ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

東北支援の旅、スタートしました!(その4=釜石・仮設商店街での上演)

2011-12-29 09:34:27 | 能楽の心と癒しプロジェクト
ぬえ@石巻まで来ました。ご報告は遅れに遅れ。。

もう一昨日になりますが、釜石の旅館・宝来館のプレ・オープニングとして「三番三」「羽衣」を上演した翌日、釜石市・鵜住居町の仮設商店街「鵜(う~の)!はまなす商店街」にて「菊慈童」を勤めて参りました。住宅は避難所から仮設住宅への移行が進み、いま町は生活の糧を得る基盤を整えつつあります。そうして、町のあちこちに商店街が開かれ始めました。…とはいっても あくまでプレハブの仮設商店街。いつかまた、活気を帯びた本物の商店街ができるその日まで、懸命な復興の作業は続くのです。

さてそういった場所での演能ですから、会場としてはかなり難しい条件でした。店舗の中はとても能を上演できるスペースはなく、無理に演じたとしても客席は作れない。。そこで商店街の前にある駐車スペースを会場とすることになりました。

ところが生憎の強風で、出演者一同…どころかお客さまも吹き飛ばされちゃいそう。おまけに駐車スペースは砂利敷きで。。結局狂言チームは紋付のまま「痿痺」を演じ、「菊慈童」はシテのみ装束を着け、ワキはやはり紋付に草履ばき。ぬえも強風の中で師匠から拝借した葉団扇を使うのは危険と判断して持ち物は中啓に替えまして、それも最初から最後まで開かないことにしました。残念ではありましたが、まあ。。扇が壊れちゃうのも困りますので。。(・_・、)



この上演でも宝来館の女将さんにご挨拶と能の後見の仕事をお願い致しました。終演後に出演者一同がお客さまにご挨拶し、6月から続けている支援活動についてお話すると、ご覧になっておられた年輩の男性から「ありがとう!」と大きな声で声援を頂きました~(^^)

さて終演後は急いで支度をして一路 次の公演地である気仙沼へ。途中、大船渡と陸前高田を通りました。正直に言って、岩手県の被災地の清掃は、宮城県と比べると少し遅れているように感じました。差し伸べられるボランティアの手も、どうしても宮城県に重心が傾いてしまっているように思います。じつは ぬえはずっと以前から岩手県内での活動ができないか模索していたのですが、受け入れをしてくださる団体や施設を探すのは難しかったです。石巻では活動をする度にだんだんと知人が増えて、活動の規模も拡大しているのですが。。要するにお互いに顔を見てお話をし、信頼感が生まれることによって次のステップに進める、ということだと思います。ぬえたちの活動は瓦礫撤去のようなものとはちょっと違うので、受け入れ側にも負担はあろうと思いますし。。受け入れてくださった事に感謝しております。そうして、今回は初めて岩手県で活動ができ、何といっても ぬえの心に刺さったトゲの もう一つの原点・・気仙沼を訪れることができたのは、本当にうれしいことでした。

大槌町市街



途切れてしまった鉄路(大槌町)



震災後に宝来館の前に建てられた津波を忘れないための石碑の碑文。



鵜住居駅前(釜石市)



スクールバスに描かれた「捜索完了」を意味する「スミ」(鵜住居町)



大船渡郊外



陸前高田の「一本松」