の両替商組合の象徴です 高利貸しは禁じられていたけれど両替商は富の流通のため認められていたそうです
トスカーナの工房で作られた「フィレンツェの公益質屋の金庫」という木と鉄で作られた金庫は大きくて フィレンツェ貯蓄金庫財団のコレクションとのこと (高利貸しはダメでしたが公益質屋はよかった)
鍵も南京錠は食糧に それよりも頑丈な鍵はお金に使われ 他にもメディチ銀行の発行した為替手形(これにより現金を運ばなくともよくなった) そしてまたチラシにもある「高利貸し」(マリヌス・ファン・レイメルスヴァ―レに基づく模写)の あくどい高利貸しのゆがんだ笑みを浮かべた顔を見ながらしばし考えにふけりました 同じく「両替商と妻」も 先日の講演会で聞いたように高利貸し業を迫害していた時代の描き方を見ました
第2章 旅と交易 拡大する世界
ヨーロッパ各地にフィレンツェの銀行の支店が開かれ 信用状を携えて長旅に出るようになり 中東からも商品が行き交いました 航海図や旅の道具 船旅の様子を描いた絵画が紹介されています
平面球形図法による航海図(1457年/フィレンツェ国立中央図書館)には 日本は2つの島として描かれているのですが大分形が違いますね
また チラシにもある「大天使ラファエルとトビアス」は 父親のかわりに貸したお金を取り返しに行くことになったトビアス少年(旅のお守りである魚を手に持っています この魚は敬虔なユダヤ人・トビトの息子トビアスのアトリビュート)に 大天使ラファエルが付き添っています
この左に描かれた男の子は注文主の子供(10才で亡くなった)とのこと
その隣にはボッティチェリの「受胎告知」がありますが これは55才の晩年に書かれた絵で個人像ですが だいぶ今回来た5メートルのあの絵とは趣が違いますね
第3章 富めるフィレンツェ
「奢侈(しゃし)禁止令」という贅沢を戒める法令が発せられ 衣類や装飾品 婚礼や葬儀まで節制が求められました それでも罰金を払えば持っていてよいとし かえって市の財政も潤ったそうです (罰金で財政を潤わせるというのはよくありますね) 先日の講演会で聞いた「ボタン穴のないボタンはつけるな」というアレですね~
第4章 フィレンツェにおける愛と結婚
カッソーネ(婚礼用長持ち)や出産盆(出産祝いを乗せる盆)が展示されています
フィレンツェの銀行家や商人の寝室は 結婚・出産・死が展開されるプライベートな空間でした
「スザンナの物語」が彫られた櫛は 象牙の贈り物で未使用のままとのこと 当時の結婚や出産がいかに一大事業だったか その危険も含めて今とは比べ物にならない程だったかがうかがわれます
第5章 銀行家と芸術家
さていよいよメディチ家から絶大な信頼を得ていたボッティチェリの作品が目白押しのコーナーでドキドキ... 14~15世紀前半は贅沢に対する道徳的抑制が緩んだ時代とのこと
個人用に描かれたストロッツィ作「受胎告知」(テンペラ画) などもありますが ボッティチェリの「回廊の聖母」は個人礼拝用に描かれた寝室の調度品とのこと
「聖母子と二人の天使、洗礼者聖ヨハネ」はベロッキオの影響を受けたとのこと (ボッティチェリ自身はフィリッポ・リッピの弟子です)
また「キリストの降誕」は 今回限定来日の「聖母子と洗礼者聖ヨハネ」とテーマが似ており 違う点はバックが厩(うまや)とバラ園であること バラは美しい聖母マリアの象徴ですね
「聖母子と二人の天使」は20代の時の作品で 聖母マリアはまだ10代半ばで赤いドレスに青いマント そして純潔の象徴である白百合(マドンナリリー)を持つ天使につきそわれます
そしていよいよ5メートルもある「受胎告知」(ボッティチェリ36才の最盛期の作品)が目の前に!! どうやって日本に持ってきたんだろうね~と皆で話しました
これはシエナの修道院に描かれた壁画(フレスコ画)で ペスト流行の終焉を神に感謝して描かれた絵で圧巻です チラシではよく見えない 大天使ガブリエルから光の束が放射状に放たれている様子がはっきりとわかります
イケメンの大天使ガブリエルが処女マリアに受胎を告げ 純潔を表す白百合を持ち降り立つ躍動感と天使の表情が素晴らしいですね
聖アンドレアの聖遺物容器もありました しかしかのサヴォナローラの影響を受けた画家の作品「ジャスミンの貴婦人」(ジャスミンは純潔を表す) もこのあたりから出てきました
このコーナーの最後には バックが黒の「ヴィーナス」(「ヴィーナスの誕生」からヴィーナスのみを描いたもの) もありました
第6章 メディチ家の凋落とボッティチェリの変容
メディチ銀行が倒産し パトロンであるロレンツォ・イル・マニフィコが43才で亡くなり そしてジローラモ・サヴォナローラ(サンマルコ修道院長)の台頭による「虚飾の焼却」
このラストのコーナーでは 晩年(65才で死去)のボッティチェリの絵があり サヴォナローラの要請により様式を転換した「聖母子」は確かに聖母マリアはいつもの顔ですが 幼子イエスの描き方はかなり違っています
受難の象徴である物を手にした6人の天使 テラコッタの家紋はサヴォナローラが虚飾ではないと認めたものとのこと 彼はそして多くの絵を燃やしたその1年後 同じシニョ―リア広場で 火刑に処されます...
ボッティチェリの絵の変容が悲しかった(ここには展示されていないけど 画集にあった「アペレスの標榜」50才の時の作品)
最後の映像コーナーでフィレンツェの街並みを堪能しました
売店コーナーには フィレンツェのマーブル紙もありました 素晴らしいですね!!
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見どころは こちら
学芸員による作品紹介コラムは こちら
作品リストは こちら
講演会「フィレンツェ・ルネサンス美術と近代的経済システムの誕生」リポートは こちら
4/26(日)のNHK Eテレ「日曜美術館」でもボッティチェリの特集をやります
渋谷・東急本店でチケット半券サービス(2915.6.28まで)や 1階のメインロビーフロアでは Bunkamuraイタリアウィークを開催とのこと(4.29~5.6)
日伊学院文化講座「ボッティチェリ、フィレンツェの富と美、銀行家そして虚栄の排除」が開催されます(2015.5.10) イタリア語で絵の説明をしてくださいます
詳しくは こちら
ボッティチェリの作品がこれだけ(工房作も含めて17点)日本に集まることは将来的にも難しいはずとのことで 皆さんもぜひ見にいらして下さいね(^^)/
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