ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

めずらしく

2009-05-27 23:53:04 | 能楽
話題がない。

いえ、休暇があったほどで『殺生石』のあとは十分に休養していたのですが、それがマズかった。
ネットもつながらない状況にいたので、その間に しなければならない事務的な仕事が山積してしまって。。

そのうえ休暇があった分、そのあとに公演やらお弟子さんのお稽古やら、どさっとまとめて降りかかってきました~ (хх,) それでも伊豆にも行ったし~ (*^。^*)、茨城県にも行ったし~ (^o^)、横浜能楽堂にも行ったし~ (^。^)、明日はまた芝・増上寺の薪能の申合です。

この増上寺の薪能、ぬえは大好きなんですよね。東京タワーの真下のような立地で広大な敷地で催される薪能。だんだんと夕暮れが迫ってきて、東京タワーもライトアップされて。。ああ、なんてキレイなんでしょ。(#^.^#) そのうえ季節もちょうど心地よい頃で、夕風が涼しい薪能。出演している方も気持ちがよい催しです。

この増上寺薪能、ほとんど雨にたたられた事さえないんです。もう20年以上続いている催しですが、雨天会場(本堂)に変更になったのは1~2回だけなのではないかしら。

。。とは言え、一度 雨では大変な目にも遭ったこともあります。曲目が『賀茂』と『鉄輪』で。。その選曲じゃ雨乞いも同然なわけですが。。その時は気がつかなかった。初番の『賀茂』で、すでに雲行きはあやしくなっていたのですが、事件は『鉄輪』の後シテの登場の場面で起こりました。ぬえは地謡を謡っていたのですが、いや、謡えば謡うほどに空模様が暗くなってきて。。

「九曜八宿を驚かし奉り」(^。^)
「祈れば不思議や。。」(¨;)??
「雨降り風落ち。。」(゜_゜;)
「雷稲妻しきりに充ち満ち。。」(◎-◎)
「御幣もざざめき鳴動して。。」(×_×;)
「身の毛よだちて。。」.。ooO(゜ペ/)/ひゃ
「恐ろしや~~~」。。゛(ノ><)ノ ヒィ

考えてみれば『鉄輪』は阿倍晴明の祈祷が始まると突然雨が降り出し神鳴りが起こり。。そうしてその中に不気味に後シテが現れる、という設定なのでした。。が、このときはその通りになってしまって、おシテは幕から姿を見せたと思ったら後見によって幕の中に逆戻りさせられておりました。(-.-)???

もちろん地謡もすぐさま退場になり、見所は阿鼻叫喚状態でした。。(×_×;)

が、すごかったのはそのあとの楽屋。その頃は小学校の運動会のときに使うような大きなテントをいくつも並べて楽屋に使っていたのですが、楽屋に戻った ぬえは、ちょうどおシテが面を顔から外されたところだったので、お後見から面を受け取ったのですが。そのとき突然雨の勢いが強くなって、もう、それぞれのテントの間から落ちる雨がまるで水のカーテンのようになって、それぞれのテントを分断してしまいました。

わ~~、どうしよう。。と面を手に持ったまま躊躇していると、先輩から厳しい声が飛びました「ぬえくん!!その場を動くな!!」(O.O;)

。。そうなんです。面カバンがあるテントまで不用意に移動しては面が雨に当たって傷んでしまう。。まだ内弟子だった ぬえの行動を心配した先輩から声が飛んだのでした。不用意といえば、このとき内弟子の身の分際だった ぬえが、こういう特殊な状況でお後見から面を受け取ったのが、そもそも不用意でした。

それから ぬえは楽屋での動き方が少しわかった気もしますし、また師家でも薪能の選曲には、まあ、縁起を担ぐ、というほどでもないのでしょうが、気を遣われているようです。

今年の薪能は、やはり雨には関係のない曲ばかり。もともと晴天に恵まれる薪能だから、今年もあの気持ちの良い舞台に出ることができるでしょう。