ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第13次支援活動<気仙沼・石巻>(その15)~気仙沼「出船送り隊」に参加

2013-05-31 02:29:33 | 能楽の心と癒しプロジェクト
【3月10日(日)】

。。すいません、ブログでのご報告は2ヶ月前の出来事です。。しかもまだまだ続く。

飲んで食べて騒いで。。楽しく1日目の公演を終えて宿で就寝。催しというのはいつもそうですけれども、始まるまで不安で不安でたまらないものです。そうして最終的に自分の出来、お客さまの反応、進行が円滑であったか。。いろいろ考えて、眠れぬこともあれば幸せな気持ちでいっぱいになる事もある。この夜の ぬえはまさに幸せの絶頂でした。ここまで公演の出来映えとお客さまの反応が良いとは思ってもみませんでしたからね。公演旅行の始まりがこれほどの成果を挙げると、活動自体に弾みがつきます!

さて明けて10日の日曜。今日は13:00に昨晩飲みに行った「復興屋台村 気仙沼横丁」での公演と、夜には18:00頃から階上の地福寺さんでの追悼法要への出演が決まっています。

宿をチェックアウトして、ちょっと早いけど屋台村さんへ行き、会長さんにご挨拶してカギを開けて頂いて上演準備。で、こんなに早く楽屋入りしたのには理由がありました。それが、ぬえが楽しみにしていた「出船(でふね)送り隊」への参加です。

漁船は、ひとたび出航すると遠洋なら1年以上、近海でも1ヶ月程度は陸に戻りません。そこでしばしのお別れとなる「出船(でふね)」~出航を地元の人が盛大に祝って送り出す行事が行われます。気仙沼のそれは震災前から殊に有名だったようで、地元の婦人会「つばき会」が中心となって大賑わいで行われていたそうです。ぬえもその事は聞いていましたが、YOUTUBEの次の映像を見て、あまりの盛大さにビックリ!

気仙沼つばき会 さんまの出船おくり

送り出す側は飛び入り自由で、「出船送り隊」なんて呼んでいるみたい。で、これは見てみたい、いや、参加してみたい、と ぬえはずっと思っておりました。たまたまリアス・アーク美術館での「星と能楽の夕べ」公演や、そもそも気仙沼で活動を始めた頃からお世話になっている高橋和江さんが「つばき会」のメンバーだったことから、この旨も伝えてあったのですが。しかし、YOUTUBEの映像を見るかぎり、これほど盛大な行事であれば、逆に開催はレアなんだろうな。。と思わざるを得ません。毎日とか毎週末では、この人数は集まりますまい。ぬえが気仙沼に滞在しているときにこれに当たるかどうかは運次第。

ところが今回、高橋さんから事前に連絡があり、「11日は大安だから出船送りがあるかも」という情報が。大安だから。。船乗りさんは本当に縁起をかつぐものなのだとはその後も何度か聞く機会がありましたが、この大安の出船のお話しがその最初だったかもしれません。。そうして「星と能楽の夕べ」公演の当日になって、高橋さんから「明日11時に出船送りがあるそうです!」と連絡を頂きました!!

この日の屋台村さんでの上演は13:00からだから、11:00の出船送りに参加しても、30分で切り上げて楽屋に戻れば上演にはギリギリ間に合う計算。そこで上演の準備を早めに済ませて魚町の周辺の、よく漁船が停泊している場所に行って待っていました。

。。が、待てど暮らせど人が集まる気配がない。。高橋さんに電話してみると、「ええ~っ? 出船送りの会場はそこじゃなく、コの字岸壁っていう。。わかるかなあ、ええとそこからの行き方は。。」完全に ぬえの勝手な思いこみでした。「コの字岸壁」。。名称こそ知らなかったけれども、地形を表している呼び名だとすれば、これは鹿折の方ヘ向かう途中の。。あそこしかない! もう、当てずっぽうですけれども、ダテに2年近くも気仙沼に通っていない。急いで車を走らせると、案の定 ぬえの思ったその場所がまさしく「コの字岸壁」でした!

高橋さんに挨拶して、さっそく「福来旗(ふらいき)」を1本貸して頂いて漁船に声援を送ります。「行ってらっしゃ~~い」「行ってらっしゃ~~い」2~30名の人々が「福来旗」。。気仙沼の伝統的な日の出の文様をあしらった、大漁旗を小型にしたような手旗をてんでに振って送るのです。



この日は近海漁船だというので 送る人もこの人数ですが、遠洋航海の出船となると、それはそれは盛大な「出船送り」が繰り広げられます。さきほどのYOUTUBEの映像も遠洋航海のそれなのですね。



この日は3~4隻の出船があるとのことで、それで遅刻した ぬえも間に合ったわけですが、高橋さんの説明では ぬえが送り出すこの船には、初航海の若者があるとのこと。ををっ、それは!「行ってらっしゃ~~い」「初航海おめでとう~~」!!

船も汽笛を鳴らして、出船送りに応えます。まさに心と心が触れ合う現場に ぬえは立ち会うことができました! 感激です~~!