ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども能…願成就院参詣(その2)

2010-10-19 03:36:08 | 能楽

さてみんなが着座したところでご住職さまから子どもたちのために読経がありました。舞台の成功を祈願してのささやかな法要といったところですね。このことは事前にご住職さまと打合せを済ませておりまして、「それなら般若心経でも…」というお言葉だったのですが、この日はそれに続けて毘沙門天・不動明王・矜羯羅童子・制多迦童子の4尊像にちなんで、その真言が唱えられました。

真言…願成就院さまは真言宗のお寺ですね。北条時政の時代がどうだったのかは ぬえは不勉強にして知りませんが、ご本尊は阿弥陀如来ながら、そのほかに運慶が作った仏像が武神や不動明王であり、不動さまには脇侍までちゃんと揃った形であることを思うと、やはり当初から真言宗だったのでしょうか。もっとも戦勝祈願を目的に建立された、という特別な事情もありますから、それも考えなければなりませんが…

そして いよいよ子どもたちの謡の奉納です。今回上演する子ども創作能『伊豆の頼朝』の一部を着座したまま謡って仏前に奉納するのです。子どもたちは2列に座って、前列の中央に主役の二人(この二人だけが独吟する箇所があります)が座り、残りの子どもたちは(本来武士役の子どもも)地謡を担当します。ぬえは後列のまた後ろに座って「せ~の」「はい」みたいなコンダクター。(^_^;)

いや、これが良かったです。なんと言うかな、先日の敬老会での上演が彼らの稽古に弾みをつけたのは疑いがないところでしょう。みんな背中をまっすぐに伸ばして大きな声で…ああ、教えて良かったな~と思うのはこういう場面ですね~。

この奉納謡を、もう3年続けています。子ども能は子どもたちが演じる、というその性格上、どうしても飽きないようにチャンバラを主眼において組み立てなければなりませんが、ややもすれば子どもたちはチャンバラを楽しむために応募して、そうして、そのまま演じ終えてしまう…いや、本当のところ彼らがどう思っているのかはわかりませんが、何年も子ども能の指導を続けている ぬえにとっては、結構重大な問題でした。ぬえにとっては、一代目の能楽師だからこそ切実に感じるのかも知れませんが、子ども能は子どもたちにとって能や日本文化に触れる機会であってほしいのです。

ましてや、上演する曲目が地元で起こった事件を題材に用いているとなれば、この地に生きる子どもたちにとって、チャンバラをやって楽しかった、で終わらせてはならないです。ま、正直 ぬえ自身、伊豆については何も知らなかったのですが、台本を作る上で当地で何度も取材をして、ようやくこの地がいかに日本史のうえで重要な役割を勤めてきた地だということを知りました。こうしたことは学問以上ですね。実地に踏査をして地元の人にお話を伺うと、ぬえが古典文学から得た程度の知識では到底わからないようなお話も何度も聞く機会がありました。これを、演じる子どもたちが知らないのではいけないのでは…と思ったのが、ぬえがこの寺社参詣に子どもたちを連れ出すことを考えた大きな理由でした。

さてそうして、奉納謡が終わったところでご住職さまからお話を頂きます。頼朝の能がどうしてこの地で上演されるのか、願成就院というお寺が頼朝とどのように関わっているのか…ご住職はかつて学校の先生をお勤めになってもおられたそうで、子どもたちにもわかりやすく、言葉をかみ砕いてお話ししてくださいました。

おっと、この日の集合写真がようやく ぬえにも届けられました。それがタイトル画像です。

そして、なんと今日、地元紙『伊豆日日新聞』にこの願成就院参詣の様子が記事になって掲載されました! しかも…なんと1面トップの扱いですって!

…ですって、というのは…まだ ぬえ、この新聞記事を読んでいないんです…(T.T)
「メールで送りますね~」とお母さん方からも言われたのですが…それっきり。(・_・、)

ああん、見たいよ~~(;´_`;)