講演会シリーズ「世界の書棚から」シリーズ第3回「読むアート ー ポルトガルの絵本」に行ってきました(2022.5.13)@板橋区立中央図書館
「絵本のまち いたばし」の板橋区立中央図書館・板橋区立美術館が合同で 月1回開催している「世界の書棚から」シリーズ 第2回「カナダ」に続き 第3回は ポルトガルです:
この日は ポルトガル大使館勤務であり翻訳者でもある講師の方が ポルトガルの国について そして児童書や絵本についてお話してくださいました
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1930年代から1974年4月25日まで 長らく独裁政権下にあったポルトガルでは 表現の自由が制限されていたため 児童文学の発達は遅れていました
その後2000年代に 独立系出版社の創設が相次ぎ 独創的な絵本の出版が急速に増えました
ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアなど国際的な舞台でも 2012年にはここでポルトガルの絵本が大々的に紹介され 2001年からは毎年入賞者も出ています
まずポルトガルの国の簡単な紹介 国旗の説明 ポルトガル語を話す国々 日本との関係等についてご説明いただきました
ファティマという村は 1917年5月13日に聖母マリアさまが出現されたという記念日を祝いに世界中から集まる巡礼地となっているそうです
ポルトガルは詩人の国でもあり ポルトガル史上最高の詩人ともいわれる16世紀の詩人ルイス・デ・カモンイスの命日(6/10)はナショナルデーにもなっています
また 20世紀を代表する国民的作家フェルナンド・ぺソーアは 国のアイデンティティでもあるとのこと
ハリーポッターとポルトガルの関係についてもご紹介いただきました コインブラ大学のマントとかレロ書店 そして魔法学校の教師サラザール・スリザリンの名前は 独裁政権のアントニオ・サラザール首相の名前からとったこととか...
ポルトガルは 1974年4月25日のカーネーション革命で民主化されるまで 約41年間ファシズム政権下にあり 表現が規制されていたのですね
カーネーションは ほぼ無血の革命を成し遂げたこの日に 住民たちが軍隊に捧げた花で自由のシンボルでもあります 銃口に挿したカーネーションの花...
私はこの時 1989年のベルリンの壁崩壊直後に 東の市民が国境警備兵の銃口にやはりカーネーションの花を挿した写真が 脳裏によみがえりました...
そして 革命以前の児童文学と合わせて このカーネーション革命について書かれた絵本をいくつかご紹介いただきました
21世紀のポルトガルの絵本について
Planeta Tangerina Orfen Negro, Orfen Mini Pato Lógico という独立系出版社が2001年以降次々と誕生しましたが みな思想を持った会社でアーティストたちが立ち上げたところです
中でもPato Lógicoのスローガンの 反対側からモノを見る人たちが作った本を反対側からモノを見る人たちに届ける という言葉が興味深かったです
大航海時代を招いた探検家マゼランの500年記念がここ3年間継続され 記念のコインや切手と合わせて絵本も出版されており そちらもご紹介いただきました 日本でも出ないかな?
ポルトガルで有名な日本の絵本もやはり グラフィック系のものが多いそうです
ボローニャブックフェアの常連たちと言われる作家の方々の絵本も 何冊かご紹介いただきました 環境問題がテーマのものも増えていますね
ある日突然動物たちが啼かなくなったという「o protesto」「Plasticus Maritimus(プラスチック海洋生物)」等...
また 2005年からは出版助成もされており DGLABによる ポルトガルを紹介する出版物の助成により555作品が国外で出版され 日本の「ぼくは生まれたとき」等もその1冊だそうです
ポルトガルにはAmazonが入っていないため 原書はくまごろう書店 WOOK.PT ルピナス等で入手する方法があるとのこと
質疑応答では 移民の増加とともにサイレント絵本が増えていること (一社)日本ポルトガル協会が「民話絵本シリーズ」という動画で絵本を紹介してくださっている 等の情報をいただきました
最後に 「戦争」というポルトガル絵本を読んでいただき まさに今の状況と重なって胸に深く響きました...
また EUフィルムデーズ2022の 唯一のポルトガル映画「リカルド・レイスの死の年」についてもご紹介いただきました (東京会場:
独裁体制が敷かれ始めた時代が舞台となっており 今年生誕100年を迎えるノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの同名小説の映画化です
第4回は ベルギーです!
講演会シリーズ「世界の書棚から」第3回「読むアート - ポルトガルの絵本」は こちら