ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『嵐山』、申合おわりました

2009-06-17 01:11:13 | 能楽
今日は『嵐山』の申合~

前述の通り「健康管理も稽古のうち」「当日は40度の熱があっても骨折しても出演してもらう」と常々綸子ちゃんに言っていた ぬえが骨折してしまいまして、合わせる顔がない ぬえなのでしたが。

今日 師匠のお宅に到着した綸子ちゃんは。。風邪気味でした。うひぃぃ~~~。センセがセンセなら生徒も生徒。いや~仲の良い師弟関係で。(T-T)(T-T)(T-T)(T-T)(T-T)(T-T)

ちょっと つらそうだった綸子ちゃんでしたが、申合をしないわけにはいきません。結果、常の稽古では一度もなかったようなミスが出たり、チビぬえとの相舞の「天女之舞」も、あと一歩シンクロしていない点もありました。ただ、技術の上では去年からの稽古の成果が出て、子方としてはかなり高レベルに仕上がっていますから、お客さまのお目汚しになることはないと思いますし、今日の程度のミスならばお客さまには気づかれないかも知れない微細な瑕瑾でありましょう。

まあ、それでも当日までどうなることやら、ぬえには少しばかりの心配が残ることになりましたが、そんなことより、綸子ちゃんのベストコンディションの状態での、あのシンクロした「天女之舞」をお客さまにお見せしたかったな~、と思います。

それでも今日は師匠や先輩からも 綸子ちゃんに割と厳しい指導のお言葉がありました。これを聞いて ぬえはひと安心。やはり、ある程度以上の成果が出せると見れば、より良い舞台のためにさらに要求を出したくなるのが 同じ舞台に立つ役者の気質というものですから、要求が出されたということは、裏返して考えれば この子方の出来にまずまず納得して頂けた、ということになるのです。そりゃ、型をなぞっているだけ、決められた謡をただ謡っているだけ、であっても舞台は進行するのですが、そういうお役の者には誰も何も言いません。もっとも ときおり、ぬえのようなヤツがぶち切れて怒鳴り出すこともないわけではないですが。(^◇^;)

んで、ぬえは。今日は足指にギプスをはめているため靴を履くことができず、師匠のお家には車で行ったうえサンダル履きで玄関に向かうことになりました。あ~~我ながら情けない。

この状態なのですが、正座にはとくに支障はないので能『嵐山』の副後見と能『藤戸』の地謡は苦もなく勤められました。ことに『藤戸』は地謡の席次ではナンバー3なので、地頭である師匠のお隣で謡わなければなりませんで、いやが上にも緊張しますですね~~。。先日の稽古能でも『嵐山』に引き続いて『藤戸』が演じられたのですが、このときは ぬえは地頭を勤めさせて頂きました。慣れない重責ですが頑張って。。でも今日の申合で師匠の地頭を聞くと、なるほど ぬえとはずいぶんレベルが違います。。がっかり。

あと ぬえは仕舞『誓願寺』のお役がありますが、さすがに申合ではギプスを着けたままでは舞えないので外したのですが、まあまあ運ビをするのには支障はなく、曲が静かなのにも助けられまして、まあ、安全圏内で舞う、という感じではありますが、当日のお役はどれも勤めることができそうです。

それにしてもこのところケガが多いなあ。。先輩からは「3度目に大きな事故が起きるってこともあるんだよ。ここらで わざとつまずいて転んでおいたらどうだ?」と真顔で言われました。そういうものなのか。