ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

東北支援の旅、スタートしました!(その18=仮設開成第11団地…その2)

2012-01-27 01:02:09 | 能楽の心と癒しプロジェクト
明友館といえば、このたび集英社から新書『笑う、避難所 ~石巻・明友館 136人の記録~』が刊行されました。地震・津波の当日の様子から、みずからも被災者でありながらその後住民の支援活動に携わっていった経緯などが詳細に綴られていますのでぜひご一読をお勧めします~(ぬえは千葉さんから1冊頂きました~)(^^)V

「笑う、避難所 ~石巻・明友館 136人の記録~」

12月31日 このレポートもようやく大晦日になりました。(^◇^;)

この日は午後から昨日と同じ仮設開成第11団地の集会所で『菊慈童』を演じることになっています。昨日と同じ場所なのは、この日は別のイベントがあって、ぬえたちはそこにゲスト出演をするから。それが山本実樹子さん(ピアノ)、宮澤等さん(チェロ)によるミニコンサートと年越しイベントでした。

イベントは昼頃から始まっていたのですが、そのあたりはTさんの笛の体験にお任せして、ぬえは夕方くらいに上演を行いました。昨日来て頂いたお客さまもお出でになって、装束の着付け体験が大変好評だったとのこと。この日はどちらかというとイベントが立て込んでいたので、終わってからはすぐに会場を空けましたが、ふと見るといつの間にか3人の女の子が会場の一番後ろ…集会所の入口あたりで こちらを見ながらくすくす笑っています。着替えるために控室に行くにはその入口を通らなければならない ぬえは早速この子たちをからかい始めました。すぐ乗ってきた子どもたち。それからはまあ、片づけているんだか、子どもたちと追っかけっこをしてるんだか、ワケのわからない状態に。。(^◇^;)

手加減を知らない子どもたちは、まあ座布団を投げてくるやら蹴ってくるやら、おいっ、蹴るのはやめろよなっ!

でも…ぬえは見てしまいました。ようやく着替えて本格的に(?)子どもたちと遊び始めたその時に。。「津波ごっこ」を。

そういうものがある、…ぬえも仄聞だけはしていました。そうして ぬえが見たそれは、震災から9ヶ月半を過ぎて、ちょっと形を変えて、一種の言葉遊びの中に 不意に現れたものでした。。いや、多くは書きますまい。だけれども、こうやって彼らは自分ではコントロールできないほどの大きな体験を、懸命に消化しようとしているのです。いまだに格闘を続けているんだね。。(・_・、) もうひとつ。。やはり子どもたちと遊んでいる中で「地震」という言葉が口をついて出てきたことと。。この二つは忘れ得ぬ体験になりました。ぬえは思わず曇りそうになる表情を隠すのに精一杯。

ちなみに大人だって同じで、今回の訪問先である釜石でも、気仙沼でも、そして石巻でも、いまだに みなさん「あの日のこと」を話題にしておられます。。これは半年前、ぬえが6月に震災後はじめて東北に行ったとき、最初の訪問地・仙台で見たのと なんら状況は変わっていません。あのときは東北道で車中泊をして、さて翌日の早朝に仙台の若林区で被害状況をはじめて目の当たりにして。。そうして朝食を買うためにコンビニに立ち寄ったときでした。「お客さんがみんな震災の時の話をしている。。」 あれから半年が経ったけれど、やはり時計の針が止まったように、何人かが顔を揃えると「あの日」の話になる。。

東京ではややもすると震災の話はしなくなっていて、テレビでも話題はもっぱら原発事故のことばかりであるような気がします。しかし津波の被害は予想以上に大きく当地の人々の心をむしばみ続けていると ぬえは思います。

東北スマイル・アゲイン!