ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第9次支援活動<雄勝町・気仙沼>(その18…気仙沼・南町紫市場で上演)

2012-10-11 07:48:25 | 能楽の心と癒しプロジェクト
こちらが泊めて頂いた呉服店の店舗部分。なるほど、昔ながらの呉服店なら帳場や商談に使われる畳敷きの場所がありますね。ここに持参の寝袋やらクッションを敷いて、ぬえたち能楽師は休ませて頂きました。ぬえは真夏でもあったし、床に寝袋を敷いて眠りました。あいかわらず睡眠障害の ぬえとしてはあまり眠ってもいませんけれども。。



えと、眠る話はまだ先ですね。まずは島田呉服店さんにご挨拶して、早速に公演準備のため会場の南町紫市場に向かいました。ここは仮設商店街ではありますけれども、50店舗ほどが集まるかなり大きな商店街で、それがいくつものプレハブの建物の中に収まっています。特色があるのが、被災した店舗を改造して作られた「cadocco」という子どものための集会施設があること。角にある被災店舗を改造したから「カドッコ」ね。(^^)V



ここには絵本などが備え付けられて、子どもたちの遊び場になっています。そうして、昨年末から2度に渡って ぬえたちプロジェクトが気仙沼「うを座」の子どもたちに能楽ワークショップを行わせて頂いたのが、この「cadocco」だったのでした。

会場では控室としてプレハブ商店街の2階の空き店舗を紹介頂きましたが、そこに向かう途中に、いつもこちらでお世話になっている商店街の世話人さんにバッタリ行き会いました。「控室はほかの出演者も一緒でごったがえしているから、よければこちらを能楽の控室に使ってかまわないですよ」と、この「cadocco」を使わせて頂けることになりました。ああ、これはありがたいですね~。「cadocco」は1階なので、これで装束を着けたまま階段を上り下りする苦労がなくなりました!

で、こちらが商店街に貼り出されていたこの日のイベントです。
「豪華アーティストによる特別ライブ」。。これは11日、昨日だな。
「特設ステージ」。。これも11日か。
12日のイベントは。。?
ええっ「ガールズ・ステージ」?



よ~く目を凝らして見てみると。。



ををっ、ありました。「能楽」。ここですね。ぬえの出番は。(^◇^;)

いや、笑い話にしてしまいましたが、これは大変な失礼でして。じつはこれは紫市場のみなさんのお心尽くしなのです。

前述のように気仙沼最大のお祭り「みなとまつり」開催中の訪問とあって、ぬえたちプロジェクトの能楽の上演の受け入れ先がなかなか見つからずに困難を感じていたところに、気仙沼商工会議所さまより「ここではステージ・イベントも考えているらしいですよ」と紫市場さんをご紹介頂いたのです。

紫市場さんでは「cadocco」で活動した実績が ぬえたちにはすでにあり、お互いにすでに知己の間柄でした。いや、今回も紫市場さんに先に聞いていれば すぐに能楽の上演も受け入れてくださったのでしょうが、まさかここに仮設ステージを作っているとは思いもよらず。。商工会さんのご紹介を頂いて紫市場さんに連絡を取ってみると、ああ、あなた方ですか~、ってなものですぐに上演を受け入れて頂けました。

この時の電話でのやりとりでは、「能の上演は構いませんが。。この日は歌ばっかりの催しなんですよ」とのこと。ああ、それは別に構いませんし、歌ばかりならば なおさら演劇のような能も目先が変わってよろしいんじゃないですか? と答えて、無事に受け入れをして頂けることになりました。

ところが、その後の電話での交渉では、不思議にどんどん ぬえたちの能楽の開演時刻が遅くなっていきました。「??」 …ぬえとしては石巻市から移動してその日のうちの上演ですし、なんと言ってもこの日東京から出発して活動に参加してくれる もう一人の能楽師。。太鼓のOさんが気仙沼に到着しないことには上演が始められないので、少しでも開演は遅いほうがありがたいのでしたが。

この貼り紙を見て納得。なるほど、この日に計画されていた「歌ばっかりの催し」っていうのはガールズ・イベント、という事だったのね。これではちょいと能は浮いてしまうかな~

しかしイベントとして先に組まれたのは彼女たちの方で、能があとからねじ込んだような形なのです。しかし ぬえたちの活動を知っている紫市場の世話人さんは すぐに受け入れてくださいました。それで、やはりあまりにも違う雰囲気の能の登場にはお困りになったと思うんですよね~。結果的に能楽の上演はこの日のイベントの大トリにさせて頂いたようで、それで上演時間が遅くなったのでしょう。どうもお気遣い頂いたようで申し訳ありませんでした~

そうこうして準備を始めているところに太鼓のOさんも到着。なんでもお盆が近い時期の日曜ということで東北道は大渋滞で、福島県あたりから高速道を下りて一般道で気仙沼までたどり着いたらしい。東京近郊から一路気仙沼を目指して出発、ところが高速道が大渋滞、しかもこの日に公演の開演時間が迫っている。。Oさんも焦ったと思いますが、無事に能『菊慈童』を上演致しました。ワキ・笛・太鼓が揃った、プロジェクトの活動では稀に見る。。はじめてかな? こんなに多くのお役が揃って豪華な布陣での上演となりました。









いや、これが意外にも(?)良かったのです。ガールズステージに出演していた女の子たちも割ときちんと見てくれていました。いや、ホントに真剣に見てくれている子がいて、終演後 ぬえはその女の子にお礼を言ってしまったほど。なんか、気仙沼って文化意識が高いのかな。この後その思いはもっと強くなるのでした。