講演会シリーズ「世界の書棚から」シリーズ第8回「ポーランド絵本の100年 いまむかし」に行ってきました(2022.10.10)@板橋区立中央図書館
「絵本のまち いたばし」の 板橋区立中央図書館・板橋区立美術館が合同で
月1回開催している「世界の書棚から」シリーズ
第7回の英語圏に続いて 第8回は「ポーランド絵本の100年 いまむかし」です:
この日はちひろ美術館・東京 学芸員の松方様を講師にお迎えして またポーランド広報文化センター所長のご挨拶からセミナーが始まりました
ポーランドフェスティバルにも何回か行ったりして A.ワイダ監督の映画からポーランドに興味を持ちましたが 絵本の話は初めてです
時代を3つに分けてのお話です:
1. 1918年~1944年
ポーランドは他国の占領下に置かれて地図から消えた時代を経て 1918年にようやく独立し 地図に再び現れます
その時代の絵本作家は:
エドゥムント・バルトゥオミエイチク(1885-1950)
ワルシャワ生まれ 夜学で美術を学び ワルシャワ美術アカデミーの副学長を務めました
『おじいさんとおばあさん』(1922年) これは手綴じの絵本で貴重ですね
『スタシ王のけむったい暖炉と煙突掃除ヤネクの話」(1925年) 色が黒のみなのは 煙突掃除夫は煤で汚れているからです との前書きが楽しいですね
ゾフィア・ストリイェンスカ(1891~1976)
2000年以降に再評価されましたが 20才でなんと男装してミュンヘンの美術学校に入ったそうです パリ万博のポーランドのパヴィリオンの内装を手がけました
『童話』(1922年) 『挽歌』(1930年) 『ヤシとカシャ』(1936)
フランチェスカ・テメルソン(1907~1988) &ステファン・テメルソン(1910~1988)
夫は文 妻は絵を担当し イギリスに移住して出版社を開きました
『郵便』(1932年) 通信の進化を描きます
『針が糸と踊ったよ』(1938年) と 『タテルさんゆめのいえをたてる』(1938年) この2冊は日本でも出版されています
昔懐かしい絵本が多く 素朴ながらも実験的な絵を見せていただきました
2. 1945年~1989年
この44年間は ポーランド人民共和国の社会主義の時代でした この時代は出版も増え ワルシャワ大学にも本の学科ができたり 展覧会や映画も増えてゆきました
ヤン・マルチン・シャンツェル(1902~1973)
ユダヤ系ポーランド人で 子供の頃家に下宿していた画家が 家賃代わりに絵を教えてくれたことがきっかけで描き始め クラクフの美大を出て編集や教師も務めました
『そばかす先生の不思議な学校』(1946年) 『ピノッキオの冒険』(1950年)
『蒸気機関車』(1950年)など
ズビグニエフ・リフリツキ(1922~1989)
6人兄弟で絵本が好きで クラクフの美術大学でアニメも学び ワルシャワの出版社でアートディレクターを務めました ポーランド人で初めて国際アンデルセン賞を受賞しました
『こぐまのウシャテク』(1957~ )アニメ化もされました
『ポーランドの民話』(1983年) 木版画の絵本です
『タイプライターでのたたかい』(1951年)
ユゼフ・ヴィルコン(1930~ )
クラクフ美術アカデミーで美術史を学んだ画家 美術史家で 2005年に来日しています
『あるクジャクの冒険』(1960年) とても繊細な水彩画です
『タパティキ人たちの冒険』(1974年) また違う画風ですね
『幸せな夢』(1984年) パステル画です
『すきすきだいすき』(1991年) 動物がテーマでスイスで出版されました
『犬けらの暮らし』(2011年) 彫刻まで手がけ 三次元イラストとして彫刻の写真を絵本にしました
ボフダン・ブテンコ (1931~2019年) イラストレーター コミックや人形デザイナーも手がけ 2010年に来日しました
『五月三十五日』(1957年)
『しずくのぼうけん』(1965年) 日本でも出ました 当時は紙質が悪かったためセルを使い 文字は手書きです
『火事だ!』(1965年) 漫画的表現です
『グチオとツェザール』(1968年)
エルジュビエタ・ガウダンシンスカ(1943年~) グラフィックデザインではなく 絵画を学び その影響が絵本にも表れています
『ポケットのぼうけん』(1974年) デビュー作です
『おじいさんとおばあさん』(1984年) 日本語版も出ており 絵画的です
『葦の中のカブトムシ・ポーランドの早口言葉』(1989年) ここでポーランド文化広報センター所長に ポーランド語の早口言葉を読んでいただきました!! 舌を噛みそうです
3. 1989年~今
1989年に民主化が実現し 「第三共和国」と呼ばれ 民主国家時代を迎え 西側からの情報も入りました
2003年にはボローニャブックフェアのゲスト国にも選ばれました
イヴォナ・フミェレフスカ(1960年~)
『数字大好き』(1999年)
『考える 〇〇〇 』(2005年) 韓国で出版されました (タイトルの〇の部分は韓国語です)
『こころの家』(2010年) ポーランド絵本作家の絵本が 韓国で出版されました
『ブルムカの日記』(2011年) コルチャック先生がテーマです
『トラブルの力』(2016年)
マルタ・イグネルスカ(1978年~ ) ユダヤ系の作家で ワルシャワ美術アカデミーでグラフィック・アートを学びました
『編みものばあさん』(2008年) 編み目びっしりに描かれています
『本当のおはなし』(2013年) 図形のようなイラストです
『レムの世界』(2021年)
等など... 質疑応答に続き 今回は祝日午後の開催なので ゆっくりと絵本を観たり ポーランドの絵本やキーホルダーや語学の本などもあり 色々お話したりしながらおひらきとなりました💕
セミナーは こちら
次はフランスです
* 板橋区立美術館では 2022.11.19~2023.1.9 「三浦太郎展 絵本とタブロー」が開催されます😊