ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

殺生石/白頭 ~怪物は老体でもやっぱり元気(その20)

2009-05-13 09:22:03 | 能楽
昨日『殺生石』の申合がおわり、まあ順調に稽古の成果は出せたと思います。あとは当日を迎えるのみ~。申合の数日前に稽古能もあり、いずれも汗だく~ (хх,) ん~、昔は ぬえ、能を舞っても汗なんてかかなかったものだが。。歳とともに体調ってのは変わってくるのですかね。。いや実際「能楽師は汗をかいてはいけない」と良く言われます。それは汗をかくと面や、とくに装束が傷むからで、ま、そうは言っても汗かきなシテ方もたくさんいますけれども。

ぬえの場合は、以前『殺生石』を勤めたときも、またそのほかにも『善界』や『雷電』など切能を勤めても、まず汗はかかなかったです。終わってから装束を干す必要がないくらい。ようやく『道成寺』では汗をかいたけれども、それは身体を動かしたからではなくて、鐘の作物の中で着替えをする、その蒸し暑さのためでした。

ところが数年前からかなあ。。どうも能を舞って汗をかくようになってきました。イケナイんだけどなあ。。とは思うけれども自分じゃどうしようもないですね。困った、困った~

さてキリの型の続き、終曲までの一番最後の部分です。

シテ「両介は狩装束にて。 謡いながら角へ行き正へ直し
                  同じ


地謡「両介は狩装束にて数万騎那須野を取り込めて
                   左へ廻り笛座より中へ出ながら左袖を出し

                   同じ


草を分つて狩りけるに。 脇座の方までサシ分ケにて草を分け行き、サシて右へ廻り
                同じ


身を何と那須野の原に。 笛座にて角へ向きヒラキ
                 中にて橋掛りへ向き両ユウケンしながら橋掛りへ行き


顕れ出でしを狩人の。 角へ行き右手にて弓を引く心
     一之松にて欄干に左足を掛け大きく両ユウケン仕、右へ小さく廻りながら弓を引く心


追つつまくつつさくりにつけて。 左へいくつも廻りながら笛座まで行き、角へ行き
                     上下に狐を狙いながら幕際まで行き


矢の下に。射伏せられて。 矢を射る心で扇を腹に突き立て反り返り飛び安座
                  幕に向いたまま腹に扇を突き立て朽木倒レ


即時に命を徒らに。なす野の原の。 立ち上がり右へ廻り一畳台へ上がり
                        立ち上がり左へトリ舞台へ戻り


露と消えてもなほ執心は。この野に残つて。 正へサシ込ヒラキ
                  舞台中にて両袖を頭の上へ返しそのまま下居て前へ伏し


殺生石となつて。人を取る事多年なれども 六ツ拍子、踏返シ七ツ拍子
                            立ち上がり


今逢ひがたき。御法を受けて。この後悪事をいたす事。
                 ワキへ向き下居て両手をつき辞儀

                 同じ


あるべからずと御僧に。 手を上げワキを見込み立ち上がり
                同じ


約束固き。石となつて。約束固き石となつて。 常座へノリ込、右へ飛返り
            常座または幕際へ行き右へキリリと廻り左袖を頭へ返し下居


鬼神の姿は失せにけり。 立ち上がり左袖を返し留拍子
                 同じ