ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

薪能は雨。。伊豆は晴れ!

2009-06-01 01:58:26 | 能楽
結局、東京・芝の増上寺薪能は雨にたたられて雨天会場の本堂に場所を移しての上演となりました。う~ん残念。関係者に伺ったところでは薪能は今年で27回を数え、そのうち雨で本堂に会場を移したのは今回を含めてわずか4回だけなのだそうです。

そういえば思い出したのですが、驚くべき逸話がこの薪能にはあったのでした。この薪能が始まった当初から、公演の進行についての具体的な計画が練られたのと平行して、もちろん雨天の際の対処についてもいろいろと検討はされていました。どうしても野外の薪能というのは悪天候によるリスクは考えておかねばなりません。ところが第1回から晴天に恵まれた薪能は、その後も数年間ずっと天候には恵まれ続け。演者も関係者もすっかり安心して毎年この公演を楽しみにするようになりました。

そうして数年が過ぎたとき、薪能の前日の天気予報で はじめて「降水確率数十%」という不吉な数値が出てしまって。はじめて公演の是非について、公演前日に演者代表、増上寺の薪能担当者が どうしたものだろうか。。と協議をすることになりました。はじめて直面する雨天時の対応。お客さまへの周知はどのように? どうすればお客さまをスムーズに誘導できるのか。。? 議論は長引き、はじめての経験に みなさん困惑の色は隠せません。

そのとき。それまで じっと沈黙を保って関係者の議論を聞いておられた法主さまがおもむろに口を開かれて。。「わかりました。明日は晴れにしましょう」

え。。( ・_・;)

まさかの展開です。。が。翌日の薪能はみごと晴天になりました(←ホント)。上記は関係者から聞いたので真偽のほどはわかりませんが、天気予報の降水確率を覆して当日が晴天の下で円満に薪能が上演されたのは事実です。

ところで ぬえはこの増上寺薪能が本堂で催されること。。じつは好きだったりします。。

本堂におわしますご本尊の阿弥陀様の座像が、とっても良い雰囲気で。気品があって ぬえは大好き。今回、この仏さまについてお寺の方に聞いてみました。結果、時代はもう一つ判然としないそうですが、戦災にも耐え抜き、修理も何度も重ねられて大切にされてきた仏さまなのだそうです。

でも~、この仏さま、京都・奈良のお寺の関係者には ときにより「ああ。。若いですね~」と言われてしまうのだそうです(!)。「若い」! ほえ~~、なるほど白鳳・奈良・平安時代に造られた仏さまを日々拝み申しあげる方から見れば鎌倉以降の仏さまは「若い」のですかね~。。 それでも ぬえはこの阿弥陀様が好きです。もとより ぬえは運慶に傾倒してるし。時代じゃないですよね。

翌日は早朝から車で伊豆の子どもたちのお稽古に行ってきました。高速料金の値下げで、伊豆のお稽古もすっかり新幹線も高速バスも使わなくなってしまいました。ただ、渋滞を恐れて早朝に家を出なければならないのが ちょっとつらい。昼から夕方まで子どもたちの稽古をして、さらに夕方から夜まで、去年の狩野川薪能でぬえの『嵐山』の子方を勤めてくれた綸子ちゃん(←久しぶりに登場!)が再来週に東京で催される師家の月例公演「梅若研能会」で、同じ『嵐山』の子方を勤めますので、その稽古をして。行きも帰りも自分で運転していると眠くなります~(×_×)