ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第13次支援活動<気仙沼・石巻>(その7)前日リハーサル

2013-05-12 01:19:09 | 能楽の心と癒しプロジェクト
こうして始まった臨時のリハーサル。そもそもこの日は映像の切り替えを担当してくださるスタッフさんはお仕事の都合で欠席。。翌日、つまり上演当日に到着することになっていたので、この日は機材搬入とセッティングだけしかできない、という、ぬえにとっては実は大変心細い状況でありました。それでもスタッフさんに前日に集まって頂いた~交通費や宿泊まで自己負担を求めておいての呼集、という、ぬえってナニサマ状態のお願いでした~のは、音響や照明のスタッフさんにも機材の操作に慣れて頂き、また上演の段取りを事前に覚えて頂くことが、公演の成功にはなんとしても必要な事だったからです。

この日までに ぬえは、機材のオペレートをお願いするスタッフさんの作業のあまりの難しさに(いや、自分が考えたんですけどね。。)、賃金を支払ってでもプロにお願いするべきではなかったか、と悩んでいました。そうしてこの日会場として提供頂いた「リアス・アーク美術館」のあまりの素晴らしさに、なおなお これは必ず成功させなければならない、という思いを強くしたのでした。

それが前述の、ボランティア・スタッフさんへの ぬえの無礼な言葉に繋がってしまったのですが。。ぬえの被災地での活動に、それから「星と能楽の夕べ」公演への熱い思いの故ながら、これでは誰も協力してくれなくなっちゃいますね。でもこの時はそこまで考える余裕もなく。。あ、せっかくだから、ぬえが機材オペレートをしてくださったスタッフさんに渡した、「星と能楽の夕べ」公演の「構成表」をお目に掛けましょう。 いまから思えば、これだけの作業を「課して」、前日から手弁当での参加を要求し、「失敗は許さない」みたいな発言をするなんて。。あまりに無理が大きかったです。。反省。

ところが、この日、機材への習熟を期待しての即席のリハーサルは、ぬえが期待した通りの完成度を見せました。いや、それ以上だったかも。いまだ会場に到着しているのは ぬえと笛のTさん、そうして照明・音響を一人で担当することになったオペレーターのAさん、主にお客さまの誘導を担当されるAさん夫人とそのお姉さまの美人姉妹、カメラマンのM氏だけ。ピアニストも星空投影と解説担当で、そもそも「星と能楽の夕べ」公演のアイデアを出したKさんも、それから映像のスイッチングを担当するMさんも、み~んな翌日の公演当日の到着です。これほど未完成な状態でのリハーサルが、ここまでの完成度を示すとは。。ぬえには想定外でした。

これなら。。いける。。 ぬえがようやく安心できた瞬間でした。

あ、それだけじゃなかったですね。じつは前掲の「構成表」は、事前に ぬえが用意したものとはまた別のものなのです。この日、リハーサルが順調すぎるほどに終了したあと、オペレーターのAさんから出された疑問で、事前に ぬえが作った「構成表」に間違いが見つかり(!)この夜、笛のTさんと再度打ち合わせをして練り直し、翌日の早朝に ぬえが書き直した、いわば公演当日用の「訂正版」なのです。

初対面の挨拶をして、構成表を渡して、機材のセッティングまで手伝って頂いて。こうして2時間ほど後には完璧に「構成表」の役割をこなし、さらに ぬえが気づかなかった問題点まで指摘するなんて。。アナタ方、いったい何者??

この日、妙に上機嫌になった ぬえ(あ~、よく考えると怒ってたり、喜んでたり、初対面の ぬえを見てスタッフさんはビビったでしょうね。。)。明日の成功を約してこの日はスタッフさんとお別れし、気仙沼市街にある簡易宿泊施設にTさんとチェックイン。

さて夕食を兼ねてTさんと「構成表」の練り直しをしたのですが、たまたま入った「気仙沼ホルモン」のお店で、ぬえはまた衝撃を受けてしまったのでした。こりゃ、ウマイ!

。。気仙沼で、こんな美味しいものがあるのか。。と思ったのは何度目でしょうね~。震災前に訪れた時に食べた戻りガツオ、ワカメ。。 これは地元の方も同じで、ことに海産物については、そういえば私たちはゼイタクしていましたね~。なんて何度か伺いました。こんなウマイもの食べているんなら支援なんて必要ないじゃん! 。。なんて思っていたら、そのあとに ひと言。「震災前までは、ですけれどね。。」 うう。。

あ、そういえば ぬえの師家では今年の秋の学校巡回公演で気仙沼を訪れることが決まったようです。なんか戻りガツオの季節らしい(!)。 。。ぬえ、気仙沼には震災3ヶ月後から通っていて、もうこれで活動も2年になろうかとしているのですが、なんと1度も戻りガツオの季節に訪れたことがにゃい。。震災前に衝撃を受けたあの味が再び??