ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『嵐山』、大成功で終了~!(続々)

2009-06-23 02:03:21 | 能楽

それで、公演からしばらく経って、しばらくと言っても冷静に自分の舞台を振り返ってみられる、ということですから2~3日程度ではありますが、ようやくそういう自責の念から解放されるのです。舞台の総合的な成果と、自分に納得のいかない部分とをようやく冷静に秤に掛けることができるようになって、些細なミスであればここに至って やっと自分を許せるようになる、といいますか。

ミスが舞台で起きた場合 演者は急いでそのミスを取り繕おうとしますね。それは多少なりとも演技を自分のミスのカバーに向けることになるわけで、その時点で自分が思い描いて稽古してきた舞台の成就はなくなるわけで。そりゃそうなんですが、ややもすると役者はその「ミス」の定義を自分でも知らず知らずのうちに細かい点にまでエスカレートさせてしまったりします。このあたりは役者個人の性格によるとも思いますが。。

こうなると、お客さまも気づかないような小さなところの小さなミスで思い悩むようにもなります。ぬえは割と自分のミスは気になる方ですが。まあ、それでも2~3日経てばなんとか自分の中で折り合いをつけることができるようになりますが、公演当日の夜はダメ。ずっとそうでした。結局、パーフェクトな舞台などあり得ないことなのだと割り切れるようになったのは最近のことです。

この日の『嵐山』の子方は、まさにそういう「役者根性」のようなものの萌芽であったのでしょう。まあ、チビぬえは仕方がないのでありますが、綸子ちゃんがやっぱり同じように反省していたのに感心しました。ぬえも時には厳しい言葉も使って稽古していましたが、綸子ちゃんの心の中にも責任感が生まれていたんですね~

『嵐山』終演後、子方二人には ぬえから「100点」をつけてあげました~。(#^.^#) そのうえで、この日の公演がすべて終了するまで居残ってもらって、ロビーでお客さまのお帰りをお見送りするよう申しつけました。綸子ちゃんはこの翌日が学校のテストだったのだけれども、やはりこれも舞台の仕事のうち。ましてや子方を成功させたのですから、胸を張ってお見送りしてほしかったです。

あとで聞いたところでは、ロビーでは「あ、あの子たちよ~~」と喜ばれて人垣ができたのだそうな。(^_^;)
あまつさえ「あなたがリンコちゃんね~」「。。リンズです。。」というようなやりとりがあったのだとか。(^◇^;) あ~、そのお客さまはこのブログの読者ではありませんね~~(;^_^A

まあ、ともかく子方二人はよくやりました。ぬえも神経をすり減らしたけれど、舞台が成功して苦労も心配も吹き飛びました。綸子ちゃんは中学生になって、これから段々と忙しくなってくるでしょうけれども。。ぜひお稽古を続けてほしいなあ。実際には ちょっと前に ぬえは綸子ちゃんに「ね~、また今度 ぬえと一緒に舞台やらない?」と聞いてみて。。綸子ちゃんは「ん~? やらな~い」と。。あえなくフラれてしまいましたけれども。(T◇T)

さてトップ画像は『嵐山』で子方が手にして登場した 桜持枝です。自分で作ろうとも思ったのですが、桜の造花というのはなかなか良いものがなくて。昨年の「狩野川薪能」で ぬえが『嵐山』を勤めたときに、国立能楽堂の所蔵品が最も出来がよいことがわかって拝借したもので、今回の研能会でも同じものを使わせて頂きました。

※国立能楽堂の担当者から「ぜひ!ぬえさんのブログで国立能楽堂の桜持枝がイイ!と書いてください!」とお願いされましたのでご紹介させて頂きま~す。いや~ ぬえもやっぱり国家権力の前には吹けば飛ぶような弱者なもので。。ご意向には逆らえません。。バキッ!!(-_-)=○()゜O゜)アウッ!

いや、ま、本当にこの桜は良い出来なので拝借したんですよ~。念のため。(^_^;)