ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

伊豆の国市「子ども創作能」守山八幡宮祭典公演

2012-10-08 22:38:07 | 能楽
週末、鎌倉薪能に出勤してから伊豆に向かい、子ども創作能の守山八幡宮公演に出演して参りました~

鎌倉薪能の会場は、この4月に伊豆の子どもたちがお邪魔して上演してきたばかりの鎌倉宮! 金春流が中心となって催されているのですが、今回は2日間の薪能の初日に ぬえの師匠がシテを勤め、ぬえは地謡でお手伝いさせて頂きました。鎌倉宮や薪能の関係者の方々とはすでに ぬえは4月にいろいろお世話になりましたが、またまた親切にして頂き、ありがたい限りです。天候にも恵まれ、気持ちのよい舞台でした。

終演後に ぬえは伊豆に向かいましたが、意外に遠いのですね~。1時間半も掛かって宿に到着。翌日は朝から夕方いっぱいまで、翌日に迫った子ども能の稽古のラストスパートでした。この6月に突然参加者が倍増した伊豆の国市・子ども創作能ですが、8月の2回の公演では新人さんたちはさすがにまだ立ち方はできないので地謡を勤めてもらいましたが、その結果、立ち方6名に対して地謡はなんと18名! 3列に並ばないと舞台には座れず、座ったところで今度は舞台が狭いこと!

それから猛特訓が始まり、新人さんたちのうち今回は6名が立ち方デビューを致しました! これで立ち方12名、地謡10名。今回お休みの子もいるから、これでも総勢ではありません。…つい先日まで「このまま人数が減り続けたら。。どうなっちゃうんだろう(・_・、)」なんて思っていたのに、今は稽古が追いつかなくてひ~ひ~言っております。うれしい悲鳴というヤツですな。

で、昨日の日曜が公演日でした。なぜかこの日だけあいにくの雨模様でしたが、いろいろ手違いもあって上演時間が遅れ、そのために天候が回復しました。なんたる幸運でしょう!

会場の守山八幡宮は、およそ800年前北条時政の居館だったところで、伊豆に流された源頼朝はみずからの氏神と同じ神を祀ったこの神社を深く崇敬し、戦勝祈願をしました。ここで行われる秋の祭典に子ども能は出演させて頂きましたが、今年は大河ドラマの恩恵もあって、頼朝がクローズアップされ、この旗揚げの地でも、また源平合戦に勝利した頼朝が政権を開いた鎌倉市でも、子ども創作能が上演されました。子ども能としては記念碑的な年になりましたね。そうして参加者が倍増。どんどん幸運が子どもたちに降り注いでいるようです。

さてさてこの日の上演曲は仕舞『猩々』を みーちゃん(中2)、舞囃子『小袖曽我』を ひとちゃん(6年)とそのパパで演じてもらいました。どちらも長く子ども能に携わり、また個人的にも ぬえのレッスンを受けている子たちで、やはり出来映えは抜群でした。安心して見ていられますね~





それから眼目の子ども創作能『伊豆の頼朝』。今年は大小合わせて、なんと8回も公演があるのです! そのたびに ぬえはちょっとずつ演出を変えたりしていますが、大筋は同じ。それなのに毎回違った感動があります。なんでだろう? 今回は、3年ほど以前に子ども能に1年間だけ参加して、その後脱退、そうしてまた小学校の最高学年としてカムバックしたゆうちゃん(6年)が頼朝役を見事に演じきったのが ぬえの心に響いたか、なんだか心が動いた出来映えでした。そのうえゆうちゃんはこの守山八幡宮がある「寺家(じけ)」という地域の子なんです。故郷に錦。立派に主役をこなしました。



もう手慣れたものの リサべ~(5年)には兼隆の役をお願いしましたが、この役も何度も勤めているので、今回は長刀を使って戦ってもらいました。いや、以前にも彼女には長刀を使わせたことがあるのですが、さすがに2度目。長刀さばきがとっても上手くなっていて驚きました~



北条政子。。これは中之舞を舞う難しい役どころで、ゆいちゃん(6年)が初役で挑戦しました。稽古では苦しんでいたけれど、本番ではもう余裕が見えましたね。終わってから「間違った」って ぬえに言っていたけれど。。ぬえが気づかないほど些末な間違いだったらしい。



新人さんのユキナ・リカ・マリア・ヨシノ・コウミは源平の郎党の武士の役。これまたあっという間に覚えちゃって、先輩の武士役のサラ・イチイ・タケトと共に軽々と演じていました。これならだんだんと大役を任せることもできそう!





そして地謡。ベテラン? のユカべ~(5年)とその弟のケイゴ(2年)は、見事に10名の地謡のリーダーとして みんなを引っ張っていきます。ぬえはもうこのところ地謡の後ろに座ってミスを拾うこともやめてしまいました。だって間違えないんだもん。ぬえの方が地謡の文句があやしいのはいつもの事でございます。作者なのに。



それなので、今回の ぬえはもっぱら後見として舞台上の物着を手伝うやら、中入の装束の着替えをするやら、リサべ~が捨てた長刀を引くやら、え~雑用係に徹してをりました。ええ、ええ、それで ぬえは本望でございまする。

公演が終わって、寺家区のみなさんからは子どもたちにお餅とジュースが振る舞われました。1時間半におよぶ地元の郷土芸能『三番叟』。。このすさまじい運動量の上演は今回は上演準備のためしっかり拝見することができなかったのが悔やまれます。一方、開演前には急な石段を登って八幡宮の社殿で三番叟の役者さんたちがお祓いを受けるところにも参集しましたが、宮司さんのお計らいで ぬえや。。雨のため数人だけでしたが ぬえにつきあってくれた子どもたちもお祓いを受けることができました。



寺家区のみなさん、また守山八幡宮さま、上演にご協力頂いたお囃子方の先生方、そして子ども能を支えてくださっている「伊豆の国市能友の会」のみなさま。さらに忘れてならない八面六臂の大活躍の保護者のみなさん。。いや、今回は保護者のママさんたちは大変な努力、機転で救われた場面がありましたね。みなさまの熱いお志で子ども能は上演できています。多方面に感謝いっぱいです~~(^^)V