ぬえです~。いま名古屋に逗留しております。
昨日は愛知県・豊田市能楽堂で師匠が『二人静』を勤められまして、ぬえはその地謡としてお手伝いさせて頂きました。その後 ぬえは何度かこのブログでも紹介させて頂いております師家所蔵のSP盤のデジタル化作業の総仕上げのために名古屋に残って、これが完了したいま、この画期的な計画の立案者である当地の能楽研究者・鮒さんと、業績の成果を見つつあることに祝杯を挙げておりました。本当に鮒さんの仕事は後世に残る業績だと思いますよ。いますぐには評価する人はなくてもね。
さてこのところこのブログでは『翁』についての話題を続けておりますが、昨日の豊田能楽堂での催しの際に楽屋で「翁飾り」について他門の能楽師と話す機会を得、そこで思いも寄らぬ発見がありましたので、今回はそのご報告をさせて頂く事と致します。
ぬえは先日のブログの記事で以下のように書きました。
さて楽屋ではまず鏡の間に「翁飾り」を設えるのですが、八足台と呼ばれる神社にあるのと同じ台を三段に組み、そのうえに真菰を掛けて…さてその上に『翁』に使う道具類を並べます。…最上段の面箱の左右には錫口(しゃっこう)と呼ばれる、御神酒を入れた大きなとっくりのような酒器を置き、その口には奉書を巻いて飾ります。中段には火打ち石、「千歳」が着ける小さ刀(ちいさがたな)、同じく「千歳」の侍烏帽子、翁烏帽子、翁扇、「千歳」が使う神扇を並べて置き、下段には二つの三宝を置きます。三宝にはそれぞれ半紙を敷き、ひとつの三宝にはスルメ、もう一つには土器(かわらけ)を三つ置きます。土器は一つは演者が開演直前に御神酒を頂くときにそれを飲むために使い、あとの二つには洗米と粗塩が盛られています。どちらもやはり御神酒を頂くときに演者が身体を清めるために使うのです。
ぬえは師匠や先輩に教えて頂いて、ずうっとこの祭式に則って「翁飾り」を楽屋に設えてきたのです。それももう20年近く…。ところが今日豊田市での催しの楽屋で他門の能楽師、やはりブログを書かれているS田氏と話していて、たまたま「翁飾り」の話題となったのですが。。これが ぬえの師家のやり方とまったく違う。。
いわく「翁飾り」の八足台は二段に組み、上段には中央に面箱、その向かって右に翁烏帽子、さらにその右の外側に中啓が飾られます。面箱の左側には「千歳」の侍烏帽子、小さ刀、そして火打ち石が配置されるそうです。下段には左右に錫口が置かれ、中央に二つの三宝が置かれる、とのこと。ぬえの師家のやり方とは、もうすでに八足台の段の数から違うわけですが、配置される品物の位置もまるで違う。。すると、この方の師家の「翁飾り」では上段に面箱と「翁」「千歳」が着る装束類、下段には開演直前に『翁』に出演する演者一同が御神酒を頂く儀式のための酒肴が置かれている、ということになります。
さらに驚かされたのは、この方の師家では下段に飾られる三宝に載せられる品物が ぬえの師家とは違うのです。この三宝の片方には上記のように土器・洗米・粗塩が置かれていて、これらは出演前に演者が御神酒を頂くときに使われます。問題はもう片方の三宝に載せられている品物=肴で、これは「翁飾り」に飾られるのみで演者が食するわけではないのですが、ぬえの師家ではスルメを置くのに対して、S田氏の師家では、なんとナマの鯛を飾るのだそうです(!)
そこまでの話を聞いてずうっとビックリしっぱなしだった ぬえでしたが、ここである後輩が口を挟みました。「梅若会でも翁飾りに鯛が飾られているのを私、見ました。。」ええっ!? するとS田氏「観世会でも鯛だよ」。。するとスルメ派である ぬえの師家は少数派。。?
ちなみに「翁飾り」に飾られた鯛は、終演後に演者が食べるのだそうです。ほえぇぇ~~。
でもさ、するってえと、能楽師の中には「よおしっ!年末にオレがでっかい鯛を釣り上げて、正月の『翁』にはそれを飾ってやるから。鯛は買うんじゃね~ぞっ」と言い出す方が絶対に出てくるな。。そんでもって、多くの場合、このような方は正月の初会には すごすごと元気なく出勤して、紋付きが入ったカバンからパック入りの鯛を出すんだろうな。。
ちなみにS氏は「年末に熱海で“狙った”んだけどさあ。。ボウズだった。。」という事でした。(あ、言っちゃいけなかった?)
昨日は愛知県・豊田市能楽堂で師匠が『二人静』を勤められまして、ぬえはその地謡としてお手伝いさせて頂きました。その後 ぬえは何度かこのブログでも紹介させて頂いております師家所蔵のSP盤のデジタル化作業の総仕上げのために名古屋に残って、これが完了したいま、この画期的な計画の立案者である当地の能楽研究者・鮒さんと、業績の成果を見つつあることに祝杯を挙げておりました。本当に鮒さんの仕事は後世に残る業績だと思いますよ。いますぐには評価する人はなくてもね。
さてこのところこのブログでは『翁』についての話題を続けておりますが、昨日の豊田能楽堂での催しの際に楽屋で「翁飾り」について他門の能楽師と話す機会を得、そこで思いも寄らぬ発見がありましたので、今回はそのご報告をさせて頂く事と致します。
ぬえは先日のブログの記事で以下のように書きました。
さて楽屋ではまず鏡の間に「翁飾り」を設えるのですが、八足台と呼ばれる神社にあるのと同じ台を三段に組み、そのうえに真菰を掛けて…さてその上に『翁』に使う道具類を並べます。…最上段の面箱の左右には錫口(しゃっこう)と呼ばれる、御神酒を入れた大きなとっくりのような酒器を置き、その口には奉書を巻いて飾ります。中段には火打ち石、「千歳」が着ける小さ刀(ちいさがたな)、同じく「千歳」の侍烏帽子、翁烏帽子、翁扇、「千歳」が使う神扇を並べて置き、下段には二つの三宝を置きます。三宝にはそれぞれ半紙を敷き、ひとつの三宝にはスルメ、もう一つには土器(かわらけ)を三つ置きます。土器は一つは演者が開演直前に御神酒を頂くときにそれを飲むために使い、あとの二つには洗米と粗塩が盛られています。どちらもやはり御神酒を頂くときに演者が身体を清めるために使うのです。
ぬえは師匠や先輩に教えて頂いて、ずうっとこの祭式に則って「翁飾り」を楽屋に設えてきたのです。それももう20年近く…。ところが今日豊田市での催しの楽屋で他門の能楽師、やはりブログを書かれているS田氏と話していて、たまたま「翁飾り」の話題となったのですが。。これが ぬえの師家のやり方とまったく違う。。
いわく「翁飾り」の八足台は二段に組み、上段には中央に面箱、その向かって右に翁烏帽子、さらにその右の外側に中啓が飾られます。面箱の左側には「千歳」の侍烏帽子、小さ刀、そして火打ち石が配置されるそうです。下段には左右に錫口が置かれ、中央に二つの三宝が置かれる、とのこと。ぬえの師家のやり方とは、もうすでに八足台の段の数から違うわけですが、配置される品物の位置もまるで違う。。すると、この方の師家の「翁飾り」では上段に面箱と「翁」「千歳」が着る装束類、下段には開演直前に『翁』に出演する演者一同が御神酒を頂く儀式のための酒肴が置かれている、ということになります。
さらに驚かされたのは、この方の師家では下段に飾られる三宝に載せられる品物が ぬえの師家とは違うのです。この三宝の片方には上記のように土器・洗米・粗塩が置かれていて、これらは出演前に演者が御神酒を頂くときに使われます。問題はもう片方の三宝に載せられている品物=肴で、これは「翁飾り」に飾られるのみで演者が食するわけではないのですが、ぬえの師家ではスルメを置くのに対して、S田氏の師家では、なんとナマの鯛を飾るのだそうです(!)
そこまでの話を聞いてずうっとビックリしっぱなしだった ぬえでしたが、ここである後輩が口を挟みました。「梅若会でも翁飾りに鯛が飾られているのを私、見ました。。」ええっ!? するとS田氏「観世会でも鯛だよ」。。するとスルメ派である ぬえの師家は少数派。。?
ちなみに「翁飾り」に飾られた鯛は、終演後に演者が食べるのだそうです。ほえぇぇ~~。
でもさ、するってえと、能楽師の中には「よおしっ!年末にオレがでっかい鯛を釣り上げて、正月の『翁』にはそれを飾ってやるから。鯛は買うんじゃね~ぞっ」と言い出す方が絶対に出てくるな。。そんでもって、多くの場合、このような方は正月の初会には すごすごと元気なく出勤して、紋付きが入ったカバンからパック入りの鯛を出すんだろうな。。
ちなみにS氏は「年末に熱海で“狙った”んだけどさあ。。ボウズだった。。」という事でした。(あ、言っちゃいけなかった?)