ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

東北支援の旅、スタートしました!(その7=気仙沼。。子どもたちへのワークショップ)

2012-01-03 15:26:09 | 能楽の心と癒しプロジェクト
ちょっと前の話になりますが、釜石・宝来館での能楽の上演が読売新聞全国版にカラー写真入りで報道されました!



宝来館は釜石では本当に注目されているのですね。こちらでの演能は、宝来館とはずっと長いおつきあいがある「海をつくる会」からの斡旋があって実現したのですが、ぬえたち「能楽の心と癒しプロジェクト」のメンバー、笛方のTさんがその「海をつくる会」の会員であるところから、公演の話につながったわけです。

同じく気仙沼での公演は、ぬえがたまたま昨年からお付き合いさせて頂いている劇団「演劇倶楽部 座」の座長である 壌晴彦さんが個人的に気仙沼の児童ミュージカル劇団「うを座」の指導にお出でになっている、という関係で壌さんにご紹介頂きました。どちらも偶然とはいえ、人と人とのつながりが、この時期に見事にひとつになって公演の実現にまで結実したことは感慨深いことですね~

気仙沼では町会の集会施設に泊めて頂きました。その施設は激甚災害地区である魚町から急坂を上った高台にある太田二区自治会館という施設で。。途中、大船渡線の線路を渡るのですが、もちろんこの路線は壊滅的な打撃を受けていて運休中。そこから見えるトンネルの入口も封鎖されていました。しかし高台に建つ自治会館は無事で、お風呂や寝具こそないものの、設備のそろった立派な施設に泊めて頂いてありがたかったです。翌朝にはメンバー揃っての記念撮影をし。。気がついた時に写真を撮っておいてよかったです。結局このあとに記念撮影をする機会はとうとう訪れませんでした。

さて気仙沼2日目、12月28日のスケジュールは「うを座」の団員の子どもたちへのワークショップでした。ようやく訪れることができた気仙沼で、子どもたちを相手に催しができることになるとは! 会場は これまた激甚災害地である南町の中に建つ「cadocco」と名付けられた子どもたちのための多目的スペース。となりにある、オープンしたばかりの仮設商店街「南町紫市場」の一部として運営されているようです。







集まった生徒は、年末の多忙のため3人だけでしたが、まずまず内容の濃い催しになりました。まずOくんたちによる狂言ワークショップ。ぬえは準備のためあまり見ていませんでしたが、ふと様子を見に行くと、なんとOくんが中学生の上におんぶの格好で乗っかっています(!) 直前にカマエ運びを教えていたので、ははあ、きちんとした姿勢が出来ていれば大人が上に乗っても大丈夫、という実演ですね。それにしても突然のことで子どもたちはビックリしながら大笑い。



次に笛のワークショップ。なかなか音が出ないようで一同苦戦していたようでしたが、それでも能の歴史や笛の構造についてのお話は興味深げに聞いていました。







そうしてワキのワークショップに移ったのですが、こちらは ぬえと相談してシテ方の演技とシンクロさせて教えることにしました。テーマは「祈リ」。ぬえはワキ方と一緒にワークショップをするのは初めての経験でしたが、これがとても面白かったです。笛のTさんにも出演願って、まずは「祈リ」の実演。シテの「暴力」に対して「法力」で対抗するという「祈リ」独特の構図は、ちょっと現代では珍しい戦いの場面でしょう。ついでワキ方、シテ方それぞれが「祈リ」の型を教えましたが、ここで注目させたのが「気」ということ。これがなければ「祈リ」もただのダンスになっちゃいます。





「もっと気合いを込めて。。そう。。怒って!」「お坊さんの方も後ろに引くときも押し返すつもりで!」。。ワキ方の演技指導のときは ぬえがそのお相手、シテ方の演技指導のあとはおワキにお相手を願って、それぞれ戦ってもらいました。すると、最初は能楽師の気勢に ついつい腰が引っ込みがちだった子どもたちも、みるみる目が真剣になっていきます。「そう。。その目だよ。いい目になってきた」。。ぬえ、最後は祈り押されて壁に追いつめられてしまいました~ (^◇^;)









そうして最後は『羽衣』の装束を着付けてあげました。ありゃありゃ、とっても可愛い天女の出来上がり~









楽しい時間でした。2時間の予定が40分もオーバーしてしまい、荷物を車に積み終わったところを見計らって子どもたちはうち揃ってご挨拶してくれました。子どもたちにも再会を願って、その後「うを座」の座長さんの経営されるラーメン屋さんで昼食を頂き(美味!)、一路石巻へ移動です。